V.ファーレン長崎のJ1昇格は想像していた以上に様々な話題を日本サッカー界に振りまいてくれている。
ジャパネットホールディングスの100%子会社として再スタートを切った昨シーズン、戦前の予想を大きく上回る戦績でJ1への自動昇格を決め、ジャパネットの創業者である高田社長がクローズアップされる機会も激増した。
今季初挑戦となるJ1リーグをそのファン・サポーターが「楽しもう」としている姿勢も強く感じられる。
初めて「長崎」のチームを迎え入れた他のJ1クラブサポーターにとっても、観光地「長崎」へのアウェイ参戦がひとつの楽しみとなっているのは間違いない。ビジターエリアに5,000人もの観客を集結させた浦和レッズサポーターが「フットボールツーリズム」を体現するべく、大人数で軍艦島を訪れたことはちょっとしたトピックスにもなった。
V.ファーレン長崎対サンフレッチェ「平和記念マッチ」開催
長崎戦には絶対に行きたかった
理由
①V・ファーレン長崎が好き
②トラスタに行ってみたい
③厳密に言えば「長崎」出身(長崎の病院で生まれた)
④ヴィヴィくん
⑤平和記念マッチ
⑥ばあちゃんが長崎に住んでるから泊まるところに困らない!行くぞ長崎 待っとれ長崎#長崎 #V・ファーレン長崎
— サンフレ主義!! vsG大阪 (@SANFRE_OUEN) April 26, 2018
そんなV.ファーレン長崎が、4月28日に行われる対サンフレッチェ広島戦を「平和記念マッチ」と題して、試合当日にスタジアム内外でいくつかのイベントを行う。
原子力爆弾が投下され、世界に類をみない悲惨な体験を持つ長崎と広島のサッカーチームが、日本サッカーのトップリーグで競い合っているという時点で十分にドラマティックなストーリーを感じてしまうが、彼らだからこそ出来るこうした取り組みで、間違いなくこの対戦の価値が高まっているのを感じる。(ふたつの街に原爆が投下された8月に行われる広島のホームゲームでのこのカードの対戦ではさらに大きな注目を集めるだろう)
「サッカーの試合を見にいく」ことが「その空間で過ごす時間の価値」へと昇華していった時、Jリーグのみならず日本全国で行われているあらゆるサッカーはより高い求心力を持つようになり、サッカーの社会における在り方も深化していくのだろう。
コミュサカ現場に比べれば、Jは「何もかも用意されている環境」だけど・・・

私は最近、そのサッカー観戦の範囲が大きく広がっており、都道府県リーグから地域リーグ、JFLといった「日陰の存在」でもあるコミュサカの現場に行くことが多くなっているので、合間に入る柏レイソルの試合から、J1リーグの持つ華やかさを以前よりも強く感じるようになった。
大勢のサポーターが待機列に並び、開門と同時にスタジアムへ入ればスタグルのテントも沢山出ている。どのチームが日立台に来ても、その選手たちは素晴らしい実績の持ち主ばかり。スマホで情報を取れば、スターティングメンバーからゲームのスタッツ、DAZNでの生配信映像をチェックしながらの観戦だって出来る。
試合を観戦し素晴らしいプレーやゴールの場面があっても、すぐにリプレイ映像を見ることなどコミュサカの現場ではほとんど不可能。そんな環境が主戦場となってきている私にしてみれば、J1のスタジアムからは「何もかも用意されている環境」を感じてしまう。これは決して皮肉ではなく率直な思いだ。
しかし現在のJ1リーグの多くの試合を「何もかも用意されている環境」と感じるのは、私がその比較対象としてのコミュサカの現場環境を知っているからであって、そうした比較対象を持たない多くのJクラブファン・サポーターにとっては必ずしも「何もかも用意されている環境」とは思われていないのかも知れない。
既存の「マッチデー」で観客は増えるのか?

