葛飾にいじゅくみらい公園は、三菱製紙の広大な工場跡地の再開発事業の一環として造られた葛飾区で最も広い区立公園だ。5年前に開園したこの新しい公園の中にある人工芝の「多目的広場」で東京都社会人リーグ1部の南葛SCは今季のリーグ戦の多くを行う。
周囲を背の高いネットで囲われたこの「広場」は地域のあらゆるサッカーコミュニティによって利用されているが、ジュニアユースなどの下部組織や女子チームも運営する南葛SCの総合的な定期練習場所にもなっている。
ピッチサイドのスペースはわずかで、南葛SCの試合を見るためにはネットの外側からの観戦になってしまうが、それでも迫力は充分で中には折りたたみチェアーを持参し、ビール片手に優雅な観戦をする人の姿もあった。
開幕戦で難敵TOKYO UNITED Plusを3-2で退け、初の東京都1部での戦いを上々な滑り出しでスタートさせた南葛SCは、「昇格組」の宿命(昨季の上位陣から順に対戦カードが組まれていく)この日も昨季3位の強豪、東京海上FCと対戦した。
カベッサ、レオジーニョ、デイビッドソンというブラジル人3人衆の存在感が際立つ南葛SCではあるが、この東京海上FC戦においてはこれまでに私が観戦した2つの試合とは一味違った姿を見せてくれた。
にいじゅくみらい 日曜日の昼下がり

初めて出会った時よりも数段「寄せてきた」ロベルト本郷
日曜日の昼下がり。太陽は出ているものの少し風が冷たいこの季節独特の陽気の中、試合が始る頃には「多目的広場」の周囲には多くの人たちが集まっている。
その中には南葛SCのサポーターもいれば、葛飾FMで毎週放送されている「頑張れ!南葛SC」のMC井上マーさんも、そしてこの日もやはりロベルト本郷が姿を現した。
この試合が終わった後にそこでサッカーをするのであろう大勢のサッカー少年たちも鈴なりになって見つめる中、南葛SCは実に手堅い「大人のサッカー」をして見せる。
逞しいマネキンのような東京海上FCの選手達

カベッサのマークをする東京海上FC主将早坂賢太選手
試合が始まると、東京海上FCの選手たちの体格の良さに目を奪われる。
青いユニフォームを身にまとった選手たちは総じて身長が高く胸板も厚い。まるでサッカーショップに飾ってある逞しいマネキンの様に、ユニフォーム姿が非常に美しい。
そんな東京海上FCの主将、早坂賢太選手が南葛SCの「核弾頭」カベッサの「担当者」だ。
そしてこの早坂賢太選手とカベッサの激しいつばぜり合いは実に見ごたえがあった。重量感たっぷりのカベッサをしても身長183㎝体重75㎏の早坂選手との空中戦はイーブンに見える。
攻撃面で圧倒的な強さをそこで示すことの出来ない南葛SCは、左はレオジーニョ、右は赤尾賢也選手がサイドからスピードとキレのあるドリブルで事態の打開を図ろうとする。
しかし、やや攻めあぐねたものの南葛SCは前半に2つのセットプレーからゴールを奪い、この難しい試合をやや有利な状態で折り返した。
絶えて耐えて耐えた南葛SC

南葛SC 清水修平選手 2つのゴールは彼のセットプレーから生まれた
後半の南葛SCはこの2点のリードを何としても勝利に結びつけようと、東京海上FCの攻撃を意図的に受け続けているように見えた。カベッサも早坂選手との空中戦を放棄してまでも懸命にフォアチェックしている。
前に後ろに走りまくっていたレオジーニョと赤尾賢也選手は後半途中でお役御免。フレッシュなより走れる選手が投入された。
前半に2つのゴールを演出する見事なプレスキックを見せた清水修平選手もボールホルダーにその意識のほとんどを向け、ピッチのあらゆる場所に顔を出している。
まさに耐えて耐えて耐え抜いた南葛SCは前半の2ゴールをそのまま勝利に結びつけ、初めて私に完封試合を見せてくれた。
私はこの試合に南葛SCの真骨頂を見たような気がする。
これまでに見た2つの試合がノーガードの殴り合いのような乱打戦であったことで、私はすっかり南葛のチームカラーを誤解してしまっていたのかも知れない。
カベッサのような東京都1部では抜群の迫力を持つ選手が存在する裏で、ハードワーク出来る選手がこんなにいる。そしてそれを実現出来るだけの選手層の厚さ。
こんな風に私のような南葛SCと出会ったばかりの者であっても、チームとその選手たちについてついつい語りたくなってしまう。
彼らは既にそこに人が集まるために必要な「口実」を十分に提供してくれているのだ。
南葛SCが「口実」になっていく

初先発となった赤尾賢也選手は新加入選手
東京都社会人リーグ1部。スタンドもない人工芝のピッチで行われているこのカテゴリーのサッカーにも、その舞台に自分の全てを賭けて戦う男たちの姿がある。彼らのほとんどは勿論プロサッカー選手ではないし、この先もプロにはなれない選手、ならない選手ばかりだと言ってもいい。それでもそんな彼らを「口実」にしながら、そこに集まる人々の世界は少しづつ形成されていっているのだろう。
関東リーグの開幕戦が行われた小石川運動場とはまた違い、そこに集まる人たちの楽し気な声が響き渡る、そんな「サッカーのある週末」を満喫出来る環境。そうした世界が南葛SCのホームタウンである葛飾にはやはり存在した。
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