柏レイソル人種差別行為問題に一応の決着。「温存された柏熱地帯」を全力で守ろう

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これほどまでに日立台へ向かう足が重かったことはない。

3月10日に柏レイソルのホーム「三協フロンテア柏スタジアム」で行われたJ1リーグ「柏レイソル対セレッソ大阪戦」で起きた「キム・ジンヒョン騒動」については、当事者クラブであるレイソルとセレッソだけでなく、Jリーグを愛するサッカーファン全体に人種差別行為がどんな理由があっても許すまじき問題であることを改めて考えさせるきっかけとなったはずだ。

私自身、追い詰められた気持ちになった20日間

実際にそこでそうした差別行為があったにせよ、なかったにせよ。もしそういった行為が蔓延するような現状があれば、Jリーグはすぐにその存在意義をなくしてしまう。

サポーターがどんなに熱い気持ちをもってチームを応援しようとしても、チームが戦う舞台を失ってしまってはその気持ちをどこに向けていけばいいのか。

それがゴール裏への立ち入り禁止、無観客試合、といった限定的な裁定であったとしても、同じことを繰り返してしまえば、更に重い処分が下されるのは分かりきったことであるし、だからこそ人種差別行為はスタジアムから完全に排除していかなくてはならない問題なのだ。

私はひとりの柏レイソルサポーターとして、またあの日あの場所にいた人間として、あの騒動に自分自身も間接的に加担してしまったのではないかという複雑な気持ちに追い詰められていた。

柏レイソルの「事態報告」

3月29日、柏レイソルの瀧川龍一郎社長が、今回の「キム・ジンヒョン騒動」について「3月10日セレッソ大阪戦での事態につきまして」というタイトルで調査状況の経過報告を公式サイト上で公開した。

 3月10日(土)に開催されました、2018明治安田生命J1リーグ第3節・セレッソ大阪戦におきまして、キム ジンヒョン選手から「柏サポーターによる差別行為があった」という申告を受け、試合が後半途中で一時中断する事態が発生致しました。

 弊社では、試合終了直後から事態把握のための調査に着手致しました。残念ながらキム ジンヒョン選手本人からの聞き取りは、本人の強い固辞で叶わなかったものの、映像確認及び聞き取り調査をでき得る限り行い、その結果をJリーグにご報告させていただきました。また弊社調査と並行する形でJリーグ側でも、詳細な調査が行われました。
 この結果、Jリーグ側からの最終判断として、「差別行為の可能性もあったが、断定するには至らない」という結果が伝えられました。

 一方、今回のこの調査過程の中で、柏レイソルサポーターによる相手選手に対する侮蔑行為が確認され、これについては、厳重注意の処分を受けております。弊社ではこの侮蔑行為を行ったとされる観客の特定にまではまだ至っておらず、引き続き調査を進めて参ります。

 弊社は、このような事態が発生したこと、また処分を受けたことを大変に重く受け止めております。柏レイソル試合運営管理規定にも定めているとおり、差別的、侮蔑的な発言または行為を禁止しております。ファン・サポーターの皆様、スタジアムにご来場の皆様には、Jリーグ統一禁止事項や柏レイソル試合運営管理規定の順守、また観戦ルールやマナーをお守りいただきますよう、改めてお願い申し上げます。

 また、このような事案を繰り返さぬよう、スタジアムにおける警備の増強や、ゴール裏1階通路への駆け込み禁止の再徹底など観戦ルールの検討・整備、またスタジアムビジョンや公式メディアを使っての注意喚起など啓発活動を強化して参ります。ご来場の皆様が安全かつ安心して観戦・応援がいただけるスタジアムにできるよう、全力で取り組んで参ります。今後とも皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社日立柏レイソル
代表取締役社長 瀧川 龍一郎

柏レイソル公式サイトより引用

3月10日から約20日間の間にクラブとJリーグ側とがどういった調査を具体的に行ったのかについては触れられていないが、Jリーグの最終判断として「差別行為の可能性もあったが、断定するには至らない」という結論を得たことでクラブに課せられるのは侮辱行為に対する「厳重注意処分」にとどまり、今後柏レイソルがこの事案について何らかの処分、裁定を更に下される可能性はなくなった訳だが、それでもこの文言から読みとれるのは「差別行為の事実はあったが決定的証拠をつかむことが出来なかった」というニュアンスであるようにも思える。

つまり、柏レイソルのゴール裏は表面的にあの「キム・ジンヒョン騒動」が起きた時と変わらない環境を温存する機会を「与えられた」と理解した方がいいだろう。

幸せな生活を続けたければそれを全力で守る必要がある

韓国人選手を応援するゲーフラを掲げるレイソルサポーター(右の女性のシャツにはハングルで”いつも応援してくれてありがとうございます”というキム・ボギョン選手のメッセージが書かれていた。 お二人はブログに掲載させて欲しい旨を伝えると快く了解して下さった。

重い足取りで辿り着いた日立台には、これまで私が幾度も救われてきたあの幸せな空間が変わらず存在した。私が魅了された「サッカーが愛されている世界」が、実は「人種差別行為の蔓延する空間」であったのかも知れないと失望したあの日。それから20日の時が過ぎてそれが一切なくなったと私は思っていない。

「サッカーと差別の相性の良さ」これは、私が以前から常々思ってきたことだ。

それが今回の騒動で突然にして自らの面前に立ちふさがり、私自身のレイソルへの、サッカーへの思いの強さを試してきたのかも知れない。

繰り返して書くが、柏レイソルのゴール裏「柏熱地帯」はあの日あの時と何も変わらないまま温存された環境を「与えられた」だけに過ぎない。今後も少し気を許せばこうした騒動が起きてしまう素地が我々にはあると考えておいた方が賢明だ。

しかしそう思えたことで、この数週間私を追い詰めてきた奇妙な罪悪感のようなものから少し開放されたような気もする。全ての事象が「0か100か」で決着がつけられるわけではないし、限りなく黒に近いグレーであっても、今後のありよう次第では白に近い色へと変化させることは不可能でもない。

いつものゴール裏1階ではなく敢えて2階を選んだこの夜。レイソルの選手たちがこれまでと同じように懸命にボールを奪い合う姿を見たことで、そこにいることに対する幸せな感情が再び蘇ってきた。そしてそれを必死に応援するサポーターの中に自分自身がいることに対してもよりそれを俯瞰で捉えることが出来るようになった気もする。

サポーターにとって、応援するチームが勝利することが何ものにも代えがたい喜びであることは当然だ。しかし最も重要なことは応援するチームがそこに存在し続けることである。だからこそ、それを阻むような行為、思想については皆が出来る限りの力で撥ねつけていく必要がある。これは何もJリーグのサポーターだけに限ったことではない。自分たちが幸せに生きていきたいのだとすれば、同時にそれを全力で守る必要もあるのだ。

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2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

ブログタイトルは「ラーテル46.net」

こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

まだ始めたばかりのブログではありますが、よろしければ、「ラーテル46.net」も併せてお楽しみください。

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