フットボール映画「セルティックソウル」を観て感じた「スポーツのある社会」

コラム
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『母親はケルト人、父親はユダヤ人、何とも苦労の絶えない血筋だぜ』

これはドキュメンタリー映画「セルティックソウル」に出演したハリウッド俳優ジェイ・バルチェルが映画の中で、祖先の暮らした街アイルランド、ウェストポートにそのルーツを探る旅で訪れた際に、自らの思いを茶化すかのように放った言葉だ。

 

映画「セルティックソウル」

 

ヨコハマ・フットボール映画祭2018において上映されたこの映画は、アイルランド系カナダ人でハリウッド俳優の青年が、仲間オーエン・キャラハンとふたりで車を走らせ、未だ見ぬ「故郷」セルティックを目指して旅をするロードムーヴィー風ドキュメンタリー映画だ。

旅をする彼らは、世界中に存在するセルティックファンのひとりでありながら、グラスゴーのセルティック・パークに行くのは初めて。そして、ジェイ・バルチェルにとっては、遠い昔自らの先祖が後にしたアイルランドという故郷を巡る旅でもあった。

スコットランド・プレミアシップにおいて、圧倒的な存在感を誇るセルティック。

中村俊輔が長く在籍し、大活躍を見せたことで日本のサッカーファンにも名の知れたこのクラブの始まりは、グラスゴーのカトリック教会修道士フォルブリッドが設立した貧しい子どもたちに対する慈善事業であった。

 

グラスゴーダービーの対立軸は「政治的対立」

1880年代、「ロンドン」の圧政によって起きた大飢饉を逃れ世界中に新たな生活を見いだそうとしたアイルランド系移民は、グラスゴーにも大量に流入していた。彼らの多くは貧困に喘ぎ、そうした背景のもとカトリック教会による慈善事業が設立されたのは必然であったのかも知れない。

子どもたちには食べ物や教育が与えられ、将来的に社会を支えていくことになる彼らには「フットボール」がその「教材」として使われるようになっていく。

グラスゴーのライバルチーム、レンジャーズとの間で行われる「グラスゴーダービー(オールドファーム)」は世界的にも最も有名なダービーマッチのひとつに数えられており、その対立軸が「カトリック(セルティック)対プロテスタント(レンジャーズ)」という構図で語られることも多いが、こうしたセルティックのクラブ発祥の源泉を辿ることで、このダービーが単に「宗教的対立」の意味だけではなく「アイルランド系移民対英国連合」という非常に政治的な背景をもったダービーであることに改めて気がつかされた。

 

日本のサッカー界との違い

『先祖たちは土地や金を奪われ、住み慣れた故郷を捨ててまで、新しい土地での生活を目指したことは、人間のおこないとして当然のことだ』

こう言ってふたりの旅人は、この美しくのどかなアイルランドという故郷を捨てた先祖に対して、最大限の賛美をする。

「就職差別だけじゃない、あらゆる困難が俺たちの生活には常にあったんだ」セルティックのベテランサポーターが入り浸るパブでそう話す老サポーターのひとりにとって、セルティックこそが唯一の生き甲斐なのかも知れない。辛く困難だったアイルランド系移民の生活を唯一明るく照らし続けてきたもの、それこそがあの緑と白の横縞ジャージであったのだろう。

正直、こういうエピソードを知れば知るほど、日本におけるサッカーの世界との違いを痛感させられる。

「やはりJリーグのダービーなんて偽物だ」そんなことが言いたいのではなく、「スポーツ」の持つ可能性の領域が、明らかに日本のそれを大きく上回っているように思えてしまうのだ。

ふたりの旅人がアイルランドで出会った「ゲーリックフットボール」のスタジアムでのシーンにそれが集約されているように見えた。

「ゲーリックフットボール」が成立するアイルランド

ゲーリックフットボールとはアイルランド発祥のスポーツで、恐らく日本ではほとんどの人が全く知らない球技と言えるだろう。(私もこの映画を見て初めてこの球技を知った)

国のトップリーグに参加するチームの選手たちは全員がアマチュア(別に本業を持つという意味)であるだけでなく、ホームタウンのある自治体に在住・在学・在勤していなくてはならないというルールが存在する、筋金入りのアマチュアスポーツでありながら、そのスタジアムはげーリックフットボール専用で、中には8万人収容のものまであるのだ。(映画の中ではそれが満員になっているシーンが出てくる)

日本社会において、こんなスポーツの世界が存在出来る可能性はあるのだろうか。

「カネ」を生まないものはスポーツに非ず。

「世界一」になれないものはスポーツ選手に非ず。

本当にこうした哲学がスポーツを楽しめる社会を作りだすこと出来るのだろうか。

困難に陥ったアイルランド系移民の絶望的な生活がなければ、真のフットボール文化は醸成されないといった考え方もあるのだろうが、ゲーリックフットボールがアイルランド人たちの生活に欠かせない存在となり得ている理由については、私たちにも参考にすべき点はあるかも知れない。「社会とスポーツ」の在り方、その根本の部分について、私たちはしっかりと向き合うことをしてこなかったのかも知れないからだ。

スポーツの持つ可能性や価値、そうしたものに対して更に視野を広げて考えていかなくてはいけない。

 

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