地獄の関東リーグがついに開幕!小石川での新東京ダービーで何が起きたか?

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キックオフの約1時間前、選手たちがウォーミングアップでピッチ上に現れた段階になると既にそこには大勢の「見物人」が集まってきていた。

都会のど真ん中にある小石川運動場。

これからそこで始まる試合が、首都圏で暮らすコミュサカファンにとって見逃すことの出来ない試合であること、それを証拠づけるように試合開始が近づくにつれ「見物人」の人数はどんどん増えていく。

試合前ウォーミングアップをする東京23FCの選手たち

地獄の関東リーグがいよいよ開幕した

「地獄の関東リーグ」がいよいよこの日開幕する。しかもここで見ることが出来るのはともに東京23区を本拠とするチーム同士の「ダービー」なのだ。

実はこの対戦カードが決定し、その試合会場が発表された時から多くのコミュサカファンの間では不満の声も聞かれていた。

TOKYO UNITED FCの主催試合である開幕ゲーム、対東京23FC戦。

「新東京ダービー」が小石川で!?

立錐の余地もない小石川運動場

 

「新東京ダービー」とも称される両者の戦いが、スタンドのない小石川運動場で開催されること、それはある意味で「想定内」と捉えられながらも、今季の関東リーグを盛り上げていくであろう両チームの真剣勝負の会場としてそこが果たして相応しい会場であるのか、リーグの盛り上がりに水を差すような決定ではないのか、そんな思いを持ったファンが多かったのは小石川が原則的に鳴り物はおろか声出し応援をも禁じられた会場であったことも多分に影響している。

しかもそれに追い打ちをかけるように、試合の数日前になって主催するTOKYO UNITEDが発表した注意事項「会場内での飲食禁止」という「お達し」に対してもかなり大きな批難の声があがった。

結果的にここでいう「飲食」にはいわゆる給水が含まれないという説明が追ってクラブ側から出されたことで騒ぎは沈静化したものの、特に日頃チャントを歌い声出し応援がスタンダードとなっている東京23FCのファン・サポーターの側からは自分たちの「声」を封じられただけでなく「試合観戦中に水すらも飲ませない酷い環境を強いるTOKYO UNITED」に対して、明らかにダービーに対する闘争心がヒートアップしていったように見えた。

 

人で埋め尽くされた小石川

 

 

試合が開始される頃には、あの決して広くない小石川運動場のピッチの周りには立錐の余地もないほどの人たちで埋め尽くされ、中に入れずフェンス越しの観戦となった人も出た。その数は推定でおよそ500人超え。もしこの試合が5000人収容レベルの会場で行われていれば、この人数でものどかな試合風景になっていたかも知れないが、四方をビルに囲まれた小石川であればその光景は明らかに異様であったはずだ。

時折目と鼻の先にある東京ドームで行わていた巨人×阪神戦の歓声がわずかに響いて聞こえてくるほどに、そこにはまさに固唾をのんでサッカーの試合に集中する妙な静寂があった。

もちろん選手たちがそうした空気をより高めていったのは間違いない。

この日の為に標準を合わせ最善の準備をしてきたであろう彼らは、それと同時に今自分が置かれているサッカー選手としての環境には決して満足をしてはいない。チームが順調にステップを上がって行ったとしてもJリーガーになれるのは最短でも再来年というカテゴリー。

キャリアの晩年をそこで過ごすことを決めた選手は別としても、ほとんどの選手たちはまだ若く、将来に大きな可能性も野望もあって然るべきなのだ。

 

「おらぁ見たかっボケ!」

 

先制点はそこにいた誰もが驚くほどの早さで生まれた。

この試合だけでなく、これまでもそのクラブの姿勢、在り方などの理解が深まらず、すっかり「ヒール」としてのキャラクターが定着しつつあるTOKYO UNITED。そんなTOKYO UNITEDの底知れぬ力を見せつけるかのように、東京23サポーターが固まるエリアの目の前で、開始1分足らず。背番号13番、能登正人選手が目の覚めるようなミドルシュートをその左脚で見事に決めて見せた。

彼はゴールするとラインの際まで埋め尽くした「見物人」たちに対してこう吠える。

「おらぁ見たかっボケ!」

 

それは最前列でカメラを構えた私に向かって投げられた言葉であったかのような錯覚を覚えるほどに生々しく、その瞬間はその言葉に対して反射的に不快な感情も湧き出てはきたが、結果としては彼のこの「煽り」があった時からそこにいた人々は「見物人」から「観客」に変わったようにも思う。

観客も試合を作り上げる一部なのだ。そんなありきたりなセリフがゴールを決めた選手によって現実のものとして「見物人」たちの心へ降りていく。

そんな決定的瞬間に立ち会えたような思いだった。

 

選手の感情と見る側の感情との「ぶつかり合い」

試合はその後、東京23FCが相手の守備の連係ミスをついて早々に振り出しに戻し、そのまま1-1のドローで終了した。

両チームともに見せ場を十分に作り、ベンチの采配も含め、見ごたえのある試合だった。

このレベルのサッカーの真剣勝負をピッチから数メートルしか離れていない場所からずっと見ていられることに対しての「背徳感」のような奇妙な感情も覚えながら、試合が終わったあともそこにいた全ての人々、選手も観客も運営側も、何か大仕事を終えたような心地よい充実感が渦巻く中、私は「見物人」を「観客」に変えた張本人に少し話を聞いた。

TOKYO UNITED FC 能登正人選手 ジェフ千葉にも一時在籍し、ドイツやアジア諸国でのプレー経験も豊富。今季インドネシアのPersiba Balikpapanから加入してきた。

「能登選手、あなたがゴールした後に見ている人たちを煽ったことで、そこにいた人たちはこの試合を何段階も高い次元で楽しむことが出来たと思いますよ」

こんな私の言葉に対して能登選手は少し気恥しそうにしながらも

「これだけ大勢の方が見に来てくれたんですから、どうせなら楽しんでもらいたいと思ってました。」

確かに彼の「煽り」は決して美しい言葉ではなかった。それにあの「煽り」からこんな優等生コメントをされても素直に受け取れない人がいても理解は出来るし、東京23サポーターの側からすればあの言葉によって、これ以上の屈辱はなしといった心情にさせられたかも知れない。

ただ、彼の「おらぁ見たかっボケ!」が聞こえる位置で試合を見ていた人と、そうでない人との間には、間違いなくこの「新東京ダービー」から受けた感情は違ったものになったはずだ。見方を変えれば「聞こえた人たち」の方が試合の中により深く入り込んだ心理状態で観戦が出来たのではないか。

こうして選手たちの感情と見る側の感情とが複雑に「ぶつかり」あうことで、ただのサッカー場が特別な空間へと昇華していく。そんな現象を実感し目撃できたことは私にとって大収穫だった。

今後関東サッカーリーグを現場で観戦しようと思われている方には、是非ともTOKYO UNITEDが小石川運動場で主催するホームゲームをお勧めしたい。なかなか経験しがたいサッカーとの遭遇が出来るかも知れない。

 

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