自民党のスポーツ立国調査会が2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え「部活動と地域スポーツクラブとの一体化」を目指すとする提言を文科省に提出した。
これとは別にスポーツ庁が中高部活動の練習時間に上限を設けるガイドラインをまとめているともされており、自民党はスポーツ庁の方針から更に一歩踏み込んだ提言をしたことになる。
ひっ迫する中学校部活動
中学の部活なくなる? 地域クラブとの一体化、自民提言 https://t.co/bhz4GDIzeO
— 朝日新聞スポーツ (@asahi_sports) March 6, 2018
少子化の影響で、中学校部活動の現場にはかなり大きくひずみが生まれてきているようだ、団体スポーツの部活動であっても学校単独ではチームを形成することが出来ず、複数の学校による合同チームで大会に出場するという状況は今や珍しい風景ではない。
加えて教員の労働環境も悪くなっていく一方で、部活動にもそのエネルギーを注ぎ込めという言葉が現実的に「ブラック労働」を生み出すことにも繋がっていってしまっている。
このまま今の状態を続けて行ってもそこに関わる誰の得にもならない。
そんなひっ迫した状況が存在しているのだ。
私はこうした話題が東京五輪を契機に議論されることに異を唱えるつもりはないし、むしろどちらかと言えば歓迎する気持ちの方が大きい。
「学校」という施設は、そもそも公共性が求められる場所であるべきだし、社会と学校の間に存在する「見えない壁」が取り払われることに対しても、本来の型を取り戻す動きだという認識だ。
しかし、懸念が全くないかといえばそうではない。
「部活動」と「地域スポーツクラブ」それぞれの「強み・弱み」

「部活動」と「地域スポーツクラブ」にはそれぞれに「強み・弱み」があるし、両者が一体化した時にそうした「強み・弱み」が解消され、強みは更に強調され、弱みは出来る限り軽減されるようなスタイルであるべきであろう。
部活動にとってその圧倒的な強みは「練習場の保有」である。東京のど真ん中にあるような中学校であっても、必ずグランドや体育館、プールを施設として保有している。部活動は、そうした施設を優先的に使用することで、その活動を確かなものとしている。
一方で地域スポーツクラブにとっての最大の弱みこそが「練習場の確保」であると言える。
11人揃えることの出来ないサッカー部が学校のグランドを優先している横で、2チーム分の人数が所属している地域スポーツクラブが練習場確保に躍起になっている。こんな光景は都市部においては特に顕著であろう。
ではこの両者を「一体化」して学校のグランドを練習場にすればいいと思ってしまいがちだが、その前に少し立ち止まってみるべきだ。
地域スポーツクラブの性質は一様ではない

地域スポーツクラブと一言で表現すると「一体化」が単純な話として聞こえてしまうかも知れないが、地域スポーツクラブというものは中学校部活動とは違い多様な性質をもった存在でもある。
「地域の子どもたちを集めてスポーツをする」という部分については共通していても、その内情はまさに千差万別。中には「悪徳」とまでは言えないものの、そこに関わる「大人」の生活を維持させる為の道具として「子どもたち」を利用しているようなスポーツクラブも少なくはない。
こう書くと「そんな悪意をもったスポーツクラブなどないだろう」と思われる方もいるだろうが、私の価値観を当てはめれば「子どもたちを選別し強いものだけを対象とする」スポーツクラブなど、少なくとも中学年代にある子どもたちのとっては「悪」以外の何者でもないと思っているし、そうした性質をもったスポーツクラブの在り方を突き詰めていけば、大抵は「大人の事情」によってあらゆる判断がされていると言っていいとも思っている。
もちろん、中学校の部活動においてもそうした性質が全くないわけではないが、地域スポーツクラブと部活動との最も大きな違いとして、その責任者が学校関係者、つまり教員であるという点を挙げることが出来る。つまり彼らには確固たる「生活基盤」があるのだ。
「ブラック部活」という言葉を目にすることも多くなっている現在、だからと言って中学校部活動が「大人の事情」を判断基準とするような道に進まないと言い切れるわけではないが、しかしそこで問題になる肉体的、精神的な「しごき」のようなものは、その指導者の性質と学校と言う密閉空間があることで生まれ出ている側面は無視できないし、中学校部活でなければそうした「しごき」が存在しないとは言えない。
それ故「ブラック部活」の問題と「部活・地域スポーツクラブ一体化」は切り分けて考えた方がいいだろう。
大人の事情「勝利至上主義」でグランドを後にする子ども

私が「部活動」「地域スポーツクラブ」の一体化で最も危惧するのは、それによってスポーツを出来る子どもたちが「選別」されていってしまうことだ。
「選別」が生み出す結果は「脱落」であるとも思っている。
まだ身体も十分に成長しきっていない中学年代で、そこが「プロ選手養成」を目的としたJリーグのアカデミーでもないのに、グランドから退場せざる得ない状況に子どもたちを追いやること。
そんな状況が日本のあらゆる中学校のグランドで発生することになれば、サッカー界はもちろん、あらゆるスポーツ界にとってマイナスでしかない。
「大人の事情」がなんであるのか、それを簡単に言ってしまえば「勝利至上主義」であることは明らかだ。「強い選手」「強いチーム」を作ること、これこそが現在の日本におけるスポーツを取り巻く環境を「納得」させるのに最も効果がある方法である。それ自体非常に嘆かわしいことだとも思うが、それが実情なのだ。
地域コミュニティの核ともなる中学校のグランドが、一部の子どもたちにだけ有益で、一部の大人だけに利益をもたらすような場であってはならない。
「部活動と地域スポーツクラブとの一体化」
これがどんな未来を生み出すことになっていくのか、慎重に見守っていく必要があるだろう。
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