FC KOREA 東京都1部リーグから再起を目指すその存在意義

コミュサカ
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十条駅を出て南西の方向へ5分ほど歩き、住宅街の入り組んだ細い路地を抜けるとそこに東京朝鮮中高級学校があらわれる。

東京都で「高等学校」に相当する教育機関として存在する朝鮮学校は唯一ここだけで、最盛期には3000人もの生徒が学んでいたそうだ。

今年も全国から強豪20チームが集まって東京朝高主催のイギョラ杯が行われた(画像は鹿児島実業対昌平戦)

 

東京に暮らす在日コリアンにとって親しみ深く、また想い出もいっぱいつまっているであろうこの学校にかつて日本最強と言われた高校サッカー部が存在し、帝京高校をはじめ日本中のサッカー強豪校が正月の高校選手権を前に「腕だめし」するために十条の朝高グランドに訪れていたことを知る方も多いだろう。「朝高詣で」と言われたこの交流が、日本の高校サッカー界にとって大きな成果をもたらせてきたことは、流通経済大柏の本田監督にして今だに選手への指示として「パンデ!(逆サイド!)」「タリラ!(走れ!)」のように「朝鮮語」を使うことがあるというエピソードにも良くあらわれている。

 

FC KOREA 前身はあの最強クラブ「在日朝鮮蹴球団」

 

そんな在日コリアンと日本人の間で高校サッカーにおける交流が行われ続けているこのグランドが、今季東京都社会人サッカーリーグ1部を戦うFC KOREAの練習場だ。

かつて在日コリアン社会にはその誇りの全てともいえるサッカーチームがあった。

「在日朝鮮蹴球団」(チュックダン)

選び抜かれた在日コリアンがプレーしたこのチームは、1960年代~80年代にかけて「幻の日本一」「日本最強のサッカークラブ」と称されていた。

当時の日本を代表する実業団チームを相手にしてもほとんど負けることのなかったこのチームの戦績は「勝率9割5分」とも言われており、選手たちは実質的なプロ選手で日本中を遠征行脚し各地の在日コリアン社会から絶大なる歓迎を受けていた。

当時、チュックダンの選手だった人の話を聞くと

「私たちは週に6日、それも午前午後と練習していた。日曜日に試合があれば休みはなかったよ。だから1日の半分は仕事をしている実業団のチームに負けるわけがなかった」

多少のリップサービスはあろうかと思うが、読売クラブやヤンマーといった当時の強豪チームの側にも「チュックダンは強かった」と証言する人も多くその実力については折り紙付きだ。

FC KOREAは、そんな「幻の最強チーム」在日朝鮮蹴球団を前身としている。

 

FC KOREA ここ数年の趨勢

2018シーズン東京都1部開幕戦でのFC KOREAスターティングメンバー

 

しかしながら、現在のFC KOREAの姿には「幻の最強チーム」と称された時代の強烈なイメージはない。

それも当然であろう、日本社会全体が少子高齢化の傾向を顕著にしていくなか、それは日本で生活している在日コリアンにしても状況は変わらない。そして何よりも日本サッカーはこの四半世紀の間にJリーグが発足し大きく進歩してきた。こうした世情の中、相対的に在日コリアンによるサッカーの立ち位置が大きく様変わりしてきたのだ。

実際にFC KOREAは数年前までは関東サッカーリーグにおいても屈指の強豪で、JFL昇格も決して夢ではない実力を誇っていた。しかしながら後参のJ志向チームが次々と誕生していく中で、2016シーズンには関東1部から関東2部へ、そして昨シーズンはついに関東リーグの舞台から引きずり降ろされてしまったのだ。

そうした苦しい戦いの中で、FC KOREAは2016シーズン以降、在日コリアン以外の選手にも門戸を開くという大転換を決め、今シーズンも7人の日本人選手がプレーしている。

 

「降格」去っていった選手、戻ってきた選手、加入した選手

 

私は、チームのマネージャーであるソン・チャノさんにお願いし東京都1部リーグ開幕を控えたFC KOREAの練習を見学させてもらった。

小雨が降るナイター練習、選手たちの表情は想像以上に明るい。

リーグ開幕直前であったことで、その夜の練習は比較的軽めのメニューになっていたはずだが、それでも選手たちの力強いシュートに驚かされた。

彼らは自分たちの練習に突然現れた私のような人間に対しても、非常に礼儀正しく接してくれる。ちなみにマネージャーのソン・チャノさんのことを彼らは「チャノヒョンニム(チャノ兄さん)」と呼ぶ。

