【2018全社出場決定】エスペランサSCが想像以上にアルゼンチンだった!

コミュサカ
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W杯から強く感じる「サッカーの多様性」

ロシアで行われているW杯の激戦の模様は、既に多くのサッカーファンの心を鷲掴みにしてしまっているが、4年ぶりのこの「国別世界一対抗戦」を見ていて、改めて強く感じるのが「サッカーの多様性」である。

開催国ロシアが、全く隙の無い完璧な開幕戦勝利を遂げる姿からは、実に彼の国らしい「外交手腕」を感じ、武骨な大男揃いのアイスランドが、スーパースターを擁する優勝候補を相手に見事にノックダウンを回避して見せる。

最新鋭の高性能マシーンを揃えたドイツが、メキシコのマリアッチが奏でる祝曲に調子を狂わせれば、祝祭の開幕を喜ぶ気持ちが抑えられず脇の甘くなったブラジルがスイスの反撃を喰らう。

グローバル化が進んだ世界情勢の中で、強豪ナショナルチームで移民選手がプレーする姿が珍しくなくなってきたとは言うものの、依然としてW杯を戦う各チームからはクラブチームのサッカーシーンでは感じにくくなってしまった「民族」や「国家」の匂いが漂う。

体格や身体能力面での条件はもちろん、その国家あるいは民族や地域が長い歴史の中でどのような「フットボールカルチャー」を育んできたのか。それが如実に現れるコンペティションはW杯サッカーを置いて他には無いかも知れない。

「サッカーの多様性」を龍ヶ崎で体感する

とはいえW杯の開催地は海外で、余程のサッカー好きかサッカーを生業としている人でもない限りは、その空気を直接体感する機会はほとんど得られないと言っていいし、仮にそれが叶ったとしても、そのチャンスは4年に1度しか巡ってこない。

これでは日常的に「サッカーの多様性」「異国情緒」を堪能しようとする欲求を到底満たせないわけで、「満たされぬ欲求をどこで解消するべきか」といった問題がサッカーファンの前に大きく立ちはだかっているのだ。

しかし、4年に1度、それも海外でしか体感出来ないとした「異国情緒」溢れる「サッカーの多様性」を茨城県龍ヶ崎市で行われたサッカーの試合で奇しくも体感することが出来てしまった。

 

「日本らしくない」エスペランサSC

 

試合前の祈り

エスペランサSC

関東サッカーリーグ2部に所属するこの横浜市のクラブチームが、10月に茨城で行われる全国社会人サッカー選手権(全社)への出場権を賭けて、同じく関東サッカーリーグ1部の強豪、東京23FCの胸を借りるべく戦いを挑んだのだが、この試合に勝利したチームが全社への出場権を獲得するという事実以上に、「日本国内にこれほどまで日本らしくないチームが存在していたのか」という思いの方が、遥かに大きな衝撃として、私の好奇心と心の枯渇を潤してくれたのだ。

実はエスペランサSCについては、関東サッカーリーグに興味を抱きだした頃から気になる存在ではあり続けていた。

元アルゼンチン代表 オルテガ監督が率いる

元アルゼンチン代表選手という栄光に満ちた経歴を持つオルテガ監督(オルテガ・ホルヘ・アルベルト)をクラブの象徴的存在として前面に押し出し、アルゼンチン出身選手や、南米でのプレー経験のある選手が複数所属しているこのチームは、そのユニフォームカラーもあの「ボカ・ジュニアーズ」を彷彿とさせ、2003年のクラブ創設以来、アンダーカテゴリーの育成組織を徐々に充実させてきたことで、関東リーグというカテゴリーには珍しく「自前選手」が多い特徴も持っている。

肝心の試合を見ていないのに、その「さわり」を知るだけで、そこに言い知れぬ「アクの強さ」を感じていた私は、関東リーグで何度かその試合を観戦している東京23FCがエスペランサSCと全社出場権を賭けた戦いをすることが決まって以来、試合会場のRKUフットボールフィールドへ行くのを非常に楽しみにしていたのだ。

格上 東京23FCに完勝

 

 

私が彼らに抱いていたイメージや期待感は、いい意味でそれを凌駕する勢いで裏切られたと言っていい。

結果から言うと、エスペランサSCは「格上への挑戦」に大成功した。

3-0。関東1部の強豪相手に完勝である。

開始から終了までほとんどの時間帯を自らのペースで進めることが出来たエスペランサSCは、東京23FCにチャンスらしいチャンスを与えないまま着実に得点を重ね、見事にクラブにとって2度目となる全社出場権を獲得した。

この試合結果自体が番狂わせでもあり、両チームを知るサッカーファンにとっても驚きを以て伝わったかも知れないが、現場で観戦していた私が思う限りでは、少なくともこの試合で東京23FCには勝ち目が無かったようにも見えていた。

とにかくそう思えてしまうほど、この日のエスペランサSCの戦いからは、これまで私が地域リーグで見てきたサッカーとは明らかに異質な「闘う集団」によるサッカーが強く伝わってきたのだ。

映画「デスペラード」の如く

 

 

