「サッカーは儲けにくい」儲かるプロ野球との構造的違いとJリーグの在るべき姿

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イギリスの経済学者ステファン・シマンスキーとアメリカの経済学者アンドリュー・ジンバリストの共著『サッカーで燃える国、野球で儲ける国』の中で、サッカーと野球、この両者の商業的特性をこう解説している。

野球クラブは儲かっていないとされているが、あらゆる証拠によれば、相当な利益を上げているというのが筆者の意見である。これは長年にわたって懸念されているMLBの独占的な性質による。対照的に、サッカーでは競争的な構造のため、少数のエリートクラブを除くほとんどのクラブは、利益を生み出す能力について制約を受けているというのが筆者の見解である。

 

野球とサッカーが共存する国

 

プロ野球とプロサッカーが共存する国は、世界を見渡してもアメリカと中米、そして韓国と日本くらいしか存在しないが、その中でも野球とサッカーそれぞれが長い歴史の中で築いてきたリーグ戦形式を非常に素直に導入出来ているのは日本だけかも知れない。

アメリカのプロサッカーリーグ「MLS」は降格制度のないリーグだし、韓国のKリーグも形式上は2部制が取られているが、実態としてはAFCがACLの参加資格として2部リーグの運営を義務づけたことによって作られたカテゴリー制度のようなもので、リーグの新陳代謝がそれによって十分に促されているかと言えば、Jリーグとは比較にならないレベルにあると言っていい。(韓国のサッカーリーグは4部まで存在し2部までがプロリーグ。そして2部と3部、3部と4部の入替制度は実施されていない)

 

野球は「運命共同体」サッカーは「弱肉強食」

それでは、何故、野球が儲けているのに、サッカーは儲けにくいとされているのか。

これについては、日頃プロ野球とJリーグの共存に触れることが可能な日本社会で生活されているからこそ理解していただける部分も多いと思うが、その最も大きな要因はそのリーグ戦形式にあると言えるだろう。(試合数を主要因と考える方もいるかも知れないが、サッカーが今のリーグ形式で試合数を野球並みに増やしたとしても「儲かる構造」にはならないと私は思っている)

野球が限られた球団によってリーグが運営されているのに対し、サッカーリーグには入替戦が存在する。言ってみれば野球リーグが「運命共同体」だとすればサッカーリーグは「弱肉強食」の世界なのだ。

このリーグ戦形式の根本的な違いが、商業的な「成功」の姿にも大きな違いを生み出している。

アメリカのプロスポーツは、野球に限らずバスケットボール(NBA)もアメリカンフットボール(NFL)もクロージングのリーグ戦形式で行われており、突出した球団が生まれないような配慮もされている為(ドラフト制度による戦力均衡など)「社会主義的」と称されることもあるそうだ。

 

「圧倒的強者」のいるサッカーリーグ

 

一方、サッカーの世界に目を移してみると、欧州のどのリーグを見ても2~3つ、あるいは5つ程度の「強者」が存在し、チャンピオンになるクラブは限られている。プレミアリーグで言えばチェルシーやアーセナル、そしてマンチェスターの2つのクラブなど、スペインではバルセロナとレアル、ドイツはバイエルン、ドルトムントと言ったように、彼らは入替戦のあるリーグに所属しながらも、その圧倒的な資金力を後ろ盾にして、常にトップリーグ上位を自らの居場所に定めることで「儲けにくいリーグで儲け続ける道」を歩んでいる。

こうした傾向が顕著になっていくことで、同じリーグに所属していながらも、そのクラブ間格差は広がっていく一方で、優勝出来るチーム、上位進出出来るチーム、残留争いをするチームとクラブ毎の「キャラクター」も明確になる傾向が生まれ、リーグ戦を戦う上での目標の置き方についてのギャップがあるのが当たり前と捉えられてもいる。

これを以てネガティブな要素と取る人もいるかも知れないが、私は決してこうした状況がクラブにマイナスばかりをもたらせるものではないと思っている。

「クラブ間格差」が「身の丈経営」を生み出す

 

優勝や上位争いをするクラブは、それを果たすべく毎シーズンのような大枚をはたいて新しい選手を補強し続ける必要が出てくるが、そうでないクラブは必ずしもそうではない。もちろん、現在のプレミアリーグなどを見れば、残留争いをしているチームの所属選手を見ていても名のあるスター選手がプレーしているケースもザラにあるのだが、それでもマンチェスターシティの陣容と比較すれば雲泥の差であるはずだ。

つまりチームのリーグ戦での立ち位置がある程度定まっていることで、クラブは「身の丈に合った」経営がしやすくなる。

入替戦が存在し、戦力均衡が図れない構図であっても、サッカーリーグが生き残っていく為には、それぞれのクラブが安定した経営を継続できる事こそが重要で、先に書いた「身の丈に合った」経営をいかにしていくかが、Jリーグにおいても非常に重要な「術」であると私は考えている。

 

「全てのクラブがJ1昇格、J1優勝を目指すことほど不健康な状態はない」

ヴィッセル神戸がイニエスタを獲得したことで、Jリーグが来シーズンから外国人出場枠を緩和、撤廃するという動きを見せているようだが、これに対して「戦力格差が生じてしまう」と批判することは、Jリーグが生きながらえることには繋がらないかも知れないし、「Jリーグはどのチームにも優勝のチャンスがあるのが素晴らしい」とする意見についても、それが18ものチームで行われているリーグ戦であれば、リスクが大きすぎると考えることも出来る。

現状のJリーグを見ても、鹿島アントラーズにだけは「常に優勝争いを出来るチーム」としての実績があると言えるかも知れないが、それでも今シーズンのこれまでの成績を見れば、その鹿島とて絶対的な存在とは言い切ることが出来ない。現在圧倒的な勝点差で首位を独走しているサンフレッチェ広島にしても、昨シーズンは残留争いをしていたチームだ。

こうした「不安定」なチームの在り方が、J54チームの全てに常に付きまとっている現状があると捉えた時に、Jリーグがこの先の10年、20年と消滅することなく存在し続ける可能性を探る方が難しいようにすら思えてくる。

 

 

極論だがこうも言える。

「全てのクラブがJ1昇格、J1優勝を目指すことほど不健康な状態はない」

チェルシーがロシアの石油王のバックアップを取り付けたことで、平凡なクラブからリーグ屈指の強豪へとこの20年余りの間に大変身してしまったような事例は他にも沢山あるし、それを目指すだけの根拠さえあれば、優勝や昇格を目指すことは素晴らしいことだ。しかし半ば反射的に「優勝!」「昇格!」と言う目標が口をついてしまう風土は、本来サッカーリーグには相応しくないのかも知れない。

「サッカーは儲けにくい」

入替戦のあるリーグ形式をJリーグが取っている以上、これはそこに関わる全ての人々(ファン、サポーターも含めて)が認識しておいた方がいい事であるだろう。

「サッカーは儲けにくい」からどうすべきなのか。

「サッカーは儲けにくい」から自分のチームをどう見つめるべきなのか。

そこに立ち返ってクラブの将来像を描くことが大切なように思う。

 

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2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

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こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

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