とうとうこんな所にまでサッカーを観に来てしまったなあ。
自衛隊が全国規模のサッカー大会を開催しているという情報は、錦糸町フットボール義勇軍を聞いて初めて知った。
それを聞いたのは多分昨年の秋頃で「自衛隊のサッカー大会マニア」がいるらしいこともその時に知った。
「決勝戦は西が丘で行われるらしいし、一般市民でも観戦出来るのかな」
そんな風に思いながらも、私の日常生活では決して接することのない自衛隊員による大会であるのだから、短髪で真っ黒に日焼けした屈強な男たちによるゴリゴリのサッカー大会、といったイメージを勝手に抱いていた。
そんな自衛隊サッカー大会についての情報を3月の末に偶然JFAの公式サイトで発見した。
自衛隊のサッカー大会を観に駒沢補助Gへ

日程は2週に渡って金~日という3連戦をこなすというかなりハードなもの。さすが自衛隊!などと思いつつ、私はスケジュールにその日程を書き入れていた。
大会が始まると、錦糸町フットボール義勇軍のオットナー参謀長が、今年のこの大会を取材していることを知った。参謀長はこまめにTwitterで大会の様子を発信してくれたので、それまで私の頭の中にあった勝手な大会へのイメージが、徐々に具体的なものへと変わっていく。
大会最終日、つまり決勝戦と3位決定戦以外は、勝手知ったる駒沢公園の第二球技場と補助球技場で行われている。これならそんなに気負う必要もなく観戦出来そうだ。そう思うと、迷わず金曜日の朝から大会準決勝の2試合を駒沢補助Gまで観に行ってしまった。
絶対王者 厚木マーカス

準決勝第1試合は海自厚木マーカス対海自 A. N. F. C (厚木なかよし)
私は自衛隊によるサッカーの世界がどういったものなのか、そうした予備知識をほとんどもたないままに会場へ行ってしまったが、どうやらこの世界はその背景が分かっていれば分かっているほど堪能出来るようだ。
勿論、どんなサッカーの世界であっても同じことが言えるのだが、「自衛隊」という存在の特殊さが、その傾向を余計に強めている気もする。
この日の準決勝に勝利した海自 厚木マーカスと空自 FC.3DEP(空自第3補給処)は、それぞれが都道府県リーグにも所属し、厚木マーカスは神奈川県リーグ1部、FC.3DEPが埼玉県リーグ2部に参戦している。それだけに、その競技レベルも決して低くはない。選手たちの多くが大学サッカーや高校サッカー強豪校の出身者で、中には海外でプロ経験のある選手までいる。
特に厚木マーカスはこの四半世紀のうちに17度も優勝している絶対王者で、その選手たちのレベルは段違いに高い。

準決勝第1試合は空自 FC.3DEP対空自 浜松基地サッカ一部
多くの方は自衛隊のサッカーと言うと「フィジカル重視」と想像されるかも知れないが、日頃、都道府県リーグの上位で戦っている彼らのサッカーはむしろテクニカルだ。選手たちのサッカー経歴を見ればそれも当然なのだが、美しいパスの交換からチャンスを創出するスタイルは、もう日本サッカーのひとつのスタンダードになってきているのかも知れない。
ただし、その戦いぶりは実に「タフ」だ。
まず第一に、彼らはこの暑い最中に3日連続で激戦をこなす。私が観戦した日は3連戦の2試合目にあたる日であったものの、両軍が試合終了まで高いテンションで戦う意思を持っていることがヒシヒシと伝わってきた。
選手達は確かに屈強で日焼けもしているが、必ずしも全員が短髪というわけではないし、そのサッカー自体は決して「ゴリゴリ」でもない。思い描いていたイメージとは少し違う光景がそこにあった。
自衛隊サッカーを堪能すべきはその競技力だけではない

