「リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上」
このチームビジョンを掲げ、創設以来10年に渡って「ブレず」に活動規模を拡大させてきた社会人サッカーチーム「irrumattio」大坪代表に取材させていただけたことで、私の求めている日本のサッカーカルチャー、さらに言えば日本社会におけるスポーツ文化の将来像が、決して叶わぬ夢ではないと思えたと同時に、少しだけ明るい未来が待っているような気持ちにさせられた。
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「遊び」から「習い事」へと変質した少年サッカー

Jリーグが発足したことで、サッカーの競技者指向が強まったのは紛れもない事実であり、それが例え幼い子どもたちのプレーするチームであっても、彼らがサッカーに取り組む時に何らかの「大義名分」が幅を利かせるようになってしまったと感じている。
「ゴールデンエイジ」「指導者資格」「協会登録」「選抜」・・・
本来、子どもたちにとって「サッカー」とは遊びのひとつであったはずなのに、いつしかサッカークラブへ通うことが「習い事」のひとつとしてカウントされるようになっていった。
「習い事」であるので、それぞれの子どもの「修練度」が大人によって審査され、実力が足りないと評価された子どもたちの居場所はグラウンドから無くなっていく。
「正規ルート」以外の「道」が日本のサッカー界では全く重要視されていないかのようにも思えてくる。
「正規ルート」から外れた少年たちの受け皿がない

これは何も子どもたちだけに限った現象ではなく、中学、高校と進学していくにつれ、少年たちが「サッカーと遊ぶ」場所はほとんど無くなってしまったと言ってもいい。
東京の高校サッカーの実態を見てみても、こうした傾向には年々拍車がかかってきている。
一部の強豪校に選手が集中し、大会の上位進出校は毎回のように同じ顔触れ。強豪校のサッカー部に入部出来るような技量を持ち合わせていない少年たちが進学する高校では、サッカーを出来るだけの生徒を集めることが出来ず、活動休止をせざる得ない状況に置かれているサッカー部もあると聞く。
サッカーをやる場所を失った少年たちにはほとんど受け皿らしい受け皿が存在せず、あたかも日本のサッカー界にその存在自体が無きものとされてしまっているような印象すら覚える。
大坪さんが代表をされているirrumattioが、必ずしもこうした少年たちの受け皿として直接的に機能している訳ではないが(彼らは決して技量が低くはない。練習試合の対戦相手になっているのは都県リーグ1部や関東リーグのチームなのだから)様々な事情によって「正規ルート」でサッカーをする事が叶わなくなった人たちの「受け皿」となっている点においては、先述した「サッカーをやる場所を失った少年」に共通する部分はあるだろう。
「サッカーに関わり続けること」「サッカーをプレーし続けること」の大切さ

「サッカーに関わり続けること」「サッカーをプレーし続けること」こうした一見当たり前に思える概念が、実は日本のサッカーカルチャーの中で大切に思われていないのでは。
これが取材時に大坪代表と話をしていて、彼と最も思いが共通する部分であったように思う。
運よく、私が少年だった時代は、日本サッカーそのものが「日陰」の存在で、だからこそある程度の多様性に寛容な世界があった。
当時は高校生や大学生になってからサッカーを始める少年も少なくなかったし、サッカーに関する情報も現在と比べれば格段に少なかった。そうした背景の中、少年たちのサッカーに向き合う姿勢や考え方についても、その「個性」が入り込む隙間が十分にあった。
少子化が進み、子どもの絶対数が激減していく中で、「子どもの社会」に大人が介入する場面が増えていっている。それ自体が決して悪いことであるとは言わないが、いい意味で「稚拙」な状況、いい意味で「不完全」な状態、そうした実は味わい深い「子どもの社会」が無くなってしまうのではと言った危惧も覚える。
「多様性」を認め合う これこそが日本のサッカーカルチャーを深めるカギ

irrumattioが、至極当然とされている「リーグ所属」という社会人サッカーの在り方を拒み、新しい価値を生み出すとともに、そこで生まれ出る価値を高めるべく活動し続けてきたこと。
メンバーの多様性を認め合うことを是とし、実際そこに多くの若者が集まってきていること。
これらの事実を確認するだけでも、日本のサッカーカルチャーが次のフェーズへと進みだす気運を感じなくもない。
彼らに触発された若者が、第二のirrumattio、高校生のirrumattio、少年サッカーのirrumattioとその可能性の幅を模索していくことで、日本のサッカーカルチャーはこれまでの日本社会に存在し得なかった新しいスポーツの価値観を見いだすはずだ。
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