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【リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上】irrumattio大坪隆史代表の挑戦

time 2018/05/23

【リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上】irrumattio大坪隆史代表の挑戦
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『「どこのリーグにも所属していない」たったそれだけの理由で、私たちは練習試合の対戦相手の候補から外れるんです。サッカーが好きで、自分たちなりに真面目に取り組んでいたんですけどね(笑)。もしかしたら、その当時の“真面目さ”に、何か欠けている部分があったのかもしれませんが……』

空は青く晴れ渡っているが、涼しい風が僅かに吹いているので決して暑くは感じない。まさにこの日は初夏の清々しいサッカー日和。

埼玉県大宮市の「大宮けんぽグランド」の一角にある天然芝のサッカー場で、社会人サッカーチーム「irrumattio(イルマッティオ)」の練習試合が行われていた。(irrumattioは「食らいつく」という意味だそう)

この日の対戦相手は埼玉県社会人サッカーリーグ1部に所属する「与野蹴魂会」。

そんな強豪社会人チームと堂々と渡り合っているこのチームが、都県リーグにも市区町村リーグにも所属していない社会人チームであると言っても、恐らくほとんどの方はピンと来ないのではないだろうか。

「リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上」というチームビジョンを掲げ、チームが発足したのは今から10年ほど前のこと。

冒頭のコメントは、チームの創設者でありirrumattio代表を長く務めてこられた大坪隆史さんが「何故リーグに所属しないというチームビジョンが生まれて来たのか」という私の問いに対して最初に発した言葉だ。

 

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「あいつらは何者なんだ!?」

 

静岡・御殿場南高校の仲間が集まり東京で始めた草サッカーチームは徐々にメンバーが増えていったが、練習試合を組むことすら困難な状況があった。

大坪代表はこう話す。

『実績もなくリーグにも所属していない私たちは、多くの社会人チームから敬遠されていました』

リーグに所属していなければその実力も測れない。チームの運営についても信用が得られない。「リーグ所属チームに非ずば社会人チームに非ず」こうした常識が社会人サッカーの世界に漫然と存在しているのは事実でもあろう。

実際に「草サッカーネットワーク」などのネット掲示板でもチームに対する悪口も散見されたそうだ。

「あいつらは何者なんだ!?」

メンバーのサッカー選手としての質、チームの運営態勢、そうした社会人サッカーチームに必要とされる要素に一定の自信を持っていた大坪代表の中で、「リーグに所属していない」という理由でチームが受けた様々な冷遇が「反骨心」を生み出し、それが現在irrumattioの掲げているチームビジョン「リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上」へと繋がっていく。 

増加する若年層のニーズ

 

『チームを創設してから10年間無くならずに生きてこられたのですから、それなりに需要はあったんだと思っています』

大坪代表がこう語るのも当然で、現在irrumattioには、たまにしか参加できないメンバーや個人参加のメンバーを含めると約80人のメンバーが登録をしており、この1年ほどの間にチームへの参加問い合わせの件数がかなり増えてきていると言う。今年は過去で一番の問い合わせ数だそうだ。

『最近の傾向として、高校を卒業したばかりの子や、大学生の子といった若い人たちからの問い合わせが非常に増えていますね』

確かにこの日の練習試合に参加していたメンバーの中にも大学生がいた。その中のひとりに話を聞くと、彼はこのチームが自分の競技力や生活サイクルにフィットしていると話してくれた。

メンバーの中には船員もいる。

『彼は強豪大学サッカー部の出身者ですが、職業柄「陸」にいられない期間が長い。それでも、ある程度高いレベルでサッカーをしたいと思った時に、リーグ所属の社会人チームが受け皿になることって難しいと思うんです。彼は短くて4カ月、長ければ9カ月も海上にいるので、陸に上がったら、シーズンが終わってしまいますよね(笑)』

irrumattioは基本的に1年を通して練習試合や大会参加しながら活動をしている。多くの社会人チームがリーグ戦期間を活動の中心とした上で冬場に長いオフシーズンを取っているのに対し、彼らにはオフシーズンがほぼない。

社会人としての生活サイクルが多様化していく中で、この「オフシーズンがない」というチームの在り方も、彼らが「受け皿」となる可能性を広げているのだろう。

 

サッカーが出来ない人が生まれてしまうのは「機会損失」

 

『サッカーをしたくても出来ない人がいるのは、大袈裟にいえば、日本サッカーの機会損失だと私は思っているんです。そういう意味で私たちは活動スタンスについても多様性を認めようという話はメンバー間でも共有していますし、それこそ月に1度しか参加出来ない人であっても、そういう人たちの受け皿になろうと。学生しかり、社会人しかり、irrumattioはサッカーを続ける選択肢になりたいんです。サッカーを続けること自体が大切だと考えています』

80人からのメンバーがそれぞれ違った事情を持っている。そしてそうした事情がいつもネガティブな要素をはらんでいる訳ではない。どんな人であっても持っていて然るべき、社会人として極々当たり前な事情であることがほとんどなのだ。

しかし「彼」がある程度の競技性を追求していった時に、そこでサッカーをしようと思っても「社会人として当たり前な事情」がそれをさせることを許さない実情。こうしたケースはどなたでも見聞きしたことはあるだろう。

