秋春制で行われているBリーグの2017/2018シーズン全日程が終了した。
創設2年目となった今シーズンのBリーグは、その観客動員数についても前年を大きく上回り、2018年に入ってからDAZNでの視聴も出来るようになったこともあって、普段Jリーグを見ているサッカーファンにとっても身近な存在となってきているように感じる。
私自身もつい半年前まではBリーグに対してほとんど関心が無かったが、DAZNを通して見た試合会場の様子に想像以上の「盛り上がり」を感じ、気がつけばリーグの終盤にかけて8試合も現地観戦するまでになってしまった。
「ショック」を受けた船橋アリーナ
私が初めてBリーグに触れたのは千葉ジェッツのホーム、船橋アリーナだった。
この時に会場全体から感じた「Bリーグの世界」は、これまで私が持っていたプロスポーツに対する固定観念のようなものをいい意味で覆された。
細かくは以前このブログに書いた記事
【JリーグファンがB.LEAGUEを見に船橋アリーナへ行くとショックを受けるかも】
を読んで頂ければありがたいが、何しろ、ほとんどバスケットボールに対する知識がなく、選手やチームの情報にも精通していない私のような「門外漢」でも、試合前後の時間も含め「そこにいることが楽しい」と素直に思えるような空間が船橋アリーナに存在した。
この日の千葉ジェッツは、対戦相手の栃木ブレックスに対して終盤までかなりリードしていたのに大逆転を喫するという、その勝敗だけで言えば非常にショッキングなゲームを見せた。
これがJリーグのスタジアムであれば、試合終了のホイッスルとともにスタンド全体がお葬式のような雰囲気になって、場合によっては強烈なブーイングが起きてもおかしくないような展開であったのに、船橋アリーナからはほとんどそうした雰囲気を感じることが無かったのも非常に新鮮だった。(もちろん多少のため息が聞かれたのは事実だが、それも一瞬だったと記憶している)
勝っても負けてもいつも楽しそうなブースター
Bリーグの試合会場に集まる「ブースター(Bリーグのファン、サポーターのこと)」が、応援するチームの勝敗に無頓着だとは思わないが、彼らは勝敗に関わらず試合会場でひと時を過ごした時点である程度の満足を得ているのではないか。そんな仮説を持ちながら、なるべく多くのチームの試合会場へ行ってみようと、遠くは宇都宮にまでBリーグ観戦に行った私だったが、その仮説が「思い違い」だと感じることは一度も無かった。
リーグ終盤でチームの最終順位に試合結果が直結するような「シビア」な戦いの後であっても、そこには悲壮感や苛立ちのようなものは感じられず、BリーグがJリーグをモデルとして創設されながらも、根本の部分でJリーグとは違う道を歩んでいるように私には見えていた。
リーグが終了しプレーオフが始まると、私の関心の先はその「優勝争い」ではなく「残留争い」へと移っていった。
いつも楽しそうなブースターが「入替戦」でどうなるか?
B1~B3までが存在するBリーグでは、「残留、昇格プレーオフ」を経て決定したそれぞれの最下位と最上位チームとが、一発勝負の入替戦を行うレギュレーションとなっているので、常に「そこにいる楽しさ」が伝わってくるBリーグのブースターが、どんなムードでその試合に参加するのか、単純にそこに興味が湧いたのだ。
結論として言えば、そこには確かに「感涙」があった。
私が観戦した「B1、B2入替戦」では、B1の富山グラウジーズがB2熊本ヴォルターズとのシーソーゲームを制したので、劇的な「入替」が起きることは無かった。それだけに多勢を占めた富山ブースターには安堵の涙が、挑戦が叶わなかった熊本ブースターには無念の涙を見ることも出来た。
しかし、ともすれば鬱積した感情が爆発してもおかしくないようなシチュエーションが揃っている入替戦の現場にも、悲壮感やヒステリックなムードはほとんど存在していなかったように思う。
リーグ黎明期であるからこその「寛容さ」
もちろんそれはBリーグが創設2年目という黎明期にあることが多分に影響しているはずだ。
Bリーグで戦う全てのチームが、始まってから僅か2年目のリーグにおいて自らのポジションを自覚出来る段階に至ってもいないのだろう。
彼らにとってB1であろうとB2であろうと、Bリーグを楽しむという意味においては、そう大きな差が感じられないのかも知れないし、熊本のブースターが今回B1に昇格出来なかったからといって「来季は試合会場へ行かない」と気持ちが変わってしまうことも少ないのだろう。
しかし、これらはあくまでもリーグが黎明期だからこそ存在出来る「寛容さ」がそうさせている面も否めない。
5年後、10年後、Bリーグはどう変わっていくのか
今後Bリーグが5年、10年と歴史を刻んでいく中で、必ずそれぞれのカテゴリーに対する意義や価値が否応なしに付加されていく。それは何も精神的なものだけを指すのではなく、チームの運営資金、市場価値という経済的な側面についても、今以上にチーム間格差がはっきりと分かれていくであろうことも指している。
カテゴリーに対する価値が付加されていけば、当然ながらレギュラーシーズンの試合の持つ意味合いも現在とは少し受け取られ方が変わっていくかも知れないし、そうなれば「勝敗」にのみ執着するブースターが生み出されていっても不思議ではない。
Jリーグは創設から四半世紀が経ち、後参プロスポーツの手本とされる場面も多いし、Bリーグはまさにその王道を行くプロリーグでもあるのだが、彼らにはJリーグの育んでしまった「カテゴリー至上主義」に陥らない可能性が十分にあると感じている。
「カテゴリー至上主義」が行きつく先は、下位カテゴリーからの段階的崩壊であると私は考えているし、実際にJ3リーグの現状を見れば、もはやプロリーグとして成立しているとは言えない状況がそこには存在し、将来的な展望も「昇格」以外には描けない実情が当たり前として捉えられ、今いる場所を受け入れることをせずに、現実感のまるで感じられない上昇志向だけが亡霊のように彷徨っているようにすら見える。
私はBリーグの試合会場で「そこにいることが楽しい」と実感することが出来た。そして現在のBリーグが多くの人々に受け入れられつつある状態にまで成長してきたのは、それぞれのチームがBリーグのエンターテイメントとしての姿にこだわってきた結果であることは明白だ。
「勝利」こそがあらゆるスポーツにとって最大の価値。
こんな常識が漫然と存在する日本のスポーツ界にBリーグが誕生した意味は大きい。
そして10年後の入れ替え戦の会場でも、ブースターが互いにエールを送り合うような世界が続いていて欲しい。
ちなみに私は今シーズンのBリーグを8試合も見ておきながら、覚えたのはジェッツの富樫選手くらい。それでも十分に楽しめてしまう世界がBリーグの試合会場にある。