【コバルトーレ女川観戦ツアー1日目】コバルトーレこそが地域密着クラブの理想形?

コミュサカ
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女川への遠い道のり

仙台駅から仙石線の快速を使って1時間。

宮城県でも指折りの繁華街を持つ石巻は、県内で2番目に人口の多い港町だ。

そこから女川へ行くのには本数の少ない仙石線女川行きに乗車する必要があるので、実際の距離以上に女川町への道のりは遠く感じられる。

 

コバルトーレこそが地域密着クラブの理想形?

 

 

2011年の大震災による津波の影響をもろに受けた女川町は人口も震災前にいた1万人が6千人台までに減少した。

そんな小さな港町をホームタウンとするコバルトーレ女川が、昨年の地域チャンピオンズリーグに勝利しJFLへ昇格したというニュースは、ちょっとしたトピックスとしてサッカーファンの間でも話題になったし、世知辛い実情が漏れ伝わってくることも多い日本サッカー界において、コバルトーレ女川というサッカークラブが一服の清涼剤のごとく爽やかな印象をサッカーファンに与えている場面を見ることも多い。

私自身も少し前まではそうしたコバルトーレの爽やかさを自然に受け入れていた。

しかしながら最近は「コバルトーレこそが地域密着クラブの理想形」といったテンションで語られる状況まで散見されはじめ、少しばかり怪訝に思うようになってきていた。

何しろ、人口が6千人しかいない町のクラブの話なのだ。5,000人収容のサッカー場が完成したとして、町民の8割が観戦に来てもそこを満員にすることすら出来ない。

それをどうして「理想のクラブ」であると言えてしまうのか。

 

コバルトーレ女川観戦ツアー

 

 

今回の女川旅行は、震災直後から女川町で支援ボランティアを続けている友人に話しを持ちかけたことで実現した。

当初は少人数で女川へ行くつもりだったが、ボランティアチームの仲間たちも相乗りすることとなり、12名という大所帯で「コバルトーレ女川観戦ツアー」をすることになった。

試合が行われる前日、私以外のメンバーは女川港から釣り船に乗ってヒラメ釣りに行ってしまった。

灼熱の海上で夕方からのバーベキュー用に皆が「食材」を釣り上げている間に、私は石巻にコバルトーレ女川の前日練習を見学に向かう。

石巻駅前のロータリーで待機しているタクシーに乗り「コバルトーレの練習場へ行きたいのですが」

と言っても、老運転手がそれを解してくれない。

それではと思い「石巻フットボール場(翌日JFLが開催されるスタジアム)の先なんですが」

と言い直しても、やはり老運転手はそれを解さず、結局は所在地住所を告げて連れて行ってもらうこととなった。

乗車して10分程度でコバルトーレ女川の石巻トレーニング場に到着したが、故石ノ森章太郎の描く様々なキャラクターが前面に押し出されている石巻においては、Jクラブでもない限り単なるサッカーチームが観光資源としての価値を見いだすのには至っていないのだろう。

JFLに上がって変わったこと

 

コバルトーレ女川 吉田圭選手 人当たりのいい爽やかな青年だった 2006年のチーム創設時から在籍する唯一の選手でもある

 

予定より少し出遅れてしまった為、チームの前日練習は僅かな時間しか見学することは出来なかったが、それでも昨年までチームの監督を務めていた阿部裕二コーチにご挨拶をさせていただき、何人かの選手にも話を聞くことが出来た。

「毎日の練習が本当に充実している」

私が選手たちに聞きたかったのは、チームがカテゴリーを上げて地域リーグから全国リーグであるJFLを戦いの場とするようになったことで、何が一番変わったのかということだった。