「横浜市の本郷台キリスト教会池田恵賜牧師とオルテガ監督の出会いがクラブ創設のきっかけ」とクラブの公式サイトにも触れられているが、そのクラブ創設の根っこの部分を試合に挑むチームの姿からも感じることが出来る。

試合開始直前のあの独特な緊張感が走るピッチ上で、彼らはひざまずいて円陣を組み神への祈りをするところからゲームへ入っていく。

その姿は、映画「デスぺラード」で、アントニオ・バンデラスがギャングのボスとの戦いに挑む前に、十字架の前でひざまずき祈りを捧げているシーンを彷彿とさせる。

そして映画の中でバンデラス扮する「エル・マリアッチ」がギターケースの中に詰めた武器を使って壮絶な撃ち合い演じたように、エスペランサSCの選手達もそれまでの静けさが嘘のように、猛然と東京23FCに対して勝負を挑んでいくのだ。

気づいたことを箇条書きにすると

  • イーブンなルーズボールであれば、身体全体を使ってそのボールを我が物にしようと挑み、相手が保持するボールであっても簡単にキープさせることは許さない。
  • 相手が繰り出すパスを封じ、それが間に合わずパスを出されてしまっても、彼を次の動きへ移らせないように態勢を崩すようなタックルを見舞う。
  • やや不利な体勢でボールを受けることになれば、背負った相手選手に自ら尻を当てて倒れファールを誘い、完全に自分が抜かれそうになればシャツを掴んで相手を倒す。

こう書いていくと、日本のサッカーカルチャーの中ではどれも「美しくないプレー」と思われてしまうかも知れない。

しかし、そんなプレーを「真面目に行う」彼らを称して「プレーの荒いチーム」と結論づけてしまうのは、少々勿体ないようにも思う。

 

「アルゼンチンサッカー」の薫り

 

レフリーにカードを要求する古川頌久選手。いかにも南米風なゼスチャーだ。

 

私は彼らのプレーの中に「闘う集団」の姿を確かに感じることが出来た。

思うような試合運びが出来ず、そのイライラがチームメートにすら向いてしまっていた東京23FCの選手たちの様子とは対照的に、エスペランサSCの刃の向く先は常に相手チームでしかなく、チーム自体がひとつの「兄弟」であるかのようなその姿には感動すら覚えてしまったほどだ。

もちろん、終始自分たちのペースで進めることが出来ていたこの試合でのエスペランサSCの様子を以て、彼らの全てを理解出来るはずもないが、彼らの戦う姿に日本のサッカーカルチャーではなかなか感じることのない「メンタリティ」の一端を感じた気になったのは紛れもない事実であり、恐らくそれはオルテガ監督が創り出している「アルゼンチンサッカー」の薫りだったように思う。

 

栗原滉平選手 これは割とエグいファールをした後の表情

 

この日プレーしていた選手の中で、特に印象に残ったのは10番古川頌久選手と13番栗原滉平選手の2人。

私は2人のプレーを見ていて、彼らが日系の南米出身選手だと思ってしまっていた。2人のプレーはエスペランサSCの中でも特に狡猾で、レフリーに対するジェスチャーやアピールの仕方も憎たらしいほどに堂に入っていた。

あとで彼らのプロフィールを調べると、古川選手こそ僅かに南米ウルグアイでのプレー経験があるものの、彼らは2人ともエスペランサユース出身の「自前選手」であることが分かった。しかも古川選手が23歳、栗原選手が20歳と想像していたよりずっと若い。

こんな「アルゼンチンサッカー」の薫りがプンプン匂ってくる若い選手を輩出しているエスペランサSCの育成組織にも興味が湧いてしまったが、いずれにせよエスペランサSCというチームは、私が想像していた以上に「異国情緒」に溢れるチームであったし、「サッカーの多様性」を堪能する対象として、その役割を十分に果たすだけの魅力に包まれたチームであった。

 

フットボールを巡る様々な解釈、様々な堪能の仕方

 

勝利に歓喜するエスペランサSC。キャップを被っているのがオルテガ監督

 

W杯を見ていると、世界でフットボールが様々な解釈のされ方をしていることを実感する。

それを感じられることが、世界で最も愛されているフットボールを愛するファンにだけ許された特権であるのかも知れない。

そして私はこうしたフットボールの異文化をこれからも十分に堪能していきたいと、エスペランサSCの試合を観戦して改めて思うことが出来た。

東京23FCに勝利し、10月に開催される全社への出場権を獲得したエスペランサSCだが、彼らは地域リーグのトップカテゴリーに所属するチームでは無いので、全社でどんなにいい成績をおさめたとしてもクラブの目標であるJFL昇格という夢にそれを直結させることはレギュレーション上不可能だ。

それでも彼らは、その勝利に対する喜びを身体いっぱいに表現していた。

ディエゴ・マラドーナとアルゼンチン代表で共に戦った経験のあるオルテガ監督にしても、若い選手とともに大きな身体を揺らして歓喜していた。

こうして弾けるパッションもアルゼンチン流であるのかも知れない。

 

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首都圏、関東圏を中心にJリーグから都県リーグまでの試合日程を記したカレンダーを作成しました。是非とも現地観戦のご参考に!

2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

ブログタイトルは「ラーテル46.net」

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