 

二極化する社会人チーム

 

先ほどもお話した通り、私はirrumattioがサッカーをする場としての選択肢の一つとなればいいと思ってますし、今後はその必要性も高まっていくのではないかと思ってもいます』

少子化が進んできたことで、現在都道府県リーグに所属する社会人チームは激減していると言われている。東京の最下位カテゴリー東京都4部に関して言えば、この10年の間にそのチーム数は半減した。

しかしその一方でJリーグなど、上位カテゴリー昇格を明確な目的とするチームは増えており、社会人リーグに所属するチームの間で二極化が顕著になってきている——というのが、大坪代表の見方だ。

『この二極化がさらに進んでいけば、今以上にサッカーを続けられない人が生み出されていく環境が出来てしまう。私たちが多様性を認めるスタンスを続けていくことで、多くの人にとっての受け皿になっていくだろうし、私たちのチームビジョンに共感してくれる仲間が増えるよう、情報発信も積極的にしていきたい』

 

ブランディングの大切さ 東京カップへの挑戦

大坪代表はirrumattioの情報発信ブランディングにも注力している。

日々の活動報告はもちろん、これまでにネットメディアなどに出演し発言もしてきた。

練習試合の結果については、対戦相手の所属カテゴリーまで詳細に触れ、かつて「あいつら何者だ!?」と敬遠されて続けていた時期に示すことが難しかった実績」も徐々に手に入れててきている。

『チームのスローガンに、【リーグ無所属で狙う、giant killing】を掲げているので、昨年度から参加出来るようになった東京カップは、とても楽しみな大会です』

天皇杯東京代表決定戦にも繋がっているこの大会は、東京都の市区町村のサッカー協会に所属しているチームにも門戸が広がっている。大坪代表が千代田区サッカー協会の理事を担っていたことも縁となって、千代田区代表としてこの大会へ挑むチャンスを得たirrumattioにとって、東京都リーグの上位や関東リーグのチームと真剣勝負が出来ることが非常に刺激的なものであるようだ。

大坪代表がirrumattioメンバーと共有している「選手選考」について触れた資料。代表のリーダーシップが垣間見れる。

公式戦のメンバーの選定は、選手主体の現体制では、キャプテンをはじめとする首脳陣メンバーが決める仕組みになっています。ただ、選定にあたっては、先ほどの多様性を認める観点から、出席率は最重要視しない方針なんです。月に1度しか参加出来ないメンバーであっても、その時に毎回200点のパフォーマンスを発揮してくれるようなメンバーであれば、出場してもらうケースもあります。

東京カップについては……カテゴリーでいったら最下層の地区連盟のチームが東京1部や関東リーグのチームさんに勝利するのは簡単なことではありませんが、0%ではないと思いますし、ロマンがありますよね。仮に、もしそんなことが起きれば、私たちが広めようとしているチームビジョンもより多くの人に理解してもらえるかもしれません』

 

今後irrumattioが見いだす価値は

irrumattio大坪隆史代表 穏やかな言葉の中に強い信念を感じさせる方だった

 

この日行われた埼玉県社会人リーグ1部「与野蹴魂会」との練習試合は、一進一退の好ゲームとなった。35分×3セットという変則マッチの結果は1-0でirrumattioの勝利。

セット間に行われていたミーティングに、私は彼らの目指している方向の一端を見たような気がした。

「難しいことにチャレンジしていかないと、このレベルの相手は勝たせてくれないぞ」

彼らひとりひとりを見れば、それぞれが全く違った事情を持ち、全く違ったスタンスでチームと関わっている。

それでもその日一緒に戦うからには、心を一つにして向上心を持ちながらチャレンジし続けているのだ。

『リーグ所属で優勝や昇格を目標としている社会人チームの場合、その可能性が潰えた瞬間からモチベーションが一気に下がってしまうようなケースもありますよね。実際にリーグ所属チームのそういう部分が嫌で、こっちに移ってきたメンバーも少なくありません。その点、私たちは1年を通じて1試合1試合に対し常に高いモチベーションで挑むことを大切にしています。自分たちの居場所は、自分たちの手でつくる。自分たちの寿命は、自分たちで延ばす。『都リーグ●部』という冠がない以上、与えられるのを待ってはいけないんです。そして、どんなに苦しいときでも自分たちの理念を絶対にぶらさない。これが、一番大切なことかもしれません』

 

「リーグ無所属社会人サッカーチームの価値向上」

今後irrumattioがそこにどれだけ多くの価値を見いだすことが出来るか。そして彼らが大切にし続けているこの理念が今後どれだけ多くの人々の心を動かしていくことが出来るのか。               

私も継続して見守っていきたい。

 

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プロフィール

ラーテル

ラーテル

元フラワーデザイナー。 日本サッカーの為に生きていくことを決め「世界一怖いもの知らずな生き物」ラーテルのような人間でありたいと願うオスの人間です。 サッカーのことなら基本的に何でもウェルカム。 記事は堅い語り口で書いていますが、本人はそんなに真面目ではありません。 柏レイソルサポーター、 錦糸町フットボール義勇軍(KFG)ラーフル少尉

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