長くコバルトーレでプレーする吉田圭選手(FW 背番号14)は、その変化をこんな風に語ってくれた。

「東北リーグの時までは、自分たちの力さえ発揮出来ればどの対戦相手にでも十分に勝つことが出来たんですけど、JFLではそうはいきません」

そしてこう具体的に続けてくれた

「まずどの対戦相手も体つきが違う。背も高くがっちりしているし、腹が出ているような選手はいない(笑)」

「でも今は毎日の練習が本当に充実しているんです。監督が対戦相手を分析し、それに沿って毎日準備を進めていく感じで、これがサッカー選手のトレーニングなんだなって、凄く楽しいです」

今季からチームを指揮する村田達哉監督は、JFLクラブの監督に必要なS級ライセンス保持者でもあり、JFL昇格の立役者でもある前監督阿部裕二コーチとともに、JFLでの戦い方を選手たちに浸透させる重責も担っているのだろう。

選手たちの町での顔

会場設営をする選手たち

 

2018JFLファーストステージ最終戦を翌日に控えた段階で、最も印象に残っている対戦相手について吉田選手に尋ねてみると

「それはやっぱりソニー仙台です。彼らとは地域柄これまでも練習試合で対戦することはあったけど、大抵の場合は1.5軍や2軍が相手として出てきていた。それでもなかなか勝つことは難しかった。5月6日にJFLで対戦した時も負けはしましたけど、これまでに感じたことのないような手ごたえがあったんです」

コバルトーレ女川の選手たちは、そのほぼ全員が女川や石巻で日々の糧を得ている。

吉田圭選手も水産会社で働いており、商品の配達などで日々町を走り回っているそうだ。

他にも水産加工食品の工場や工事現場の警備など、再起する町にとって貴重な若く逞しい人材として彼らはサッカー選手以外にも町での「顔」を持っている。

こうした実態を以て、コバルトーレが「地域密着の理想形」とされている節は大いにあるだろう。

会場設営もする選手たち

試合前日の練習が終わると、選手たちは翌日の試合会場である石巻フットボール場へ移動し、試合開催に必要なテントを何張りも設営していた。

梅雨明けのジリジリする太陽の下、時には軽口を叩きながら、若いサッカー選手たちが自分たちの試合会場を設営する姿からは、私自身の大学サッカー部時代の光景を思い出した。

明日今治からやってくる強敵は、まさか自分たちが座っているベンチを日差しから守ってくれているこのテントを対戦相手のストライカーが立てたとは思ってもいないだろう。

コバルトーレ女川への思いを馳せながら就寝

 

女川町宿泊村Elfaro(エルファロ)

 

石巻を後にして女川へ入ると、仲間たちはとても食べきれないほどの釣果に興奮気味だった。

「あの原発のあたりのポイントが特に良く釣れたよね」

そう、女川は原発の町でもある。

そしてこの小さな女川町が隣接する石巻市に飲み込まれずに済んでいるのも、原発がそこにあるからなのだ。

60㎝のヒラメを釣り上げたAくんは、日焼け止めを塗らなかったのか顔を真っ赤にして黙々と東京に送る魚を発泡スチロールのケースに梱包している。

早朝からの一仕事を終えた彼らは、船の上での出来事に関する話に夢中で、この旅行の名目が「コバルトーレ女川観戦」であるにも関わらず、私が練習場で見聞きしてきたことに少しも興味を持ってくれない。

そしてそれは夜遅くまで続いた宴の場でもずっと変わらなかった。

彼らにとって女川は「コバルトーレの町」ではなく「海の町」であり「友人たちが生きる町」であるのだ。

 

 

未だ女川には限られた宿泊施設しか存在しない。

この日の宿泊したのも駅前にあるトレーラーハウス型のコテージだ。

建築基準や地権の問題がある中で、建築物ではないトレーラーハウスを宿泊施設とすることは、現在の女川町の実情を考えた時に非常に理にかなったスタイルでもある。

そんなトレーラーハウスの中で深夜のW杯観戦をしながら「この町にとってコバルトーレ女川がどんな存在意義を持っていく可能性があるんだろう」

そんなことを考えつつ、アルゼンチンがフランスに負けるのを見届けたと同時に眠りについた。

さあ、明日はFC今治戦だ。

 

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