柏ゴール裏からキム・ジンヒョンに向けた「人種差別行為」が無かったとしても

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3月10日に行われたJ1リーグ第3節「柏レイソル対セレッソ大阪戦」は、両者譲らぬ激戦の末1-1のドローに終わったが、多くのサッカーファンがその試合結果とは別の理由でこのゲームに対して「やりきれない思い」を強く感じているのではないだろうか。

日立台柏ゴール裏 後半34分

https://twitter.com/GoalJP_Official/status/972427028862451713

 

それは1-1の同点で迎えた試合の終盤、後半34分頃に起こった。

柏サポーターでびっしり埋まったゴール裏「柏熱地帯」を背にプレーしていたセレッソ大阪GKキム・ジンヒョンが、ゴールキックするためにボールを自陣ゴールの方向へ拾いに行った際、ゴール裏の柏サポーターを指差し何やら言葉を発したのだ。その後、キム・ジンヒョンはプレーを再開することを止め、レフリーに自らが何をされたのかゼスチャーを交えて激しく訴えた。

試合は数分間中断、その間レフリーは双方のベンチへ走り事情を説明、柏レイソルの大谷秀和、クリスティアーノがゴール裏サポーターに対し状況の確認と興奮状態にあるサポーターの制止をするに至った。

私はこの時、騒動が起きたゴール裏中央から約20m程度離れた場所にいたが、キム・ジンヒョンが両手の指を目の端に持っていくゼスチャーをしているのがはっきり見えたので、その瞬間に何らかの差別的行為を柏サポーターがしたのではないかと直ぐに予測できた。

 

キム・ジンヒョンは差別行為を受けたのか?

 

東洋人を侮蔑するゼスチャーとして、最近話題になることの多いこの行為。

指で両目の端を外に引っ張り「切れ長で吊り上がった目」を示すこのゼスチャーは、東洋人以外の人種が東洋人に向けてするものであると思っていたが、「東洋人である日本人」が同じく東洋人の韓国人に対して行ったとしても、それが侮蔑の意味を持っていないという理屈にはならないだろう。

この一件は、当然ながらマッチコミッショナーを通じてJリーグ側に報告され、現時点でもその真相を調査している最中(2018年3月14日現在)であるので、確信的なことを書くのは早計であろうが、私の直感としてはゴール裏の柏サポーターが「東洋人侮蔑ゼスチャー」をした可能性は高いと思っているし、場合によっては「朝鮮人差別」につながるような言葉がキム・ジンヒョンに向けて言い放たれた可能性も高いと思っている。

そうであったからこそ、あの場面でキム・ジンヒョンがあれほどまでに激高し、試合を止めてまでレフリーに訴えたはずだし、これが「キム・ジンヒョンの挑発にまんまと嵌められた」とするのであれば余計に、あってはならない行為、言葉があの時あのゴール裏に存在したことを証明していたことを裏付けているとも言えるのではないだろうか。

 

関連記事はこちらから『「サッカーと差別は相性が良い」だからこそ必要な反差別の意識』

 

「犯人捜し」への執着

しかし私がここで言いたいのは、キム・ジンヒョンに対してゴール裏サポーターからの差別行為が「あったのか無かったのか」といった話ではない。

既にこの件については「柏サポーターが相手選手に対して差別行為を行った可能性がある」というトピックスで、多くのサッカーファン、あるいは世間の注目を浴びる事態に進展しているのは事実であり、実際にそこに差別行為があろうとなかろうとサッカー界が「Jリーグと人種差別」について一定の見解を示すべきであると私は思っているし、それによってこの件に関する二次的な争い、分断をさけるべくリードしていって欲しいとも感じている。

こうした騒動が発生すると、その議論に中で必ず生まれてくるのが「犯人探し」への執着だ。

あの時、あの場所で、誰が差別行為を行ったのか、その張本人にこそ責任を取らせよ。といった論調もよく見かける。

今回の件に関して言えば、本来立入が制限されているゴール裏の前通路に、相手GKがゴールキックをする度なだれ込んでブーイングを浴びせている一部のサポーターに対して、その行為自体を批難する声も多く見ることが出来る。