選手だけでなくレフリーも自衛官だ
しかし、堪能すべきは単にその競技レベルだけではない。
そこでプレーしている選手たちの全員が自衛隊員であるという事実。選手のみならず監督やチームスタッフ、応援で大旗を掲げている人も、レフリーまでもが自衛隊員なのだ。
会場で取材していたオットナー参謀長から聞いた話では、大会本部に提出するメンバー表には、ポジション、背番号、名前の他に、その選手の「階級」を記入する欄があるそうだ。
日頃絶対に逆らうことが出来ないような階級の違いがある選手同士でも、この大会でマッチアップする時だけは激しいスライディングをかまし、空中戦では頭と頭をぶつけ合う。
ただし選手より年齢が高い傾向のあるレフリー達は上官であることも多く、そうであるからなのか、Jリーグの外国人選手のようにレフリングに抗議するような姿はあまり見られない。
こうした情報はそれらを詳細に把握していなくても、十分にこの世界を堪能出来る要素となり得るのだが、知れば知るほどこの大会の堪能度合いを高めてくれるのだろう。
社会人がサッカーを続ける場所としての「受け皿」

試合前のウォーミングアップをする空自 FC.3DEP
高校や大学で真剣にサッカーに取り組み、全国レベルの大会に出場するような経歴を持っている選手であっても、彼らがプロサッカー選手になれる可能性は限りなく少ない。プロではないにしてもJFLや地域リーグからJリーグ昇格を目標とするようなクラブで選手としてプレーできるチャンスも決して大きいとは言えないだろう。
かつて日本のあらゆるスポーツ界を支えていた実業団スポーツが成立しにくい時世の流れの中で、自衛隊でサッカーを続けるという選択肢が、社会人スポーツ、あるいは生涯スポーツの側面からも若いサッカー選手の受け皿として機能していると取ることも出来る。
もちろん「国家の安全」を守ることを責務とされている彼らは決して「サッカー選手」ではない。東日本大震災や熊本地震が発生した年には、多くの「選手たち」も被災活動に従事し、この大会自体が中止にもなった。
そうした特殊な環境であるのは間違いのないことでもあるが、それだけに日本中の自衛隊サッカー部員にとって、1年に1度東京で開催されるこの大会に参加することが大きな励みにもなっているはずだ。
そして、こうしたサッカーの世界が、我々世間一般のサッカーファンにとっても十分に楽しめる世界であるということは知っておいてもいいだろう。
最後に、地区予選を勝ち抜き今年開催された「第52回全国自衛隊サッカー大会」に出場した全24チームを紹介していこう。
1 | 51回優勝 | 海自 厚木マーカス | 神奈川県 |
2 | 51回準優勝 | 空自 FC.3DEP | 埼玉県 |
3 | 51回3位 | 空自 入間基地サッカー部 | 神奈川県 |
4 | 北海道 | 空自 第3高射特科群本部 | 北海道 |
5 | 陸自 札幌駐屯地サッカ一部 | 北海道 | |
6 | 東北 | 陸自 神町自衛隊サッカ一部 | 山形県 |
7 | 東北・関東 | 空自 Hyakuri. F. C | 茨城県 |
8 | 関東A | 空自 熊谷基地サッカ一部 | 埼玉県 |
9 | 関東B | 海自 A. N. F. C (厚木なかよし) | 神奈川県 |
10 | 関東C | 海自 下総航空基地サッカ一部 | 千葉県 |
11 | 東海A | 空自 浜松基地サッカ一部 | 静岡県 |
12 | 東海B | 空自 FCピースカム | 愛知県 |
13 | 近畿・北陸 | 空自 小松基地サッカ一部 | 愛知県 |
14 | 近畿・中国A | 空自 福知山駐屯地サッカー部 | 京都府 |
15 | 近畿・中国B | 陸自 FC伊丹sta | 大阪府 |
16 | 近畿・中国C | 陸自 FCアレジ | 広島県 |
17 | 近畿・中国D | 空自 美保FOOTBALL CLUB | 鳥取県 |
18 | 中国・九州 | 海自 岩国・小月 | 山口県 |
19 | 九州A | 空自 ついきFC | 福岡県 |
20 | 九州B | 陸自 芦屋FC | 福岡県 |
21 | 九州C | 海自 大村航空基地FC | 長崎県 |
22 | 九州D | 陸自 北熊本駐屯地サッカ一部 | 熊本県 |
23 | 九州E | 海自 鹿屋サッカ一部 | 鹿児島県 |
24 | 沖縄 | 空自 レキオウイング・フットボールクラブ | 沖縄県 |
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