「日本最強のチュックダン」FC KOREAが関東サッカーリーグ2部から降格

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かつて「日本最強」と言われた在日朝鮮蹴球団を前身とするFC KOREAが、関東サッカーリーグ2部から降格し、2018シーズンは東京都社会人リーグ1部で戦うこととなった。

このブログでも何度か紹介したことがあったが、かつて日本サッカー界の隠れた王者は在日コリアンによるサッカーチームだった。

「高校サッカー」に出場できなかった朝鮮高校

十条の東京朝鮮高校サッカー部は、まだ高校サッカー選手権が関西で開催されていた時代に東京予選を爆発的な強さで勝ち抜き、全国ベスト4にまで進出した実績がある。1949年から1954年までの5年間、東京朝鮮高校は「都立高校」であった。そして、この全国高校サッカー選手権大会出場という経歴も、東京朝鮮高校が日本の学校教育法に定められる「一条校」として扱われなくなった1955年以降、1995年までの長きに渡り叶うことはなかった。(1997年に41年ぶりに全国高校サッカー選手権東京都予選に出場した際の成績はベスト16。このチームには当時3年生のアン・ヨンハがいた)

全国高校サッカー選手権のみならず、日本サッカー界のあらゆる「公式戦」へ出場することが出来なかった在日コリアンによるサッカーチーム。

しかし、その実力のほどは、全国高校サッカー選手権に出場するために上京した全国の強豪校が「朝高詣で」と称した「腕試し」をしていたこと。東京朝鮮高校と目と鼻の先にある高校サッカー界の名門帝京高校が、多い時には毎週のように練習試合を組み、キラ星のごとく高校サッカーのスターを集めたチームであっても、勝つことが難しいとされていたことなどからも伺い知ることが出来る。

在日コリアンサッカー界の英雄 金明植

当時の東京朝鮮高校を長く指揮していたのは、在日コリアンサッカー界の英雄、金明植。

自身も東京朝鮮高校サッカー部のOBであり、1954年の全国ベスト4チームの中心選手だった金明植は、中央大学進学後も学生サッカー界で大活躍し、彼ら世代を中心に結成された「在日朝鮮蹴球団」(在日コリアン社会ではチュックダン【蹴球団】という愛称)でも、全国を遠征行脚し、各地で圧倒的な勝率(1000試合で9割以上とも言われる)を誇った。

日本リーグのトップに対してもその実力は引けを取るどころか、名だたる実業団チーム、そしてあの読売クラブでさえも「在日朝鮮蹴球団」にはなかなか勝つことが出来なかった。

日本サッカー協会「準加盟」クラブ

しかし、そうした実力がありながらも、在日朝鮮蹴球団には日本サッカー界における「公式戦」への出場機会はなかなか与えられなかった。

1995年にやっと加盟できた東京都社会人サッカーリーグでは、年々そのカテゴリーを上げて行き、4年後の1998年には東京都社会人サッカーリーグ1部で優勝するも、在日朝鮮蹴球団は「準加盟」という扱いであった為、関東リーグへの昇格プレーオフへの出場は認められなかった。

そしてこの年が在日コリアンサッカーにとって、ターニングポイントにもなった。

当時、チームと「プロ契約」をしていた選手たちを解雇し、在日朝鮮蹴球団は朝鮮大学校サッカー部のセカンドチームのような形へと変貌せざる得なくなる。しかしそれは「日本最強」とも言われた「チュックダン」の終焉も意味した。

目標への門の大きさの違い

2001年には、日本サッカー協会による大会参加規程の見直しで「準加盟」クラブでもJFLまでは昇格が可能なシステムに変わったものの、日本サッカー界自体の様相もJリーグのスタートにより大きく変貌していた。

在日コリアンのサッカー選手と、日本人サッカー選手とでは、目標とする舞台への門の大きさが違うことも「プロサッカーリーグ」が出来たことによって、より顕著になっていったのだろう。

2002年に「在日朝鮮蹴球団」を引き継いだ形でスタートしたFC KOREAは、それでも、この15年弱の間に関東サッカーリーグ1部に所属し、JFL昇格が現実的な目標と出来るチームとなるまでに成長した。

入替戦そして降格

しかし、2016シーズンでは関東サッカーリーグ1部から2部へ降格、2017シーズンにはその2部でも最下位となり、この日、関東リーグ2部昇格を狙う、茨城県リーグ王者「アイデンティみらい」を相手に入替戦を戦うことになったのだ。

2016シーズンから在日コリアン以外の選手へも門戸を開いたFC KOREAの監督はクラブ初の日本人監督である吉岡大介。そして、この日も5人の日本人選手が先発出場した。

「Jリーグ入り」をクラブの目標として掲げ、圧倒的な強さで茨城県リーグを制したアイデンティみらいには、テクニカルな選手も多く、FC KOREAのディフェンスラインを翻弄した。特に8番の古橋広樹のドリブルには、FC KOREAの選手たちからは感じられない「個」の力の強さを感じさせるものがあった。

それでも、2点のビハインドを背負ったFC KOREAは、センターバックのホン・ユングを後半スタートから前線のターゲットマンに置き、迫力のある攻撃で何とか試合を挽回させようという気迫が感じられた。GKのリ・チェグンもスーパーセーブを何度も見せ、相手に追加点を許すことはなかった。

主将で10番のカン・ホはFC KOREAの中でも明らかに特別な能力を持った選手であることは分ったが、非常にナイーブになりがちなこの試合の中で、冷静でありながら熱く、最後の最後まで戦う姿勢を見せていた。

2年前までは関東1部で戦っていたチームが、来年は東京都1部を戦場とする。いや、かつて「日本最強」と言われたチームが、東京都リーグで戦うことになったのだ。

日本の「アスレチック・ビルバオ」

FC KOREAはこの先、スペインにおいてバスク人だけでチーム編成をしている「アスレチック・ビルバオ」のような存在に、日本サッカー界でなり得る可能性はどれくらいあるのだろうか。

私は、そこで戦う選手たちだけの力では、FC KOREAがビルバオになる日は来ないような気がする。

クラブが、チームが、選手が、魂の全てをそこに無条件でぶつけられるような「日本サッカー界」における「環境」が出来てこそ、FC KOREAのようなチームが「Jリーグ」に存在し得るような仕組みが出来てこそ、彼らの「真の力」を見られる時がくるのではないだろうか。

そして、そんな時代が本当にやってくるとすれば、それは日本サッカー界が、より深みのある、そしてより多くの人たちが純粋に楽しめる世界となっていくではないか。

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