今年もJリーグが開幕し「蹴春」ムードも一気に広がってきている。
新しいシーズンは多くのサッカーファンの間にとっていわば正月のようなもの。Twitterのタイムライン上ではサッカーシーズンの始まりを待ちわびていた人たちによる「あけましておめでとうございます!」というメッセージも目にする。
東京カップ開催中
そんな「おめでたい」サッカーの春ではあるが、そんな中のある一角ではその戦いも大詰めとなっている大会がある。
東京カップ。
東京で活動する関東サッカーリーグ以下のカテゴリーのチームによるこのトーナメント大会は、年末に決勝戦がおこなれる天皇杯の東京都社会人予選を兼ねた大会だ。
【TOP 2018東京都社会人サッカーチャンピオンシップ 東京カップ2次戦 1回戦】
3/4(日)15:00KO
vs 東京ユナイテッド(関東1部)
@大井第二球技場皆様の熱いご声援の程、宜しくお願い申し上げます。#南葛SC pic.twitter.com/qboaZq3mHG
— 南葛SC official (@nankatsu_staff) February 26, 2018
天皇杯の本大会が「ジャイアントキリング」を売りにしているくらいなので、当然ながらそこへと道がつながっているこの大会でも、下位カテゴリーのチームが上位カテゴリーのチームを破る番狂わせ「ジャイアントキリング」も度々発生し、そこに関わる人々にとってはリーグ戦での緊張感とは全く違ったハラハラ、ドキドキが感じられる大会となっているようだ。
この大会に優勝すると、並行して行われている大学チーム代表や、関東大学リーグ上位チーム、強豪ユースクラブ、JFL所属クラブ(東京武蔵野シティFC)といった強豪チームとの間で行われる「東京都サッカートーナメント(兼天皇杯東京都代表決定戦)」への出場権を獲得することが出来るため、どんなカテゴリーに属していているチームであっても「天皇杯出場」という明確な目標に向かっていけるこの大会は、シーズンが本格始動する前の時期に開催されているにもかかわらず「ひとつの夢」を叶える場として、その存在意義は想像以上に大きいようだ。
注目対決「東京ユナイテッドFC対南葛SC」
そんな東京カップで、非常に興味深い対戦が実現した。
今季「地獄の関東リーグ」を戦い、その中でも「主演級」の役割を担うと目されている、東京ユナイテッドFCと、彼らより二つ下のカテゴリー、東京都1部リーグ所属の南葛SCの対戦だ。
鍛え上げられた肉体を誇示する東京ユナイテッド

手前ベンチ、立って戦況を見つめる岩政大樹選手。その眼光は鋭い。
東京ユナイテッドFCは、慶應BRB(慶大のOBクラブ)と東大ア式蹴球部のOBが「ユナイト」したクラブで、大手企業が「スペシャルサポーター」となり、クラブ創設より非常に短い期間で、現在の関東サッカーリーグまで一気にカテゴリーを上げてきたチーム。
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2020年のJリーグ入りを目標として掲げ、昨シーズンは元日本代表の岩政大樹選手が加入したことでも話題になった。
アンダーアーマーがサプライヤーとなり、選手達はあの「ピチッ」としたユニフォームを身にまとい、その鍛え上げられた肉体を誇示するかのような威圧感を発している。
南葛SC「キャプテン翼の世界がそこに」

一方の南葛SCは、あの人気サッカー漫画「キャプテン翼」の作者高橋陽一さんが後援会長をつとめ、ユニフォームから横断幕まで「翼くんワールド」が前面に押し出されているチームで(ロベルト本郷までスタンドに現れるらしい)、実質7部相当の東京都1部のチームでありながらも、先日J2愛媛FCから安田晃大選手が加入したことが驚きをもって伝えられた。
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もちろん南葛SCも将来のJリーグ昇格を目指すチームではあるが、先に書いた東京ユナイテッドFCが常に「10歩先」を見据え、今自分たちがいるカテゴリーにどことなく居心地の悪さのようなものを感じているように見えるのに対して、南葛SCは「先も今も」楽しんでいるように見える。
チームスタッフやそこに関わる人たちから感じられるムードが、そうした印象を私に与えているのかも知れないが、カテゴリーの違いだけではなく、チームによってあらゆるスタンスの違いが存在するのも、「コミュサカ」の魅力を大きく引き出している要因だといえよう。
「フィジカル」対「ブラジル」

この両チームはそのサッカーのスタイルにも大きな違いがあった。
東京ユナイテッドFCがその鍛え上げられた身体能力をフル活用した「ガチガチのフィジカルサッカー」を徹底しているのに対し、南葛SCは3人のブラジル人選手が持つ圧倒的な爆発力を武器にするチーム。
試合は「ノーガードの打ち合い」のような展開となり、南葛SCのストライカー、カベッサ選手(元Jリーガー)の素晴らしい2ゴールが見られたと思えば、激しいフィジカルコンタクトで南葛はGKを含む2人の選手が負傷退場(1人は救急車で病院送り)。
終盤になるにつれ「ガチガチフィジカルサッカー」の前に、ブラジル人選手達の身体の中で響いていたサンバのリズムも完全に意気消沈してしまったのか、立て続けに東京ユナイテッドFCにゴールを奪われ、一時は1-3と大きくリードしていた試合を5-3と完膚なきまでにひっくり返されてしまった。
「コミュサカ」が社会とどう関わっていくのかにも注目

ロベルト本郷登場(ヒゲなしバージョン)
東京ユナイテッドFC岩政大樹選手、南葛SC安田晃大選手という「注目選手」がベンチからピッチへと登場する場面こそなかったが、それでもこの試合は私にとって見どころに溢れる試合で、この2つのチームが今季、それぞれのリーグにおいてどんな戦いを見せてくれるのか、非常に大きな期待を抱かせてくれる一戦になった。
私の関心の対象はチームや選手達だけではない。
この2つのチームが今季の長い戦いの中で、どれだけ多くの人々を「巻き込んでいく」のか。「巻き込むことが出来る」のか。あるいは「巻き込むことをしない」のか。
日本サッカー界を支える「コミュサカ」の現場で、人々の生活の中にそれがどのように関わり、影響を与えていくのか、そうした「現象」に対しても注意深く見守っていきたい。
ちなみに件の「ジャイアントキリング」だが、この試合の前に行われた対戦で、昨年のこの大会で優勝しその先の東京都サッカートーナメントでも第3位に食い込んだ関東リーグ1部、東京23FCが東京都1部のCERVEZAに2-1で敗れ去るという波乱が起きた。返す返すも刺激に溢れる大井第二球技場であった。
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