かつてフットボールスタジアムは男たちのものであった。
これを如実に表現したこんな話がイタリアにある。
「イタリア女性はカルチョが嫌い」
週末ごとにカルチョ(サッカー)に夢中になってしまう男たちに嫌気がさした女性たちの心情をあらわしたこの言葉からも「サッカースタジアム=男性的な空間」とするイメージがヨーロッパでも長く定着してきたことが理解できる。
「物騒なサッカースタジアム」
https://twitter.com/SPORT_JAPAN/status/934314965195821056
今から20年以上前、若き日の私は毎年のように欧州へサッカー観戦旅行をしていた。
日本では丁度その頃にJリーグがスタート。
Jリーグブームに沸き、チアホーンと女性の歓声が響き渡るスタジアムがJリーグのひとつのイメージでもあった。
そんな頃、欧州のサッカースタジアムで私が観た光景は、そうしたJリーグの光景とは同じサッカースタジアムとは思えないようなものであった。
試合前からスタジアム周辺には刺青を入れた男たちがビールを飲みながら大声で歌い、イタリアではゴール裏で発煙筒がたかれるのはお約束。
フランスでは試合終了後に警察がサポーター軍団を威嚇しながら追いかけ、私もその喧騒の中で、必死に「安全地帯」まで逃げた経験がある。
もちろん、こうした物騒な観客がスタジアムに集まる全てだったとは言わないが、少なくともそうした観客はどのスタジアムにも少なからず存在し、それ故に女性や子どもにとってサッカースタジアムというものが、安全かつ純粋にサッカーを楽しめる空間と認識されていなかったのは間違いないだろう。
Jリーグの女性観客の割合は
プレミアリーグでも増加する女性観客
https://twitter.com/ChelseaFC_Japan/status/945667771718803456
しかし、そんな過去があった欧州においてもスタジアムに女性の姿が目立つようになっている。2015年の調べではプレミアリーグの女性観客比率は20%にも上り、その増加傾向は継続している。観客の5人に1人が女性。恐らく私が20年以上前にスタンフォードブリッジやオールドトラッフォードで体感したプレミアリーグの光景も大変革しているのだろう。
Jリーグ 観客数は微増傾向も頭打ち感が否めない
かつてのJリーグブームは完全に過去の遺産となり、現在50以上のチームが存在するJリーグにおける目下の課題はその観客動員力である。
Jリーグブームの終焉で1996年を境に減少傾向にあったJ1リーグの観客動員数は、W杯での日本代表チームの戦績とリンクするような増減を繰り返し、ここ数年においては微増傾向にもある。(2017シーズンについては前年比105%の伸率)しかしながらその観客を年代別に見てみると、2010年からの7年間でそのボリュームゾーンは30代から40代へと移行している。それに伴い50代も増加、30代、20代といった若年層は減少する一方だ。こうした傾向が日本の人口変動に影響されているのは間違いないことだが、そのボリュームゾーンにあたる年代は、Jリーグ創設時を10代後半から20代前半で迎えた年代でもあり、Jリーグが若年層のファン獲得に苦労している実情も現わしている。
女性観客を増やすことこそ、観客動員増加に欠かせない
こうした中、女性の観客比率については、2001年からの統計数値を見ても40%前後で推移している。この比率は世界のサッカーシーンの中に合っても特筆すべき高さであると言えるだろう。(ちなみに女性観客の年代比率は男性のそれとほとんど変わらない)
私はJリーグが観客動員数を増加させていくためには、この女性比率を更に高めていく事こそが最も効果的な施策であると考えている。
「カープ女子」の威力
https://twitter.com/MasaGameLive/status/950012485335003137
「カープ女子」という言葉には既に使い古されているような印象を受ける方もいるかも知れないが、広島カープの観客動員が劇的に増加したのは、この「カープ女子」による力だと言ってもいい。広島カープの観客動員推移を見ると、2009年に完成した新球場の効果があったのは僅か1~2年、その後2013年まで停滞していた観客数が一気に増加し出したが2014年以降で、その勢いを超える割合で女性観客=カープ女子が急増している。※1
もちろん、この背景には広島カープのセ・リーグでの成績も大いに影響している。
しかし、現在のMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島から感じられる熱気は、それまでスタジアムに来ることもなかった女性ファンの力なしにはあり得なかったのである。
女性比率ナンバーワン アントラーズが実行した2つのポイント
【擬人化】過去マンガ再アップ。2015年発行の同人誌から抜粋。スタ飯(スタグル)について【4P】鹿島、熊本、讃岐、東京の4人で解説してます pic.twitter.com/VA0tbnoZC5
— らぎー (@ragi0) November 5, 2017
現在Jリーグで女性観客の比率が高いクラブは鹿島アントラーズだ。(2016シーズン46.1%)あの「陸の孤島」「鹿島国」と呼ばれるカシマスタジアムが何故それほどまでに女性観客を集めることが出来ているのか、そのポイントは少なくとも2つあるそうだ。
- 女子トイレの増設
- 飲食の充実
確かに、サッカースタジアムにおけるトイレ問題はどこにおいても課題と言えるだろう。満員になってもいないのに、ハーフタイムや試合終了後には必ずと言っていいいほど長蛇の列が出来る。それでも男性は「用を足す」だけだからいいかも知れない。しかし女性がトイレに求めるのは単に「用を足す」場所としての機能だけではないようだ。女性にとってトイレは「化粧室」身だしなみを整える場所でもある。
そして飲食の充実についても、男性が求めるものと女性が求めるものが根本的に違うということにクラブ側が気づくか気づかないかは大きな差になってくるのだろう。
私の妻はスタジアムで「パンケーキ」を良く食べている。サッカースタジアムで「パンケーキ」だ。男ではなかなかこの感覚が理解できない。
妻と一緒にスタジアムへ行った時の経験から、アントラーズが女性観客を増やしている要因とされている2つのポイントが非常に現実的課題として伝わってくる。
サッカースタジアムに、より多くの「女子サポ」を迎え入れる姿勢・覚悟
突き詰めていけば、こうした「女性ファン」に目線を合わせたスタジアムづくりのヒントはもっと見つかるはずだし、我々男性ファンもそうしたことを視野に入れながらJリーグを見ていく必要もありそうだ。
一説には女性ファンは、スタジアムやSNSなどに「同じクラブを応援している」コミュニティがある人ほど、観戦頻度が高まる傾向もあるそうだ。
こうしたことであれば、男性ファン・サポーターでもそれを促進させていくことは出来る。
いずれにせよ、「男性のもの」であったサッカースタジアムに、より多くの「女子サポ」を迎え入れる姿勢・覚悟が我々男性ファン・サポーターには必要なのではないだろうか。
※1 出典 広島市 – 広島市民球場運営協議会の概要
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