そこに存在する論調に共通するのは「一部の悪質なサポーターによる暴走」として件の問題点を挙げている点だ。

 

憎悪に満ちたゴール裏

 

しかし私はこの件が「一部の悪質なサポーターによる暴走」としてそれをスタジアムから排除すれば全て解決するといった考え方にはどうしても賛同することが出来ない。

仮に差別行為がなかったとしても、あの一件が起きている最中のゴール裏の様子からは凄まじい憎悪に満ちたムードを感じたのは事実だし、それが酷く醜いサポーターの姿として多くの人の目には映っているであろうことは容易に想像がつく。チームを応援するサポーターが、対戦相手をあれほどまでに「憎むべき敵(かたき)」としなくてはいけない理由はどこにあるのだろうか。

そしてもっと恐ろしいのは、あの「凄まじい憎悪に満ちた」「酷く醜いサポーターの姿」は、決してゴール裏の中心部分にいたサポーターだけに限って見られた現象ではなかったし、実際に私の周辺にいた柏サポーターからもキム・ジンヒョンに対して常軌を逸するような「憎しみのこもったヤジ」が聞こえてきたのも事実なのだ。

あの瞬間、柏サポーターで埋めつくされた日立台ゴール裏「柏熱地帯」には、間違いなくキム・ジンヒョンに対する「憎悪」の空気が存在したし、仮にそれを噴出させるきっかけを作った人間がいたのだとしても、そうなるだけの下地が元から存在していたのではないかと私は感じている。

 

差別は全てのものを破壊する

 

Jリーグがあらゆる差別に対して断固とした姿勢を取ることを「建前上」であっても明確にしているのは、それがJリーグの存続を危うくすることに繋がっていくからに他ならない。

差別は憎悪を生み、憎悪は争いを生む。そして争いは全てのものを破壊する。

今回の一件については、Jリーグが最終的にどういった結論を以て事態を収束させるのか、場合によっては「証拠不十分につき不起訴」となる可能性も多分にあるだろう。

しかし、例え柏レイソルに「無観客試合」「勝点剥奪」といったペナルティが課されられたとしても、それ自体に問題解決をする力があるわけではない。

さらに言えば、私はあの瞬間あの場所で感じた「群衆による憎悪」は、必ず繰り返されるものだとも思っている。

 

あなたは一度たりとも差別的行為をしたことはありませんか?

何故、Jリーグのゴール裏に「差別」や「憎悪」が存在してはいけないのか。

そうした問いに対して、全てのサッカーファンが明快な答えを出来るようになって行かない限りは、今後も「もぐら叩き」「イタチごっこ」が続いていくだろうし、Jリーグがあらゆる人種、あらゆる国籍の選手たちのプレーする場であることで、そこが「人種差別の温床」になっていく可能性もはらむものと私は思っている。

こう言うと多くの方々は「何を大袈裟に」と思われるかも知れないが、そういう方には是非ご自身に対してこう問いただして欲しい。

「あなたはこれまでの人生で一度たりとも差別的行為をしたことはありませんか?」

人間はそもそも他人を差別するように出来ている。

そして、差別する気持ちから憎悪の感情が生まれでる時に快感を覚えることを知っている。

しかし、長い歴史の中でそうしたものが何も生み出さないどころか、非常に危険なものであると学んできたのだ。

柏サポーターとキム・ジンヒョンとの間に起きたこの騒動が、サッカーファンにとって「差別」と「憎悪」を考える機会としていかなくてはならないし、私自身も柏レイソルサポーターのひとりとして、Jリーグやクラブから下される裁定に従う以上に「サッカーと差別」「差別と憎悪」について、自分の中に揺らがぬ信念をもった上で改めてレイソルを応援する立場を得られるものを思ってこの件に対して真剣に向き合うつもりだ。

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2017年9月から、私が開設しているブログがあります。

ブログタイトルは「ラーテル46.net」

こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

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