時が経つのは早いもので、自分自身を無意識のうちに「青年」と思っていても、その齢は40代後半に突入。早い時期に両親を亡くした身でもあり、その「ライフパターン」が劇的に変化することも無くここまで生きてきてしまったことも、自身が既に「中年」であることを自覚しにくい要因となっているのかも知れない。
とは言うものの妻の両親は健在であり、現在のところ取り立てて大きな病にも侵されることなく比較的健康的な生活を送ってはいるものの、その年齢だけを考えればいつどんなことが起きてもおかしくはないと心の準備だけはしている。
私が中年になったという事は、同級の友人たちも当然ながらいいおっさんやおばちゃんになって行っている訳で、そうした友人の中には既に親の介護が生活の一部となっている人も出てきている。
「核家族化」という言葉自体が意味をなさないほどに、日本社会における家族の在り方がどんどん「小規模化」していく中で、多くの人々にとって生活の全てを「自分の為」だけに割ける状況は減少していっているように感じる。
スタジアムへ行けない「事情」
晩婚化が進んだことで、誕生した子どもの育児に追われる生活がひと段落するや否や、今度は年老いた親の生活を助ける必要が出てくる。私の母親なども父を亡くした直後に義母が倒れ、その介護と看取りをした途端に、今度は自分自身が癌に侵されてしまった。
今でも母が本当にしたかったことは何だったのか。彼女は人生を十分に謳歌出来たのか。そんなことをたまに考えてしまうが、実際にこうした人生を送らざる得ない状況にある方は想像以上に多いのだろう。
スタジアムへ通う日々を送る人たちは「限られた人々」

サッカースタジアムに行くという行為は、実は案外簡単な事ではないのではないか。
私が通っている柏レイソルの本拠地「日立台」に仲間を誘おうと思っても、大抵の場合それが実現しない理由は仕事の事情であり、家族の事情である。
もちろん、こうした理由を「エクスキューズ」にして、やんわりと断られている向きもあるはずだが、幼い子どもを抱えている家庭や、介護が必要な老人のいる家庭においては、1年のうちにたった1日であっても「自分だけの為」の時間を作ることさえ難しい現状もあるだろう。
言って見れば、今現在Jリーグのスタジアムへ2週に一度、あるいは毎週のように通う生活を送ることが出来ている人たちは、かなり限られた人たちであるはずで、家族の事情だけでなく、週末に自由な時間を作ることが出来る職業に就いているという条件も付けくわえてしまうと、その難易度はかなり高くなってしまうのだろう(学生時代には毎週スタジアムへ通えても、就職した途端に縁遠くなってしまうという例もよく聞く話だし、実際に私自身がそうだった)
「家族の事情」でスタジアムへ来ることが出来ていない人達に対する施策

人々の生活が多様化していく中、週末をメインとする職業も増えていき(日立台で警備している人だって本当は埼玉スタジアムへ行きたいのかも知れない!)その構造自体を大きく変化させて行くことは難しいにしても、今後更に進んで行くとされている少子高齢化社会の中でJリーグが生き残っていく為には、増加していくであろう「家族の事情」でスタジアムへ行くことを断念せざる得ない生活を送っている人たちをどうやって迎え入れるかについての対策や施策が不可欠となっていくだろう。
車椅子に乗った老人と一緒にサッカー観戦をする為には、どうした対策が必要であるのか、乳児を抱えた夫婦がサッカー観戦をする為には、どうした施策が適切なのか、これらをハード面においても、ソフト面においても、具体的な設備や手法を構築していくこと、これがこの先もJリーグが長く社会から愛される存在で居続ける上でのキーワードになっていくだろう。
「スポーツと介護の融合」を目指す祖母井秀隆さん

今季から関東サッカーリーグのVONDS市原FC代表となった祖母井秀隆さんは、市原にある老人介護施設の企画部長もされている。
フランスの1部リーグ「リーグアン」でクラブGMまで経験された氏には、多くのJリーグクラブからもオファーがあったそうだ。それでも地域リーグのクラブ代表という「日陰の道」を選んだ理由として
VONDSでなら福祉施設での経験も活かし、リンクさせながらできると感じ、引き受けることを決めました
と話されてる。
祖母井さんが、どんなビジョンをもたれてこうした判断をされたのかについて、私はまだ直接お伺い出来ていないが、以前お話させていただいた時には「私はJリーグで優勝や昇格を目指すというサイクルでサッカーに関わるのはもういいと思っているんです」とおっしゃっていた。
これを以て、祖母井さんの描こうとしている未来図は伺い知れないが「スポーツと介護の融合」というテーマの中には「サッカー観戦をする介護老人たち」の姿もイメージされているのではないだろうか。
「未来志向」が抜け落ちたマチズモの居場所はなくなる

ともあれ、こんな事を考えていくと、現在のJのスタジアムにある、ややもすると「排他的」とも言える様々な現象について、それらがいかに「未来志向」の発想が抜け落ちたものであるか、先細っていくJリーグを傍観するような行為でありはしないか、そう思えてしまうのだ。
「ゴール裏はコアサポーターの場所 初心者にはお勧めしない」というような「常識」についても、Jリーグがこの先の生き残っていく為には、今現在ゴール裏にいるサポーターの人数だけでは維持していくことすら難しいはずで、5年後、10年後のゴール裏の風景が大きく変容しているかも知れないという想像力を持っていれば「お勧めしない」という言葉がいかに独善的であるかも理解できるはずだ。
2025年には団塊世代が後期高齢となり、国民の3人に1人が65歳以上の老人という超高齢化社会になると言われている。20歳から64歳の人が1.8人で1人の老人を支えるという状況になると試算されていることからも、ほとんどの国民の生活の中に何らかの形で老人介護が入ってくることは確実だ。
これが現在からわずか7年後の話なのだ。
「ゴール裏とはかくあるべき」といったマチズモに慕うのは一向に構わないが、それと同時にスタジアムの未来図を想像出来ていなければ、早晩そんな居場所はなくしてしまうだろう。
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2017年9月から、私が開設しているブログがあります。
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こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。