正直に言って、日本代表の監督がハリルホジッチだろうが西野朗だろうが、原博美さんがJFAの強化委員に復帰しようが、テグさんがやっぱり代表にコーチとして残っていようが、私にとってはそれら全てがたいして関心に値する話ではないし、そもそも日本代表がロシアでどう勝とうがどう負けようが、私のサッカーに対するスタンスは何一つ変わらないのであって、今回のハリル解任劇が多くのサッカーファンにもたらした「JFAと日本代表に対する幻滅」がむしろ、今後日本のサッカー界が更なる進化を遂げる上での「必要悪」であり、それ自体が一種の「通過儀礼」のようなものであろうとタカを括っていた。
しかしながら、ここ数日のTwitterタイムラインを見る限り、どうやら必ずしもボケっと眺めてはいられないと思わせられる「流れ」が生まれているようにも感じている。
「解任劇」が与えた衝撃
件の「解任劇」はサッカーを生業とする人たちにとっては大事件であったことは容易に予想できる。中でも出版に関わるビジネスに携わっている人たちにとっては、大損害も与えているだろう。
W杯イヤーであれば、当然ながらその界隈で活躍されている表現者の人々にとって、自らの存在をここぞとばかりにアピールする絶好のチャンスであることは間違いないだろうし、実際、五百蔵容さんのように、この解任劇の影響で4月25日発売予定だった書籍『ハリルホジッチ・プラン』を急遽『砕かれたハリルホジッチ・プラン』に軌道修正せざる得なくなったことなどは、Twitter上でも「ビッグワード」となって拡散されていった。
こうした事態に対面しても、萎えるどころか熱意がさらに高まっていくあたりに生き馬の目を抜く業界で名声を獲得されている人たちの逞しさを改めて実感するところであるが、そうした「逞しき表現者」が発するエネルギーの向かう先が、必ずしも私が想像していた展開に進んでばかりはいないのかも知れないと思わせられたのは、著書「サポーターをめぐる冒険」でサッカー本大賞を受賞された経歴を持たれている中村慎太郎さんのこんなツイートを目にしたことがきっかけであった。
https://twitter.com/_Shintaro_/status/984755293950111744
発狂してバズるツイート
中村慎太郎さんとはお会いしたことがないし、彼のサッカーに対する思いについてはその著作や様々な発信媒体、そしてこうしたSNSでの「つぶやき」などから推測するほかないが、日頃Jリーグの現場を通したサポーター目線での言葉が多いイメージがあったので、彼がこれほどまでに「日本代表ゴト」であるハリル解任劇に対して怒りの感情をあらわにするとは思ってもみなかった。
勿論、そう思うこと自体が私の思い込みでもあろうし、中村慎太郎さんがこれまでに発信してきた言葉の全てを把握しているわけでもないので、良くご存知の方々からすれば至極当然の反応であったのかも知れない。
しかし、このツイートの中にある「惨敗することを望みそう」という部分には特に、私が持っている日本代表への関心の低さとは異なる「破滅願望」を感じてしまった。
繰り返すが、私は日本代表がロシアでどう勝とうがどう負けようが、私自身のサッカーに対するスタンスは何一つ変わらないと思っているが、そんな私でも「日本代表よ負けてしまえ」と思ってはいない。(「日本代表よ勝ってくれ!」とも思っていないが)
ただ、中村慎太郎さんのように比較的幅広いサッカーファン層から支持されている表現者の方の「つぶやき」が、もの凄いスピード感で拡散していく様(いわゆる「バズってる」状態)を目の当たりにして、世間の思いと私自身の想像する「ハリル解任後の展開」との間に大きなギャップがあることを実感しそれに対して突然にして危機意識が芽生え始めた。
ハリルホジッチ解任でサッカークラスタが発狂している理由|中村慎太郎|note(ノート)https://t.co/CitzyUnuFn
— 中村 慎太郎 (@_Shintaro_) April 13, 2018
船首にどんな装飾が施されていようと
誤解を招いてしまうかも知れないので予め断っておくが、私はなにも中村慎太郎さんを批判しようとしている訳ではない。
そして、彼のツイートが拡散していく様に対しても批難する気持ちなど全くない。
彼は自身の素直な思いを上手に世間の波に乗せているのだ。
ただ、私が「こうなるだろう」「こうなって欲しい」と想像していた展開には必ずしも現実がフィックスしていないということを痛感したことで俄かに危機感を覚えることにはなった。
私にとって日本代表とは船首につけられた装飾彫像のようなものだ。
素材・造形・色彩、人によってはその船に備わっているどんな装備よりもこだわりを持っているパーツなのかも知れない。しかし私にとってはそれが女神の形をしていようが、騎士の形をしていようが、船首に施してさえあれば何だった構わない。
もっと言えば、それがもし船旅の途中で「すげ替えられた」としても元通りにせよとも壊れてしまえとは思わない。
私はこのハリル解任劇が、日本サッカー界における日本代表の価値が変わる機会だと捉えていた。そしてその変化によって、サッカー界全体の視線が日本代表以外の方向にも向くことを期待していたのだ。
日本サッカーは代表と心中してしまうのか
そんな私の思いが現実のものになるかどうかが、解任発表があってから10日も経っていない段階で顕著に現れるとは思ってもいないが、どうやら私が思い描く最悪のシナリオに進む可能性があることも「発狂する理由にバズる」光景の中に見えてしまったのだ。
「日本代表の失墜とともに衰退していくサッカー界」
私はサッカーが今よりももっと多くの人の支えとなり、人生に豊かさや潤いをもたらせる存在になって欲しいと願っている。
これからも日本社会で生きていく人間のひとりとして、サッカーという素晴らしいカルチャーが出来ること、その可能性を模索していきたい。そんな淡い願いが「ハリル解任」ごときと心中させられてしまってはたまらないのだ。
日本代表のサポーターとして長く海を越え続けてきた人の間でも「ロシアに行くのは止めた」と宣言するケースが発生しているそうだ。
ロシアに行かないのであれば、彼らのエネルギーはどこに向くのか。
もちろん、それが「ロシア後」の日本代表であってもいいし、JリーグやJFL、はたまた地域リーグや学生サッカーであってもいいはずだ。
ハリル解任を無理に前向きに捉える必要はないし、こうした「機会」に様々な主張が飛び交っている状況も決して悪いものだとも思ってはいない。
しかし出来ることならそれらが「日本のサッカー文化の進化」というベクトルに向いていて欲しい。破滅主義的主張は時として全ての思考を停止させてしまいかねない。これは私自身がW杯ブラジル大会での日本代表の惨敗後に陥った心境でもあるので、実感としても強く感じる部分なのだ。
中村慎太郎さんの「発狂する理由」を読んだ人々がその先で「日本のサッカー文化」そのものに愛想をつかしてしまうこともあり得るだろう、そんな彼らからの評価を完全に覆してしまうような魅力あるサッカー文化を私はこれからも探していきたいし、多くの方に伝える努力をしていきたい。
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