前橋育英が初優勝 神々しくも見えたピッチを駆ける22人の選手たち

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どんよりとした小雨まじりの空、しかし埼玉スタジアムのピッチは神々しい光で包まれているかのような錯覚を覚えた。

全国高校サッカー選手権決勝。流通経済大学柏と前橋育英による一戦から、私はそれが単なる高校サッカーの決勝戦であるという価値以上の、サッカーがしばしば「祝祭の空間」に例えられていることを強烈に印象づけられるような素晴らしい気持ちにさせられた。

40,000人以上の観衆が集まった。

現在の高校年代のサッカー

多くのサッカーファンは十分に承知していることではあるが、Jリーグクラブにそれぞれ専門の育成組織が存在し、そこで育った選手たちが日本トップクラスの選手へと成長していく状況が当たり前となっている現在、全国高校サッカー選手権が高校年代における最高峰の大会とは呼べなくなってきている。

今年決勝を戦った両チームについても、彼らが今年度の主戦場としていたカテゴリーは「関東プリンスリーグ1部」であり、上位カテゴリーへの挑戦を12月に終えたばかりなのだ。

この年代における最高峰のリーグは、東西日本にそれぞれ存在するプレミアリーグであり、東西で合計20チームのほとんどがJリーグクラブの下部組織で占められ、高体連所属の高校サッカー部については、東日本で2校(青森山田、市立船橋)西日本では5校(阪南大高、神戸弘陵、米子北、東福岡、大津)に過ぎない。(全て2017年度)

今年度、関東プリンスリーグで優勝した前橋育英と2位となった流経柏はともにプレミアリーグへの参入プレーオフを戦い、流経柏は見事来年度のプレミア昇格を果たしたものの、前橋育英はジュビロ磐田U-18に敗れ、高校年代最高峰のリーグへの参入は叶わなかった。

しかし、そんな背景など全く意味を持たないと感じてしまうほどに、我々は正月の「高校サッカー」に魅了される。

高校サッカーは共感に溢れている

私は埼玉スタジアムのスタンドで試合を見ながら、自分自身が何故これほど眼前で行われているサッカーに惹かれ、ピッチ上を走る選手たちの姿が神々しくさえ見えているのか、思いを巡らせてみた。

そこで私はひとつの結論を見いだすことが出来た。

高校サッカーには、私たちが共感しえる要素が溢れているのだ。

私のように学生時代にサッカーをしていた人間でなくとも、ピッチ上で全てを出し切ろうとする選手たち、ベンチで激を飛ばす指導者、スタンドで必死に応援をする生徒たち、スタンドを一杯に埋めるサッカー少年たち、そして学校やその地域とつながりのある多くの大人たち、彼らのひとりひとりが過去そして現在の「自分」でもあるのだ。

学校という誰もがかかわりをもってきた「社会単位」による大会であることが、これほどまでに多くの人たちを魅了し続けているのではないだろうか。

ある人にとっては「ノスタルジー」なのかも知れない、またある人にとっては「羨望」であったり「手本」であるのかも知れない。なかには「悔しさ」や「後悔」を覚える人もいるかも知れない。

そうしたそれぞれの思いがピッチ上の選手たちによって、目の前に現れてくるのだ。

劇的な幕切れ

試合展開は劇的なものとなった。

終盤になるにつれ、徐々に動きが小さくなっていった流経柏を前橋育英の選手たちが襲い掛かかる。キャプテンの田部井涼はことごとく流経柏の中盤を無力化させ、後半途中から投入された宮崎鴻は驚くべき身体能力の高さで前橋育英の推進力を確かなものにした。自陣ゴール前で何度となく決定的な場面を回避し続けた流経柏の集中力も驚異的だった。

決着をつけるゴールが決まったのはアディショナルタイムに入ってから、勝負を決めたのは小柄な10番飯島陸のボールに対する執念であった。まさに勝者に相応しい勝利への思いがこもった素晴らしいプレーだった。

未だ人々の心を揺るがす高校サッカー

https://twitter.com/ikueiphoto6/status/950301730511532032

現在の高校サッカー選手権の仕掛け人でもある坂田信久さん(元日本テレビスポーツ局次長、元東京ヴェルディ社長)は、学生によるサッカー大会を日本テレビが全面支援すると決まった時、その対象を大学にするべきか高校にするべきか、あるいは中学にするべきか大いに検討したと話していた。

「最も熱心に取り組んでおられたのが高校サッカーの現場指導者の方たちだった」

こうして日本テレビが高校サッカーを全面支援し始めてから半世紀が過ぎようとしている。

日本サッカー界が劇的な変化を遂げた現在にあっても、高校サッカーを取り巻く環境には少しの陰りもなく、むしろその価値は高まってきているようにすら感じる。

そして、その場で戦う選手たちだけにではなく、あらゆる人々に対し、スポーツがいかに神聖で人間の心を強く揺さぶるものであるのか、それを改めて気づかせてくれる。

春には高校生ではなくなってしまう選手たちによる、いわば刹那的でもある真摯な戦いぶりが人の心を打たないようであれば、その時こそサッカーがその存在価値を失った瞬間と言えるのではないだろうか。

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