私は圧倒的にレイソルの試合、さらに言えば日立台でJ1リーグを体感しているので、どうしてもそこをイメージしての言葉にはなってしまうが、日立台で行われるレイソルのホームゲームで心が躍るような「マッチデー」はほとんどない。
スポンサー企業の名前やホームタウンエリアの自治体名を冠した「マッチデー」がほとんどで、チームの状況やその日の対戦チームを意識するような印象に残る「マッチデー」は皆無だ。
これは恐らく他のJクラブについても同じような状況があるだろう。(川崎フロンターレは違うかな)もちろん、スポンサー企業やホームタウンエリアの名前を露出するというクラブの企業判断があってそうしたスタイルが定着してきたのだろうが、その日が「松戸市民デー」だからと言って「じゃあ行こうかな」と思う人がいるのかと言えば難しいところだろう。
多くのファン・サポーターはレイソルがどのチームと対戦するのか、それによって日立台に行くか行かないかのジャッジをしている。(今シーズンはそれに加えて日程も非常に大きな要素だが)サッカーリーグであるのだからそうした傾向を否定しようとは思わない。やっぱり私だってレッズやアントラーズが日立台に来るとなれば気持ちは高まるのだ。
しかしながら、こうした「競技性」に帰結するような対戦カードだけが、ホームゲームの「売り」になっている段階では、先に書いた「その空間で過ごす時間の価値」へと昇華させるのは難しい。
人はそこへ行く為に、何か理由が必要なのだ。
そしてその理由は、招く側が作ってしまえばいいことでもある。
大槻監督の「アウトレイジ最終章」カネを使わず知恵を使う
前々節まで浦和レッズの暫定監督を務めていた大槻さん(現ヘッドコーチ)は、そのベンチでの風貌から「組長」と称されて話題となっていた。そして彼が最後に指揮を執ることとなったホームの対コンサドーレ戦は「アウトレイジ最終章」と名付けられサポーターたちが煽り、それに選手達も乗っかった。
〜アウトレイジ最終章〜
16時 開演 みんな埼玉スタジアムに集まれ!!!#アウトレイジ最終章 #大槻監督
#浦和レッズ#urawareds https://t.co/DLSujsOIAw— 槙野智章 (@tonji5) April 20, 2018
この試合では今季からコンサドーレ指揮を執るペトロヴィッチ監督が、昨季浦和レッズを解任されて以来初めて埼玉スタジアム登場するなど、何かと話題にしやすい背景のある対戦カードでもあったが、恐らくこの試合を観戦したファン・サポーターの中には少なからず「アウトレイジ最終章」を体感しようと久しぶりにスタジアムへ行った人もいたはずだ。
こうした「イベント」的なものは、スポンサー企業やホームタウン自治体のマッチデーや、それこそ長崎、広島の「平和記念マッチ」のように、イベント資金をかけることなく行うことも十分に出来る。そして考え方を変えれば、こうした仕掛けが必ずしもクラブ側の専売特許でなくてはならない理由もない。
件の「アウトレイジ最終章」などはその典型だろう。
ただし、カネがかからないだけに知恵とセンスは多少必要かも知れないし、タイミングも重要だ。しかしリスクは少ない。と言うか目に見えるリスクはほとんどないと言ってもいい。
要はやるかやらないか。そこだけなのだ。
誰もが不特定多数の人々に対して言葉を投げかけることが出来るようになっている現代。
こうした取り組みについても、今後必ず切磋琢磨が起きてくるだろうと私は思っている。
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日頃あまり人の目に触れることの多くない下位カテゴリーの試合画像を中心に、私が試合会場などで撮影した画像をまとめたPHOTO GALLERYです。

私が撮影したJ.LEAGUEのフォトギャラリーです。基本的にJ2リーグ、J3リーグのみをまとめてあります。

首都圏、関東圏を中心にJリーグから都県リーグまでの試合日程を記したカレンダーを作成しました。是非とも現地観戦のご参考に!

2017年9月から、私が開設しているブログがあります。
ブログタイトルは「ラーテル46.net」
こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。