錦糸町フットボール義勇軍、ロック総統のいうところの
「今そこにあるフットボールを愛せ」
これを体感してみたくて、市原のゼットエー・オリプリスタジアムへ行った。
行われたのは関東サッカーリーグのカップ戦「市原カップ」決勝。ヴェルフェたかはら那須と東京23FCとの対戦だ。
「今そこにあるサッカー」を愛す人々

チームスタッフや大会関係者の方が観客の人数よりも確実に多そうなこの試合は、数ある地域リーグの中でも比較的レベルが高いほうだと言われる関東リーグの全チームが出場する由緒のあるタイトルでもある。(地域CLに出場していたVONDS市原は今年は出場辞退)
良く晴れた日曜日の午後、それでもそこにはしっかりと「今そこにあるサッカーを愛す」人たちが集まっていた。東京23FCのサポーター達である。
彼らはメインスタンドの端にビッグフラッグを掲げ、太鼓を叩きながらチャントを叫んでいる。その数はおおよそ15人程度であろうか、対戦相手のヴェルフェたかはら側に応援団がいなかったこともあって、スタジアム中にその声は響きわったった。
「この試合に勝てば今シーズンもタイトルを獲ることが出来る。」
羽中田体制2年目となった2016シーズン、東京23FCは関東リーグ1部で優勝という栄冠を掴み、地域CLにも出場した。しかしながらその集大成の年ともいえた2017シーズン、関東リーグでは4位にとどまり、関東リーグからの代表として出場した全社大会でも2回戦でジャパンサッカーカレッジにPKで敗れ、JFLへの扉を叩く地域CLへの出場は叶わなかった。
そんな彼らにとって、今季いっぱいで退任する羽中田監督のもとで戦える最後の試合となったこの市原カップで優勝という結果を得ることは、来季に向けた新たな戦いの第一歩としても非常に重要なものであっただろう。
東京23サポーター達からはそんな緊張感を解きほぐすかのような、楽しげで前向きな声が選手たちに飛ばされる。
楽しもう。私はそう思い、今日だけは東京23側に立ってこの試合を見ることに決めた。
東京23FCの11番
12/10(日)曇り13℃昼 その2
本日の入場者数:85人
【KSL市原カップ決勝】
東京23FC 0 ― 3 ヴェルフェたかはら
最後の試合を勝利で飾る事ができず今シーズンを終えました。羽中田監督も今日がラスト。今はただ感謝の気持ちしかありません。お疲れ様でした。#東京23野鳥の会調べ#東京23FC2017年12月 pic.twitter.com/uj15lg4nLk— えどモン (@ultras23_jp) December 10, 2017
試合は前半拮抗した。今季リーグ戦では東京23が4位、ヴェルフェたかはらが5位で終わっている(直接対決ではヴェルフェの1勝1分)両チームは互いのことも良く分かっているのだろう。サポーター達の陽気なムードに反して、削りあいをいとわないような激しさも感じられる。
東京23FCは、11番の選手がセンターバックの前に位置取り、チームのタクトをふっている。
ヴェルフェたかはらのプレッシャーがかかりにくいセンターライン付近でボールをさばき、東京23の攻撃は全て彼を経由するといっても過言ではない。ボールを持っているときの姿勢もよく、しっかり走って守備にも貢献する、そしてこの選手の最も大きな特徴であろう絶妙なパスセンス。長短織り交ぜた正確なパスで、単調になりがちなこのゲームにアクセントを加えている。
試合は最終的に0-3でヴェルフェたかはらの勝利となった。0-1のビハインドで迎えた後半、東京23は中盤の底でゲームを作っていた11番をひとつ前でプレーさせる判断をした。結果的にはこれがチームのリズムを狂わせたような気がする。両チームにはここまで点差が広がるほどの戦力差は感じられなかった。
しかし東京23サポーター達のチャントは0-2になろうが、0-3になろうが、止むことはなかった。この「今シーズン最後、羽中田体制最終」試合を深く噛みしめる彼らの口からは、試合終了後も選手へのねぎらいと励ましの声以外には聞くことが出来なかった。
「こないだは福井まで車で行ったんだ」

私はハーフタイムに、スタンド裏でボールを蹴っていた東京23の少年サポーターに声をかけた。すると彼らはこう言っていた。
「こないだは福井まで行ったんだよ。車で夜に出発して次の日の朝到着したんだ。」
彼らには、東京23FCの選手たちが香川真司や本田圭祐のようには見えていないであろう。しかし、彼や彼の家族にとって、東京23FCはまさに「今そこにあるサッカー」なのであろう。こうして日がな一日、スタジアム以外には何もないこの市原にまで足を運び、チームと時間を共にすることは、彼らにとって当たり前のライフスタイルなのだ。
東京というヒトもモノも情報も、それらが全て規格外の規模で溢れている大都市であるが故に、東京23FCの存在意義が一般的にはなかなか理解を得にくい部分もあるだろう。
こうした経済的バックボーンを持たない市民クラブのサクセスストーリーが「Jリーグクラブになったかどうか」だけで済まされてしまう傾向があるのは非常につまらない話だ。
もし仮に、スタジアムで会った子供たちが大人になっても、まだ東京23FCが関東リーグで戦っていたとしたら、それは成功だったといえるのかも知れない。クラブが変わらずにそこに在り続けたのだから。
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