「3日間で3試合、そしてその3試合がすべて自分たちの未来を大きく変えるかも知れない試合」
今年も来季のJFL昇格を争う全国地域サッカーチャンピオンズリーグ開催の時期となった。
全国の9つの地域(北海道・東北・関東・北信越・東海・関西・中国・四国・九州)のリーグ王者に、先月行われた全国社会人サッカー選手権大会の上位3チームを加えた12チームによる熾烈な戦いは、11月10日~12日に1次ラウンドが既に行われ、それを勝ち上がった4チームによる総当たりの決勝ラウンドが24日~26日の3日間という過酷な日程で行われている。
2017年大会の決勝ラウンド進出チームは、VONDS市原FC(関東王者)、アミティエSC京都(関西王者)、テゲバジャーロ宮崎(九州王者)、コバルトーレ女川(東北王者)の4チーム。
彼らは1次ラウンドでも3日間で3試合というハードな戦いを2週前にこなしており、この決勝ラウンドを戦うことでひと月に2度もこの厳しい戦いに挑むことになる。
この決勝ラウンドで2位以上に入ることが出来れば、彼らは来季からJ3リーグの下位リーグでもあるJFL(日本フットボールリーグ)への昇格を決めることが出来る。
JFL昇格がチームにもたらす意味は重い。
なんといっても、その戦いの場がクラブのホームタウンを中心とした「地域」から「全国」へと変わるのだ。そしてそこは、Jリーグを目指すクラブにとって必ず通らなくてはいけない道でもある。
「輪」の女川、「力」の宮崎
やっと見ることが出来たコバルトーレ

私はある縁あって、宮城県女川町をホームタウンとするコバルトーレ女川を知ったのは3年ほど前のこと。
現在、東北1部リーグに所属する彼らの試合は東北でしか行われない。千葉のゼットエーオリプリスタジアムで行われるこの大会の決勝ラウンドにコバルトーレが駒を進めたことで、私はやっと彼らの試合を自分の目で観戦できる機会を得た。
初戦の相手はテゲバジャーロ宮崎。11月11日に鹿児島で行われた1次ラウンドでは1-2と逆転負けをしている相手だ。
監督はJリーグでも複数のクラブで指揮をとった経験のある石﨑信弘。何人かの元Jリーガーも所属し、あの「デカモリシ」こと森島康仁も選手として登録されている。選手たちの経歴だけを見れば、明らかに宮崎の方に分がある。
試合が始まると両チームの戦いぶりは対照的だった。
「輪」の女川、「力」の宮崎といったところだろうか。
前半は女川の「輪」がひかる。ボールを拾い、跳ね返されてもさらに拾い、まるで女川の選手たちが宮崎のやろうとしていることを全て「予想」しているかのようなそつのない戦いぶり。
選手同士の距離感もコンパクトで、女川が張った「網」に宮崎がどんどん掛かる。そんな展開であった。そんな流れの中から女川が美しいミドルシュートで先制。
前半だけを見れば女川のゲームであった。
宮崎の策士 石﨑信弘監督
【無料公開】地域CL決勝R コバルトーレ女川2−2(4PK3)テゲバジャーロ宮崎(2017年11月24日@ゼットエー) – 宇都宮徹壱ウェブマガジン @tetsumaga https://t.co/jYU3NYeKzF
— 宇都宮徹壱 (@tete_room) November 24, 2017
しかし、ハーフタイムに女川サポーターの方が危惧していた「石﨑監督は策士」という言葉が現実のものとなる。
宮崎は後半になると、女川が張った網を超えるロングボールを前線に送り込んでくるようになる。
恐らくは、女川の足が止まってくる後半に向けて温存しておいた戦術だったのかも知れないし、宮崎もこれを90分続ける力はないのだろう。
前半のように宮崎のボールが網にかからなくなった女川は、ロングボールに脅威を感じたのか、徐々に選手同士の距離が開いてきた。
守備ラインもジリジリと下げられている。
そして、一気に2点を獲られ逆転を喫する。
2ゴールともゴール前に送られた長いクロスを簡単に合わせられた失点だった。
しかし、ここから女川は意地を見せた。
疲れの見えた選手を次々と交代させ、中盤の攻防で優位に立てるようになってきたのだ。
そして、後半43分。起死回生の同点ゴール。
得点を決めたキャプテンの成田星矢は、後半30分過ぎに投入され女川の動きを再活性化させた選手の1人であった。
試合は2-2の引き分けとなり、大会規定によりそのままPK合戦に突入。
GKの好守もありこのPK合戦を制したコバルトーレ女川に、勝点2が与えられた。(引き分けPKの勝者には2、敗者には1の勝点がつく)
街に生きるクラブチームの本質

初めて見たコバルトーレ女川の戦いぶりは素晴らしかった。
アマチュアの地域リーグとはいえ、JFLを視野に入れるレベルともなれば、目の前の勝利を得るために「力に任せた」戦術を取るチームも多いであろう。
そんな中で、コバルトーレがこの試合で見せた「輪」にはそれを作り上げてきた彼らの「時間」を感じることが出来た。
もちろん、この「輪」を作っていく過程のなかで女川に暮らす人々の大きな支えがあったことは間違いないであろう。
そうしたチームの支えとなっている人々も、この日大勢スタンドに集まっていた。
彼らにとって、選手は「息子」であり「仲間」でもある。
「3日間で3試合、そしてその3試合がすべて自分たちの未来を大きく変えるかも知れない試合」
日本一過酷といわれるこの大会で、期せずして私は「街に生きるクラブチームの本質」を強く感じることができた。
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