新しい年を迎え、まもなくスタートする2018シーズンを前に各クラブが毎日のように選手の移籍情報をリリースしている。
おらが街のチームが新しいシーズンをどういった選手で挑むことになるのか、こうした移籍情報がファン・サポーターにとってはオフシーズンにおける大きな楽しみのひとつにもなっている。
所属選手との契約年数を公開していないJリーグ
ユン・ソギョンが柏レイソルと2020年まで契約を延長したということらしい。記事は、ハングルなので、詳細はわからないけれど。https://t.co/hFIWFzsoo4
— 秀の介@柏 (@hidenosuke) January 4, 2018
以前このブログでも触れたことがあるが、Jリーグクラブは所属選手たちの契約内容について、ほとんど具体的な情報は公開していない。それでも毎年シーズンスタート時期に発売される「Jリーグ選手名鑑」のような媒体には、選手たちの年俸に関しては「推定」で記載されていることも多い。どの選手がクラブからいくらもらっているといった情報は、何も下世話なカネの話だけにとどまらず、その選手がどれだけの価値をクラブから見出されているのか、といった側面を垣間見る「要素」として、興味深く眺めてしまうことも多い。
しかしながら、Jリーグ選手がクラブと交わしている契約期間に関しては、ほとんどその情報が外部に知らされることはない。まれに外国メディアの報道などによって選手個々の契約年数について触れられた情報が飛び出すことはあっても、日本国内のメディアでは、まるでそれが「タブー」であるかのように扱われているきらいすらある。
2009年 移籍ルールの大転換
福岡DF冨安健洋、ベルギー1部シントトロイデン移籍で大筋合意!移籍金は億単位(関連まとめ) https://t.co/4UPKknigF5 pic.twitter.com/d5EyGDfwrH
— サッカーまとめ更新速報 (@get2ch_soccer) January 6, 2018
2009年6月19日に行われた日本サッカー協会理事会において、JリーグでもFIFA基準に沿った移籍ルールが実施されることが決まった。この決定により、Jリーグ選手の移籍に対する自由度は格段に高くなった。
1993年のJリーグ発足以来、選手の移籍に際しては、その選手の年齢、所属するカテゴリー(J1、J2など)によって「係数」が設けられ、30歳未満の選手の国内移籍には必ず「移籍金」が発生するシステムになっていた。しかも、契約を満了した選手であっても30か月以内に国内の他クラブとプロ契約をする場合にもこの「移籍金」は発生していた。
戦力のクラブ間格差を生み出しにくくする為に設けられたこのシステムは、Jリーグ初期の「護送船団営業」を実現する上では非常に効果的に機能を果たしたが、完全なる日本国内のローカルルールでもあり、日本サッカー界が世界サッカー市場とつながりを強くしていく中で、前近代的なシステムに成り下がってしまっていたといえる。
2009年から採用されることになって新しい移籍ルールは、俗にいう「ボスマン裁定」によって誕生したクラブによる所属選手の拘束力を著しく低下させるものだ。
クラブとの契約年数が満了になった選手の他クラブへの移籍には原則的に「移籍金」が発生しない。「移籍金」が契約期間中に他クラブへ移籍するケースで発生する「違約金」となったのだ。
これにより、多くのJリーガーが欧州クラブへ「0円移籍」する事態が蔓延した。
「0円移籍」で欧州へ渡る選手たち
元ドルトスカウトが香川移籍の経緯を語る。先日アーセナルに電撃移籍https://t.co/5hu4ri9YZd#dvd #afc
— FOOTBALL TRIBE JAPAN (@FootballTribeJP) December 5, 2017
香川真司がドルトムントへ移籍したケースは欧州に衝撃をもたらせた。なにしろ「タダ同然」で獲得した選手がブンデスリーガのMVPを獲得し、プレミアリーグに高額で売却出来たのだ。この事実をもって欧州サッカー市場においてJリーグ選手が「値札0円で陳列されたノーリスク物件」に映ったとしてもなんら不思議ではないだろう。
今や日本代表の主力クラスだけが欧州移籍を果たす時代ではなくなっている。それだけに三浦知良や中田英寿が欧州を活躍の場とした時代に比較すれば、欧州移籍する選手に対して無条件に喝采があがるムードはなくなっている。しかしそれであっても、Jリーグで実力を発揮している選手の欧州挑戦には肯定的な見方がされているといっていいだろう。
しかし、少し立ち止まって考えてみてほしい。
彼らの値札にはもしかしたら「0円」と書かれているのかもしれないのだ。
本来であれば数億円の値札をつけてもおかしくない選手がタダで獲得できるのであれば、少々難があっても欲しがるクラブは欧州にもあるだろう。しかし、そんな風にして獲得した選手をその欧州クラブは大切に扱うだろうか。
「0円移籍」の蔓延は日本サッカーの衰退を招く
若く実力のあるJリーガーの間では、クラブと複数年契約を結ぶことを避ける選手がほとんどだそうだ。もちろん、彼らの頭の中には「0円で欧州へ移籍」という青写真も存在しているのだろう。
「0円移籍」で欧州へ選手が流れていく風潮がこれ以上蔓延していけば、Jリーグの力は間違いなく減退していく。幼いころから手塩にかけ、素晴らしい実力を持つ選手へと育てた途端に、何の対価も得ることなく国外へと連れていかれてしまっては、クラブはその穴を埋める資金がないばかりか、それまでにかけた多額の育成費もどぶに捨てたようなものとなってしまう。
クラブにとって選手は大きな財産だ。そして多くのファン・サポーターにとってもそうであるはずだ。そして選手にとっても、自分を育ててくれたクラブは財産であるはずだ。
Jリーガーが世界トップクラスの舞台で活躍するシーンに大きな魅力があるのは事実であるし、多くのサッカーファンにとってそれこそが最も高いプライオリティをもった要素であるのかもしれない。しかし、その選手が正当な価値を認められ欧州へ移籍したのか。その部分にも注目していくことが必要であろう。
キーワードは「0円移籍」だ。
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