香川と岡崎「0円欧州移籍組」の2人はどうやって育成クラブにお金を残したか

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香川真司や岡崎慎司が「0円移籍」で欧州へ渡ったことは良く知られている。

所属クラブとの間の契約が満了すると、その選手を獲得するのに”移籍金”(=契約解除金)は発生しない。海外でのプレーを目標とするJリーガーの多くが複数年契約を拒むのはこの仕組みがあるからだ。

獲得クラブ側から見れば同じような評価をされている選手が2人いれば、余計な獲得費用(移籍金)が発生しない選手の獲得を目指すのは至って自然なことであり、将来有望なJリーガー側とすれば、なるべく「余計な獲得費用」が発生しない選手としてショーケースに並びたいと考えるのも当然といえば当然だろう。

しかし、そんな選手であっても自らが育成されたクラブにはカネを残せる制度が2つある。

 

スター選手の移籍で育成現場に払われるカネ

育成補助金(TC)

https://twitter.com/95samurai/status/951367059597770752

ひとつは育成補助金(トレーニング・コンペンセーション 以下TC)だ。23歳以下の選手が移籍をする際に移籍元クラブ(育成したクラブ)から移籍先クラブに一定の基準額の支払いを要求が出来る仕組みで、香川真司が2010年に21歳でドルトムントへ移籍した際にはセレッソ大阪に対しておよそ6000万円程度のTCが支払われたと言われている。

 

連帯貢献金

https://twitter.com/itumohimades/status/950243256092127233

そしてもうひとつが連帯貢献金(ソリダリティ・コントリビューション )。こちらはプロ選手が移籍金(契約解除金)の発生する国際移籍をした際に、移籍先クラブから発生した移籍金の5%にあたる金額を当該選手が満12歳~満23歳の期間で選手登録していたクラブに分配した上で支払われる仕組みとなっている。

岡崎慎司がドイツのマインツからイングランドのレスターに移籍した際には、発生した移籍金13億2000万円(1100万ユーロ)の5%にあたる6600万円が、清水エスパルス、滝川第二高、宝塚FCに支払われた。

件の移籍については清水エスパルスにとって不本意なもの(岡崎の最初の移籍先シュツットガルトとは、契約期間の解釈について係争にまで発展した)であり、数千万程度の連帯貢献金が支払われたくらいでは納得のいく話ではなかっただろうが、滝川第二高(1980万)宝塚FC(1320万)にとってこの連帯貢献金による収入は、クラブの継続運営はもちろん、より質の高い育成現場を実現する上で決して小さな金額とは言えない。

 

2つの制度を戦略的に活用する欧州サッカー

ヨーロッパでは、この2つの制度を意識的、かつ戦略的に活用しているからこそ、各クラブの意識の中に自前の育成組織、アカデミーで優秀な選手を育てることがいかに重要であるかが強く認識されている。ユース世代、ジュニアユース世代の選手による他クラブ育成組織への移籍ケースが多いのもそのせいだ。(日本では育成年代にある選手が移籍すると、移籍後6カ月間試合に出場できないルールがあり、こうした移籍のケースがほとんど見られない)

育成は未来への投資であり、必ずその対価が得られる確証のないものと捉えられがちだが、TCや連帯貢献金などの制度を戦略的に活用し、クラブにおける育成の投資サイクルが確立されるようにしていく為には、ひとつのクラブだけで取り組むよりもJリーグ全体、強いては高体連の育成現場も含めた大局的な視点で、その環境づくりに取り組んでいく必要があると言えるだろう。

この2つの制度はともにFIFAに定められている制度であり、世界のサッカー市場は既にそれを常識として運営されている。

現状、J2クラブなどでは新卒の加入選手がいたとしても、彼の育成組織である大学や高校へTCを1円も払えない状況が存在するという。これは決して出し渋りをしているのではなく、支払う資金面での体力がクラブにないのだ。

トップリーグに次ぐカテゴリーであるJ2においても、こうした経済状況にある日本サッカー界の将来を語る時に「W杯」「日本代表」「海外組」の動向のみが一般的な注目の対象となっている現状は、非常に危ういものとして見えてくる。

頂点にある一握りの選手やチームを下支えしているのは、70万人とも言われる育成年代にある選手たちであり、彼らの置かれている育成現場である。

「育成現場の充実=日本サッカー界の底力」

こうした視点で日本サッカー界を見てみると、また新たな発見があるはずだ。

 

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