どんなスポーツであっても、そこには必ず「勝者」と「敗者」が存在する。
一定のルールに則って互いの力を競い合い決着をつける。これこそがスポーツを楽しむ上での大切な要素であることは間違いない。
エキシビジョンマッチよりも公式戦が多くの人々にとって遥かに魅力あるものとして受け取られているのは当然であると思うし、ひたすら戦いに勝利することを目指しているアスリート達の姿こそが「非日常」でもあって、淡々とした日常を送る私たちに対し熱狂をもたらせ、歓喜と悲哀に満ちた世界を「体感」するチャンスを与えてくれる。
しかし、そう思う一方でスポーツを彩る要素がその「勝利」だけにしか存在しないかのような幻想を私たちは抱いてしまいがちだ。
「勝利至上主義」「Jリーグ至上主義」

「勝利至上主義」
勝利することでしか、その存在意義を示すことが出来ないというようなスポーツ観は、無意識のうちに「衝動」として私たちを刺激する。
日本サッカー界においては、この「勝利至上主義」をより具体的な言葉として表現することが出来る。
「Jリーグ至上主義」「日本代表至上主義」
日本最高峰のサッカーリーグであるJリーグ、そして最も優れた日本人選手たちで構成された最強チーム、日本代表。
日本サッカーのピラミッドの頂点に君臨するJリーグや日本代表にこそ、最も大きな価値があり、それを下支えする圧倒的多数のクラブや選手達はその頂点を目指すことでしかその存在の意義を示すことは出来ないとするような思考に敢えて疑問を呈する人の方がもしかしたら少ないのかも知れない。
Jを目指すクラブ、目指さないクラブ
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現在Jリーグには54のクラブが存在し、そこを目指すクラブも日本中に存在する。
例えば「アマチュア最高峰」とされるJFLに今季参戦するチームの中で、将来のJリーグ入りを明確な目標として掲げているチームは16チーム中10チーム。その10チームの中でも「Jリーグ100年構想クラブ」(実質的なJリーグ準加盟クラブ)として認定をされているチームは4チーム。(ヴァンラーレ八戸、FC今治、奈良クラブ、東京武蔵野シティFC)
この4チームはJFLでの成績とJ3クラブライセンスなどの一定要件を満たすことによって、来季のJ3リーグへの昇格も叶うポジションにあると言える。
当然ながらクラブはJ3昇格を大義としてあらゆる政治的、経済的、人的努力をするわけだが、チームで戦う選手達もその実力がJ3昇格に十分見合ったものであることを証明するために、今季のJFLを死に物狂いで戦うだろう。
地域も巻き込む形でベクトルの方向を「Jリーグ昇格」に集中させ、明確な判断基準の指標をそこにおき突き進んでいく姿は、客観的に見ても非常に理解しやすい構図でもあり、だからこそ大目標として共有されやすい性質を持っているとも言える。
「Jリーグ昇格」はそのクラブの一瞬に姿に過ぎない
しかし、こうした「Jリーグ入りを目指す」姿はそのクラブにとって、ほんの一瞬の姿を切り取ったものに過ぎない。
来年、あるいは数年以内に大目標である「Jリーグ昇格」が果たせなければ、クラブ自体の存続の道は絶たれてしまうかも知れないし、仮に見事「Jリーグ昇格」を果たしたとしても、その立場は決して安泰ではなく、かえって苦難の日々が待ち受けているかも知れないのだ。
これは何も想像上の例えではなく、これまでにどれだけのクラブが「Jリーグ入り」を断念し解散してきたのか、「Jリーグ入り」を果たしながらもいつ倒産してもおかしくないクラブがどれだけ存在しているか、そうした実情を見ても半ば明らかなことでもあるのだ。
つまり、多くの人々にとって最も理解しやすいベクトルの方向「Jリーグ昇格」が、実はそれ自体にそれほどの価値がないことが見えてくる。
Honda FC 「J3に勝るクラブの存在感」
【ポスター完成!】
2018年シーズンのポスターが完成しました!
公式HPではPDFデータがダウンロード頂けます。( https://t.co/DQWvADAi0K )#HondaFC #JFL #soccer #hamamatsu #ポスター #静岡 #アマチュアサッカー #日本フットボールリーグ #ThinkDifferent #Honda pic.twitter.com/NbNpkUQWvR— Honda FC【公式】 (@Honda_FC) February 26, 2018
長年JFLを主戦場とし「Jへの門番」とも呼ばれているHonda FCは、今から20年以上前のJリーグ創世期こそ、本格的にJリーグ参入を目指していたとされているが、現在ははっきりとJリーグ入りを目標としないことを明言している。それでありながら常にJFLの強豪として名を馳せ、多くの選手たちが「個人昇格」を果たしJリーガーも誕生させている。
ホームタウン浜松市にしっかりと根を下ろしているクラブの姿を見れば、彼らがJクラブであろうがなかろうが、そこに大きな意味はないようにも見えてくる。
実際に、浜松市都田に自前で専用スタジアムを保有し、U-18以下全てのアンダーカテゴリーを育成機関として運営をしているのだから、その存在感はJ3クラブと比較しても負けていないどころか、むしろ勝っていると言ってもいい。
コバルトーレ女川「人口6千人の街で存続する意味」
<コバルトーレ女川>「歴史つくった」浜松でJFL初陣 サポーター結集、町民の思い選手に | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS https://t.co/ASt6k8kYAR
— 蒲鉾本舗高政 (@takamasa_net) March 12, 2018
昨年11月の地域CLを勝ち抜き、東北サッカーリーグからJFLに初昇格を果たしたコバルトーレ女川は、震災による津波の被害によって壊滅状態にあった港町をホームタウンとするクラブだ。震災前1万人いた街の人口は6千人台にまで減少し、将来のJリーグ入りを目標としながらも、官民一体となってクラブが長く存続していける可能性を模索しているようにも見える。
人口の半数がスタジアムに集まってもJ3クラブライセンスの定める入場者基準に達するか達しないかという規模の街にあるクラブであれば、短期間で無理矢理Jリーグに昇格したところで、失うものの方が大きいと認識もされているのであろう。
「Jリーグを目指さない」ことが持つ存在意義
彼らのようにあからさまに「Jリーグ昇格」を目指さないクラブには、その存在意義はないのだろうか。
私には、むしろこうしたクラブの方にこそ、日本サッカー界を大きく発展させる力があるように思えてしまう。そこに関わる人々や、選手達が「Jリーグを目指さないクラブ」で戦うことで、リーグに対するモチベーションを持ちにくいなどという推測はまさに見当はずれだと言えるだろう。
「Jリーグ昇格」を掲げていないクラブが、どんな将来像、未来絵を描いているのか、それは決して単純ではないし、その立場に立って見なければ理解できないことも多いのかも知れない。
しかし「Jリーグ昇格」という「ありきたり」な目標以外にも、サッカークラブの存在がその地域に、関わる人々に、日本のサッカー界にとって十分な意義をもたらせる可能性がある事を私たちはしっかりと認識しておく必要があるだろう。
そして、そうしたサッカークラブの存在意義を正当に認めることが出来るようにならなければ、日本サッカー界の更なる発展は見込めないとも私は思っている。
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