ここのところ週末になる度に暖かい日がやってきて、多くのサッカーファンにとって大いに歓迎すべき天候のサイクルが続いているが、この日の駒沢公園も週末をのんびりここで過ごそうとする人達が贅沢な時間の流れを堪能していた。そして、この日の駒沢公園では「元日本代表選手」のプレーを間近で眺めることが出来る。そんなサッカーファンにとって最高に贅沢な思いを可能にさせる試合も行われていた。
東京カップ準決勝「東京ユナイテッド対日立ビルシステム」
天皇杯東京都代表へと続く社会人トーナメント「東京カップ」
これまでにこのブログの中でその観戦記を数回綴ってきたが、大会もいよいよ準決勝まで進み、今季の「地獄の関東リーグ」参戦チームの中で唯一ベスト4まで勝ち残った東京ユナイテッドFCが、関東リーグ2部の実業団チーム、日立ビルシステムと対戦した。

元日本代表岩政大樹が先発出場

岩政大樹はCBの一角として先発出場
東京ユナイテッドと言えば、慶應大OBによる名門「慶應BRB」と東大OBとが「ユナイテッド」して誕生したクラブで、みずほ銀行、フクダ電子といったメガバンク、大企業からの支援を受け、クラブ創設から非常に短い期間で2017シーズンに関東サッカーリーグ1部に昇格し「2020年Jリーグ昇格」を掲げる、東京都心部を本拠とする初のJリーグクラブとなる可能性が最も高いと目されているチームでもある。
その東京ユナイテッドは2017シーズン、元日本代表の岩政大樹を選手として獲得。学芸大卒の頭脳派Jリーガーとしても認知されていた岩政の東京ユナイテッド加入は、サッカーファンの間では驚きを以て受け取られた。
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私はこの東京カップ準々決勝「東京ユナイテッド対南葛SC戦」が、東京ユナイテッドの試合を生で観戦する初めての機会になったのだが、その試合においては控えメンバーだった岩政大樹に最後まで出番は回ってこなかった。
しかし、ベンチから戦況を見つめる岩政の眼光の鋭さは、彼が鹿島アントラーズや日本代表で見せていたものと変わらず、「コミュサカ」の舞台で躍動する岩政大樹の姿を見て見たい。その思いをより一層強いものとさせていた。
そしてついに、東京ユナイテッドのCBとしてプレーする岩政大樹をこの日、駒沢補助Gでじっくり見ることが叶った。
対する日立ビルシステムは実業団チーム

東京ユナイテッドが東京カップ決勝進出をかけて戦う相手、日立ビルシステムは長く関東リーグに所属し、実業団クラブらしい安定感を感じさせるチーム。
準々決勝のFC KOREA戦では終盤にかけて若干苦戦しながらも、それでも主将の藤波大登選手(背番号7)の圧倒的な突破力と身体の強さを軸に、盤石な戦いぶりを見せていたチーム。
そんな日立ビルシステムが、東京ユナイテッドの「フィジカルサッカー」を前にどの程度の戦いを見せてくれるのか、岩政大樹の壁を越えていくことが出来るのか、そんな興味も抱きながらこのゲームを観戦していた。
結果はユナイテッドの完勝
結果的には5-0という大差で東京ユナイテッドが日立ビルシステムの挑戦を一蹴した形だ。
この日の東京ユナイテッドは、自分たちが得点を欲しい時間帯に着実にゴールを重ねることが出来ていた。その為、チーム全体が非常に余裕をもって気持ちよさそうにプレーしている姿が印象深く、岩政大樹もそれほど多くの見どころを見せないまま後半の終わりに交代し、その役割はきっちりと果たしたと言えるだろう。
もともと身体能力の高い選手や、Jリーグでの実績も豊富な選手(岩政大樹以外にも何人も元Jリーガーが所属している)で構成されているチームなので、試合展開が思い通りに進めることで一層その隙も見せなくなっていくのだろうが、それでも私には岩政大樹が最終ラインに入っていることによる「安心感」を東京ユナイテッドの選手全員が感じながらプレーしている様にも見えていた。
「反則級」岩政大樹に対しての「手ごたえ」これこそがコミュサカの「真理」

東京ユナイテッド13番 能登正人選手 ジェフ千葉にも所属した経歴もあり、東南アジア圏でのプレー経験も豊富な選手。
最盛期に比べ、少し細身になったかな。と思わせる岩政大樹ではあるが、それでもその判断の速さ、プレースピードは際立っている。コーチングの声も的確で、まるで監督がピッチの中でプレーしているかのような錯覚を覚える瞬間もあった。
相手選手との激しい競り合いではバランスを崩しかけているシーンもあったが、それでも最低限の仕事はやってのける。まさにこのカテゴリーを戦うチームの選手としては岩政大樹は「反則級」である。
敗れた日立ビルシステムも、スコアこそ大差をつけられてしまったが、それでも最後の最後までゴールに向かっていく姿勢を見せ続けていた。実業団チームということで「応援団」も東京ユナイテッドより明らかに多く、90分間たった一人で応援チャントを叫び続けていた青年の情熱が私の心を打つ。
試合が終わって、日立ビルシステムのある選手に声をかけてみると
「負けてしまったけれど、岩政選手に対しても多少の手ごたえはあった」
彼はそんなコメントを私にしてくれた。
そう、コミュサカの現場ではこの価値観が存在し得るのだ。
目指す方向性、資金力、選手獲得事情、サッカーチームを形成する上でのあらゆる要素が著しく異なっているチーム同士が「一瞬の奇跡」として戦っているのが「コミュサカ」の魅力なのかも知れない。
だから日立ビルシステムの選手が話した「負けたが手ごたえはあった」という言葉にこそ「真理」が存在する。彼らは決して東京ユナイテッドに、岩政大樹に負けるつもりでこの試合を戦ったわけではない。しかし、彼らは東京ユナイテッドに勝つためだけに企業人サッカー選手としての道を歩んでいるわけでもないのだ。
東京ユナイテッドを一瞬でも慌てさせ、競り合いで岩政大樹を吹っ飛ばす。そんな一瞬一瞬のシーンにこそ、彼らの輝きを見つけるべきだし、それが必ずしも試合の勝敗と一致しないという事実を「サッカーの真理」として私たちはしっかりと分かっておくべきだ。
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