笑い声も聞かれるそんな練習風景の中で、メンバーにハッパをかけるような声をさかんに出していたのはチェ・カンヨン選手。今季関東2部のエリースFC東京から復帰してきた選手である。

FC KOREA 背番号8 チェ・カンヨン選手

カンヨン選手のようにFC KOREAへ戻ってきてくれた選手もいれば、昨季関東2部を戦った中心メンバーでチームを去ってしまった選手もいる。

私が初めてFC KOREAの試合を観戦したのは、昨年暮れに行われた関東リーグ入替戦だった。この試合に敗れたことでFC KOREAの東京都リーグ降格が決定してしまったのだが、そんな苦しい戦いの中でスーパーセーブを連発していたGKのイ・チェガン選手はJ3の藤枝MYFCへ移籍し、パワープレーのターゲットマンとして後半の頭から前線で身体を張り続けたCBのホン・ユング選手は四国リーグのFC徳島を新天地に選んだ。そして厳しい試合展開の中、最後まで冷静な判断でチームのタクトを振っていた10番カン・ホ選手はその試合を最後に現役を退いた。

奇しくも私の記憶に強い印象を残した選手たちが揃ってFC KOREAからいなくなってしまったわけだが、彼らと入れ替わるようにしてチェ・カンヨン選手が復帰し、昨年の朝鮮大学校サッカー部主将ムン・スヒョン、同じく朝大サッカー部からシン・ヨンジュといった技巧派プレーヤーも新たに加入した。

また日本人選手に目を向けても、タイの2部リーグでのプレー経験もあり技術の高い山口俊輔選手が加入するなど、FC KOREAのチーム編成はこの数か月の間で大きく様変わりした。

こうした激しい選手の出入りは「降格」という憂き目に会ったチームの宿命であるのかも知れないが、それはFC KOREAとて何も変わらないのだ。

 

開幕戦はドロー 厳しい戦いの幕開け

試合終了後、スタンドに駆けつけ応援して下さった方々に挨拶をするFC KOREAの選手達

 

駒沢第二球技場で行われたアローレ八王子との開幕戦は、今季東京1部に昇格してきた「格下」相手の試合とは思えないほど厳しい試合内容だった。

それでも後半にかけて徐々にリズムを掴んでいったFC KOREAは1点のビハインドを何とか追いつくことは出来た。しかしそのまま決着はつかずドロー。

選手達もこの結果に対しては「なんとか負けずに済んだ」そんな風に思っているかも知れない。

試合後、奇遇にも私と誕生日が7日しか違わないチームマネージャーのソン・チャノさんと少し話をする時間がもてた。

チャノさんは開幕戦の引き分けという結果に悔しそうな表情を隠さなかったが、それでもこんな風に話してくれた。

「我々は降格してきたチームかも知れないけれど、決して自分たちがこのリーグで格上だなんて思ってもいない。それは選手達もきっと同じだと思う。」

こんな謙虚な言葉を私に向けるチャノさんは、数日前のナイター練習の終わりの場面で選手達に

「今年ここでプレーする選手は全員が高い意識をもっているのを知っているし、全員が戦ってくれるチームだと俺は信じている。だから俺からは敢えてこうしろああしろということは言わないよ。」

 

FC KOREAの存在意義

 

そんな「ヒョンニム(兄さん)」の言葉を神妙な表情で聞く選手達も、練習が終わればどこにでもいる普通の青年たちだ。私のような人間に対してまだどう接していいものか掴みきれていない風も感じなくはないが、私自身は彼らを今後も追っていきたいし、FC KOREAにはそうするだけの強い魅力を感じるし、在日コリアン社会だけでなく日本社会全体にとって、このクラブが持つ存在意義の大きさを見逃すことは出来ない。

そしてその存在意義をもっとも強く感じてもらう為には、FC KOREAが東京都リーグを戦っていてはいけない。私は「昇格至上主義者」ではないが、それでもFC KOREAはもっと陽の当たる場所にいなくてはいけないし、そこを目指していって欲しいと思っている。

かつて「チュックダン」が在日コリアン社会のヒーローであったのであれば、FC KOREAはより多くの人たちにとってのヒーローになれる可能性も秘めている。

ケルトアイリッシュ文化をその存在の根底に持つセルティックが世界中のアイルランド系移民の心の支えとなっているのであれば、朝鮮民族文化から生まれ出たFC KOREAは日本で唯一「セルティック」を目指すことの出来るクラブと言えるかも知れない。

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