2018W杯ロシア大会 ハリル劇的解任は日本サッカー界に大転換期をもたらせる

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今から4年前のW杯ブラジル大会を目前にした時期に高校時代の仲間たちと数人で会って酒を飲む機会があった。

その日集まったメンバーには男も女もいて、私以外の人間でサッカーファンと言えるような人はいない。

それぞれが今の自分の生活がどんなものであるのか、笑ったり泣いたりしながら時を過ごす中、時節柄もあって彼らは私にこんなことを聞いてくる。

「今度のW杯で日本代表は勝てるの?」

彼らは普段サッカーを見ることもない、恐らくは本田、香川、長谷部くらいしか選手の名前だって知らなかっただろう。

それでももうすぐ4年に一度のサッカーの祭典が行われること、そして日本代表が「史上最強」と称されていることくらいは知っていた。

私は彼らのその問いかけにこう答える。

「必ずW杯の試合を見ろ 日本代表は素晴らしい試合をするはずだから」

 

サンドバッグになったジーコJAPAN

 

実はあの時点に至る前で、私の日本代表に対する熱い思いは一度冷めていた。

スター選手たちを揃え、英雄ジーコが率いる日本代表も当時は「最強」と言われていた。しかし、そんな「最強チーム」は私に絶望感しか与えてくれなかったのだ。

Jリーグのどのチームにも強い愛着を持つことが出来ていなかった私にとって、唯一アイデンテティを持ちえる存在は日本代表しかなかったのに、そんな日本代表がブラジルのスパーリング相手にすらなり得ないようなゲームを見せたとき、私は自分自身もボロボロにされているかのような錯覚に陥った。

しかし、ザッケローニが率いる日本代表がW杯前年に行われたコンフェデレーションカップでイタリア代表と壮絶な打ち合いを見せた時から、再び日本代表への誇り(自己に対しての誇り)を取り戻すことになる。

 

ザックJAPANで取り戻した誇り

 

本大会直前に行われたテストマッチでも、日本代表は「タダでは転ばぬ」これまでと明らかに違ったテンションのゲームを見せ続ける。当時は「失点が多すぎる」などの批評もあったように記憶しているが、それでも彼らがどんな相手に対しても怯むことなくゴールを奪う姿勢を見せ続け、そして実際に劇的なゴールを何度も見せてくれたことで、彼らに対して私は「自己の誇り」を保つ要素として依存していったように思う。

選手達は口々に自信に溢れた言葉を発し、そうした言葉のひとつひとつから日本代表が本当の意味で戦う集団になってきたのだと、私自身がそう信じたかったのかも知れない。

長く日陰の存在にあった日本のサッカー。

そんなサッカーの在り方は、まさに私自身の生き方そのものであったのかも知れない。

それが決して侘しい人生であったとは思っていないが、取り立てて自慢するようなこともないしがない人生であったことも事実だ。

Jリーグが誕生し、サッカーが世間の関心を一気に集める時代に激変した時、私は非常に戸惑ってもいた。

決して表舞台で脚光を浴びることのない黒子が、突然にして目を開けられないほどのスポットライトで照らされているかのような、嬉しいとか楽しいとか、そんな感情だけでは表現出来ないような心がかき乱されるような思いは確かにあった。

それから20年が経ち、W杯ブラジル大会に挑む日本代表を眺めていた時、私の齢も既に「不惑」を迎え、そうであったからこそ「自己の誇り」としてザッケローニの日本代表を見つめていたのかも知れない。

 

ブラジル大会に見た「誇り」は装飾物に過ぎなかった

 

しかし、その誇りは無残にも散り去った。

これほどまでに心を動かされない日本代表の戦いはあまりに大きな衝撃であった。

そして日本代表がいないW杯をテレビで観戦しながらこう思ったのだ。

「俺が見ていたのは日本代表を飾り立てた行き過ぎた装飾物だったんだ」

「日本代表がW杯で躍進するため、快挙を成し遂げるため、優勝するため」こうした大義名分によって、日本のサッカー世界はこの四半世紀、ずっと上を向いたままだったのではないか。

足元でどんなに美しい花が小さな蕾をつけていても、それには全く気がつかないどころか、上に向かってただ背伸びだけをし続けて、その足先は常にグラグラと不安定に揺れている。時によっては、足元の美しい花を踏みつけてしまうことすらある。

そしてそんな風にずっと「背伸び」をし続けている彼の顔や腕や身体には次々と華美な装飾が施されていく。画面には彼の上半身しか映っていないので、その姿は神々しくも見えていただろう。

W杯ブラジル大会が終わってから3年が経過した昨年。私は彼の姿が少しづつ見えるようになってきた。つま先立ちしてグラグラしている足先は少し血が滲み始めている。踏みつぶされた可哀そうな花がタンポポのように再び蕾をつけようとしている姿も見える。しかし彼はまだ視線を上にしか向けていない。華美な装飾が首の周りにまでコルセットのように巻かれてしまっていているので「向けていない」のではなく「向くことしか出来ない」のだ。

彼を見て失望するのではなく「ゆっくりと下を向いてつま先立ちを止めてごらん」

今の日本サッカー界が立っている場所は

こんな風に言える風潮が日本のサッカー世界に生まれる最初の分岐点なのかも知れない。

 

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