ACL浦和優勝 「決勝戦と結果」だけに執着する日本社会とスポーツ

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日本のスポーツは、とかく「決勝戦」に注目しすぎる傾向があるように思う。

いや「決勝戦」というよりは「優勝シーン」への執着とでもいうべきか。

 

 

先週末は日本サッカー界でもあらゆるカテゴリーで終盤、最終盤の激しい戦いが繰り広げられた。

ACLでは決勝戦2ndレグが埼玉スタジアムで行われ、浦和レッズが10年ぶり2度目の優勝という快挙を成し遂げた。

もちろん、浦和レッズが戦い勝ち取った栄冠は先週末に行われた決勝戦に勝利したことが直接的な要因であることは間違いない。

しかし、そこに至るまでのチームの歩みや無数の競争にこそ、サッカーというチームスポーツの面白さが凝縮されているように私は考えている。

 

浦和にはACLしかなかった

浦和レッズは日本で最も有名で人気のあるサッカーチームだろう。

しかしながら、Jリーグでは驚くほどに「優勝」とは縁の無いチームでもある。

昨シーズンはリーグ戦において圧倒的な勝点を稼ぎながら、2テージ制というレギュレーションの犠牲となり、勝点15差(5勝分)をつけていた鹿島アントラーズにシーズン優勝をかすめ取られた。

今シーズンも序盤こそ盤石な戦いぶりを見せていたものの、中盤に大きく失速し長年チームを率いてきたカリスマ監督が辞任。ルヴァン・カップ、天皇杯といったカップ戦でも早々に敗退し、頂点を狙えるコンペティションはこのACLしか残っていなかった。

そのACLでさえも、浦和の戦いぶりは決して安定していたわけではない。

ラウンド16の済州戦、準々決勝の川崎F戦ではアウェイゲームを大差で落とし、第2戦となったホームゲームで大逆転を演じ、駒を進めてきた。

彼らにとって今季のJリーグでの戦績は、到底満足できるものでは無かったが、アジアの強豪クラブを相手に戦うACLの舞台では、その潜在能力を徐々に発揮しだし準決勝の上海上港戦、決勝のアル・ヒラル戦と頂点に近づくにつれ、まさにチャンピオンの名に相応しいしたたかな戦いぶりを見せた。

 

保たれたプライド

来季のACL出場も叶わない浦和レッズにとって、今年ACL王者になることは自らの「プライド」をかけた戦いでもあった。

ACL決勝が行われた11月25日の埼玉スタジアムで彩られた美しいコレオグラフィーには、チームとそれを全力で支えるレッズサポーターが今季覚えた大きな「失望」に対する「反動」が現れていたような気さえする。

彼らは辛く長かった失意の時間を「アジア覇者」となることで忘れてしまいたかったのではないか。

 

サッカーファンは何故ACLに惹かれるのか

今季のACLは浦和レッズの大進撃で大いに注目も浴びた。

しかしながらその一方で放映権を持つ日本テレビが決勝戦の地上波放送をしなかったことに大きな批判も集まった。

浦和レッズの果たした10年ぶりの快挙は、そうした消極的なメディアにも少なからず影響を及ぼすのでは?と見る声もあるが、私は来年もそう大きく変わらないと思っている。

サッカーファン、熱烈なサポーターが何故ここまでACLに価値を見いだしているのか。

それは、日本のチーム、自分が応援するチームが優勝する姿(だけ)を見たいからではない。

彼らは日頃応援し良く知っている選手たちが、選ばれた者だけに許されたアジアの舞台で戦っている姿を見てみたいのだ。

慣れない外国のスタジアムで真剣に戦うチームの姿。

自分たちの家のようなホームスタジアムにやってくる外国のチームと真剣に戦う姿。

サッカーであるからこそ存在するこうした異文化との真剣勝負に挑む「我がチーム」の姿が見たいのだ。

ただし、そうした特別な真剣勝負であっても一般視聴者にとっては「たかがアジア」なのかも知れない。

優勝シーンだけを見たい人は速報テロップで満足する

私はこうした欲求こそがスポーツに見せられた人間の根本的なものであると信じているが、日本のスポーツ界にはこうした価値観を軽視する傾向があるように感じて仕方ない。

「決勝戦」だけを必要以上に特別視する風潮も、こうした傾向がその背景にあるように思う。

スポーツに勝敗はつきものであり、勝敗こそがチームや選手の価値を決める判断基準であるのも間違いのないことだ。

ただ、その勝敗は試合の中で行われている無数の争いや競争の積み重ねによって生まれるものでもある。

それを「価値」として見いだせると、スポーツを見ることの面白さを格段に広げることが出来る。

「優勝シーン」だけ「結果」だけを見たいというニーズが圧倒的であれば、それを伝える手段としては「速報テロップ」だけで十分なのだ。

 

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こちらのブログでは主に、私が最近妙に熱心に応援し始めた「柏レイソル」についての内容を多く記事にしています。

 

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