【天皇杯2回戦】日立台に響いたVONDS市原サポーターによる「レイソルコール」の真意

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日立台ビジターゴール裏から眺める「柏熱地帯」には、それに立ち向かう者たちにとっ荒ぶる気持ちを掻き立てるのには十分な迫力があった。

柏レイソルのサポーターとして、この1年余りの間に行われたホームゲームのほとんど全てをあの黄色い壁の中で過ごしてきた私にとって、それを対戦相手のゴール裏から眺める日が来るとは想像もしていなかったが、今シーズン何度も試合会場へ赴き、クラブや選手、そしてサポーターの皆さんとも仲良くさせて頂いているVONDS市原FCが、天皇杯1回戦でブラウブリッツ秋田を下した瞬間から、彼らの次の戦いの場となる日立台でこのクラブとともに天皇杯を楽しもうと考えるに至ったのはごく自然なことでもあった。

 

VONDS市原ゴール裏に集まる「様々なサポーター」

 

いつもであれば黄色いレイソルのユニフォームを身につけて参じるスタジアムへ、緑のTシャツと松本山雅の緑色のタオマフを首に巻いた姿で入場するのは新鮮だったし、そこがいつもは遠巻きに眺めているだけのビジターゴール裏であるのは更に新鮮であった。

「関東リーグサポーター連合」として、VONDS市原とは日頃ライバル関係にあるチームのサポーターの方々も続々とスタンドに現れる中(関東リーグではないが、遠くいわきFCのサポーターの方も何人も「参戦」された)VONDSサポーターの方が横断幕を張っているのを手伝う私の姿を見て「あれ?こっち側に来ちゃって大丈夫なの?」と何人もの方に声を掛けられたが、もしかしたら、そう言いたくなるほどに私の姿にはかなり違和感があったのかも知れない。

 

注目される「天皇杯2回戦」というステージ

ビジターゴール裏から見る「この人」は本当に恐ろしい存在だった

 

日本サッカーにおける最大の全国トーナメントでもある天皇杯は、リーグ戦では絶対に対戦し得ないカテゴリーのチーム同士が真剣勝負を行う場でもあり、特にその2回戦についてはJ1、J2リーグ勢がやっと姿を現すステージであることから、この大会の大きな見どころでもある「ジャイアントキリング」が起きる可能性を巡って、普段下位カテゴリーのサッカーを見ることのないサッカーファンや、密かに「番狂わせ」を期待している世間一般にとっても、大会への注目が最も集まる段階であるとも言える。

レイソルにとっては「知らない相手」VONDSにとっては「良く知る相手」

だから柏レイソルのようなJ1クラブにとっては、例え対戦相手が関東リーグのチームであろうとも負けるようなことはあってはならないし、そのサポーターにとっても相手に対する情報が少ないだけに、普段とは違った緊張感が沸き起こる。

一方、Jクラブと対戦する下位カテゴリーのチームにとっては、対戦するJクラブの戦力についても熟知するところであるし、場合によっては日頃リーグ戦で対戦している相手以上に対戦相手についての情報が「丸裸」になっているという事もあり得る。多くのサポーターがJリーグの試合観戦を習慣としていることを考えれば、こうした実情は当然すぎる事でもあるのだ。

VONDS市原のコールリーダーであるヒロさん「今日は胸を借りるつもりなんてないからね!」と繰り返し叫んでいたが、その相手のスタメンに、伊東純也や江坂任といった「J1のスター選手」が名前を連ねていることに対しては、畏れとともに高揚する気持ちも抱いているのだ。

言って見れば、VONDS市原のゴール裏には「自らのチームとその前に立ちふさがる強者」その両方に対する敬意が感じられ、レイソルのゴール裏がひたすらに「レイソル愛」に走るのとは明らかに異質なのだ。

VONDSの挑戦を跳ねのけたレイソル

 

私はもちろんレイソルを応援する気持ちが根底にはある。しかし、その対戦相手が普段懇意にしてもらっている関東リーグのチームともなれば、その心情には多少の変化が生じてくる。

柏熱地帯で叫び慣れたチャントを歌い跳ねるといういつもの楽しみ方が、VONDS市原を相手にした時に果たして出来るだろうか。それならばビジターゴール裏に入って、奇しくも実現したこの対戦を満喫する方が自分の心情には合っているのではないか。こうした思いが私を日立台のビジターゴール裏へといざなった。

試合は開始早々に伊東純也の快足から先制し、J1クラブの堂々たる姿を90分に渡って見せつけたレイソルが6-0という大差で「関東リーグの雄」による挑戦を跳ねのけた。

VONDS市原にも何度か決定的なチャンスの場面が訪れたが、この試合を客観的な目で見ればレイソルとVONDSとの間に存在する大きな実力差だけが感じられるようなゲームであったかも知れない。

より「楽しんだ」のは誰か

しかしながら、この対戦を誰が最も「楽しんだ」かと言えば、それはVONDS市原のゴール裏であったようにも思う。

雨が降る平日のナイター、雨宿りするスペースがほとんど皆無の日立台ビジターゴール裏に集まった人々は、びしょびしょに濡れることすらも楽しんでいるかのように「ひと時の祭り」を満喫していた。

そこにはVONDSの緑色のユニフォームだけではなく、青いユニフォームや赤いユニフォーム姿の「連合」サポーターの姿もあった。

彼らは慣れぬVONDS市原のチャントを大声で叫び、Jリーグには馴染みのない「対戦相手に対するエール」までしてみせた。

中にはVONDS市原がこの舞台で戦う権利を得ていることに悔しさを感じている人もいたはずだ。つくばFCは茨城県予選の準決勝で敗退し、いわきFCは先日行われた1回戦で既に敗退。千葉県予選の決勝でVONDS市原に敗れたブリオベッカ浦安のサポーターに至っては、昨年この舞台でレイソルと対戦しているのだ。

 

「エール」は自らの存在を確かなものとしてくれる対象に向けたもの

 

しかし彼らは自らの応援しているチームが「対戦相手」の存在によって「成立」していることを理解出来ているように思う。

それは、Jを目指すクラブ、そうでないクラブ、Jを目指せないクラブ、そうした様々な背景を持つチームが戦うカテゴリーで生きているからこそ持ちうる感覚であるのかも知れない。

彼らにとって、リスペクトする対戦相手に「エールを送る」のは当たり前のことであり、日頃のリーグ戦でもやっていることだ。

もちろんそれが「エールの交換」へと発展することを僅かに期待はしながらも、その本意が必ずしもそこに在るわけでもない。

自分たちが応援するチーム、そのチームと対戦する相手、所属するカテゴリー…

つまり自分たちの存在を「確かなもの」としてくれている対象に向けて「エール」を送っているのだ。

私はそれを自分自身が応援している柏レイソルのホームスタジアムで改めて実感することが出来た。

そして、この夜日立台のビジターゴール裏へ入ったのも、こんな「サッカー愛」に溢れた空間でそれを実感したかったからなのかも知れない。

 

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日頃あまり人の目に触れることの多くない下位カテゴリーの試合画像を中心に、私が試合会場などで撮影した画像をまとめたPHOTO GALLERYです。

 

私が撮影したJ.LEAGUEのフォトギャラリーです。基本的にJ2リーグ、J3リーグのみをまとめてあります。

 

首都圏、関東圏を中心にJリーグから都県リーグまでの試合日程を記したカレンダーを作成しました。是非とも現地観戦のご参考に!

2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

ブログタイトルは「ラーテル46.net」

こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

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