【なでしこジャパンアジアカップ連覇】解説矢野喬子さんに教えられた「なでしこの楽しみ方」

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人間は欲深い生き物だ。

それが例え得難い成果であったとしても、それを手に入れた瞬間からそんなことをすっかり忘れてさらなる成果を求めてしまう。

1点負けていれば同点にすることを願い、いざ同点になれば今度は1点のリードを願う。

そして運よくそのゲームに勝利でもすれば、今度は連勝を願うのだ。

なでしこジャパンはW杯優勝というこの上ない成果を日本サッカーにもたらせた。それであっても国内女子サッカーの環境に著しい「進化」は見られていない。そうであるからというわけでもないのだろうが、彼女たちには常に「世界王者」を目指す姿が求められる。

ある意味で男子の日本代表が求められている成果以上のものをなでしこジャパンは課せられている。仮に再びW杯で優勝するようなことがあったとしても、その先に彼女たちの輝かしい未来が待っているとは限らないのに。

勝利することでしか彼女たちの存在価値は認めてもらえないのだろうか。

なでしこジャパンが女子アジアカップ優勝

女子アジアカップに出場していたなでしこジャパンが、決勝で強豪オーストラリア女子代表(マチルダス)を破り、この大会の2連覇を決めた。

2015年にカナダで開催された女子W杯で準優勝して以来、長く「低迷」してきたなでしこにとって、この優勝は長かったトンネルを抜け出たかのような明るいニュースとして伝えられていくだろう。

彼女たちは、この大会でベスト4に進出した時点で2019年にフランスで開催される女子W杯への出場権も手にしたので、これからの1年間は常にW杯へ向けたなでしこ達の群像がメイントピックスとなっていくのだろう。

「マチルダス」との圧倒的な体格差

それにしても今大会でのなでしこジャパン優勝は実に奇跡的なものであった。

「マチルダス」との決勝戦をご覧になられた方は同じ思いを持ってくださると思うが、あれほど一方的な展開の試合で劣勢に置かれたチームが勝利する姿を見る機会などなかなかない。

圧倒的な体格差は、そのまま身体能力の差となって、最終的にサッカーの「スケール」へと反映される。

彼女たちが蹴るロングボールはなでしこ達の頭上を越え、彼女たちがダッシュすればなでしこ達は一歩ずつ後れを取ってしまう。

ひとつのボールを巡ってぶつかり合えば、小柄ななでしこ達は吹っ飛ばされ、なでしこ達が想像もしないような距離から強いシュートも飛んでくる。

その光景はまるで、ひとつのピッチに「二つの規格」が存在しているかのよう。

相手のミスでボールが転がり込んでも、苦し紛れにパスともクリアーとも取れるようなキックを繰り返してしまい、ことごとくマチルダスの網に再びかかってしまう。

そしてボールを繰り返し奪い続け、完全に主導権を握るマチルダスが繰り返しなでしこゴールへ向かって猛攻する。

試合も後半に入った頃だろうか、私はこう感じてしまっていた。

「不快なサッカーだ」

「無いものねだりをしても面白くない」

守勢にまわるなでしこがサンドバックのように打たれ続けながらもギリギリでノックダウンを回避している様子も、そんななでしこを相手に「雑で工夫の感じられない」パンチを繰り出し続けるマチルダスの様子にも、言い知れぬ不快感すら感じてしまっていた私に発想の転換を促してくれたのは、NHK BSで解説をされていた矢野喬子さんのこんな言葉だった。

「なでしこはこの試合展開を受け入れて出来ることを考えてもいいでしょうね」

正確にこう話されたかは覚えていないが、意味としてはこんな感じの言葉だった。確か後半も残り15分くらいの時間帯であっただろうか。

「無いものねだりをしても面白くないでしょ」私は矢野さんがこう言っている様に感じた。

「的外れな期待」をしなければ楽しめる

矢野さんのこの言葉を聞いて、私はこの試合に求めてはいけないものを求めてしまっていたのだと痛感させられた。

マチルダスに対しては身体能力だけに頼らない技巧的なサッカーを

なでしこに対してはマチルダスを凌駕するようなパスワークと攻撃力を

ここで戦う彼女たちが今この場では発揮できない能力を求めてしまっていたことで、それが叶わず「不快感」を覚えてしまっていたのだ。

そしてそんな「的外れな期待」をしなくてもいいのだと思えた瞬間からは、この試合を俄然楽しく見ることが出来るようになった。

サンドバックのようになりながらも、ダウン寸前のところで何とか耐え続けるなでしこの美学。

そんな「矢吹ジョー」のようななでしこに対して必死にパンチを繰り出し続けるマチルダスの狂騒。

起こっていることは私が「不快感」を覚えたものと何も変わらない。

しかし、それを「受け入れる」ことで「楽しさ」が生まれてきたのだ。

「なでしこのサッカーをどうやって楽しむか」

私はなでしこジャパンが仮に再びW杯で優勝しようとも、それが日本の女子サッカーの環境改善に繋がっていくとは思わない。

必要なのは「なでしこがいかに強いか」という事実の列記ではなく「なでしこのサッカーをどうやって楽しむか」その解説の場をもっと増やしていくことなのではないだろうか。

もちろん、松木、大竹コンビの感情表現に富んだ試合解説が悪いとは言わない。

しかし、この試合を「たまたま」NHK BSで観戦し、矢野喬子さんの解説を聞くことが出来て私はラッキーだった。

欲張って願うことは、時として「無いものねだり」になりがちだ。

今の状況を受け入れてこそ、その先にある楽しみが見えてくることもある。

なでしこジャパンが優勝したこと以上に、私はもっと大きなものをこの試合から教えられた気がする。

2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

ブログタイトルは「ラーテル46.net」

こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

まだ始めたばかりのブログではありますが、よろしければ、「ラーテル46.net」も併せてお楽しみください。

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