1980年代のイギリスでは極右政治団体がサッカーサポーターをその排外的主義活動のために積極的にリクルートしていたという。
もともとレイシズム(人種・民族差別)が根強く存在してきたヨーロッパでは、こうした排外主義が浸透しやすい下地があり、そうした思想の広がりにサッカーが媒介となった傾向も強い。
我々が良く知っているヨーロッパの名門クラブにも、長い歴史のなかでレイシズムや排外主義の傾向が強いクラブが多数存在していることは、日本のサッカー界の将来を創造していく上で認識しておく必要もあるだろう。
レイシズム・排外主義傾向の強いクラブチーム
以下は、清義明著「サッカーと愛国」(イースト・プレス)の中で、挙げられていたレイシズム・排外主義傾向の強いクラブである。
一方ディカーニオはローマ式敬礼だいッ!と戦っていた pic.twitter.com/OVa6AtFjJT
— Pon (@tenutenu3) June 21, 2017
ラツィオ(イタリア)
ローマの名門として知られているラツィオは日本でも知名度が高く、これまでも世界トップクラスの選手たちがプレーしてきている。
しかし、そうした華々しい顔の裏でラツィオは差別行為の常習犯でもある。
最もそれが顕著にあらわれたのは2015年に当時所属したパオロ・ディ・カーニオが観客席に向かってナチス式敬礼をし罰金を受けた事件だ。選手だけではなくサポーターもナチスやイタリアの独裁者ムッソリーニへの敬意を隠さず、ナチスの標章「ケルト十字」や「ハーケンクロイツ」などをゴール裏に掲げている。
グラスゴー・レンジャーズ(スコットランド)
グラスゴーダービーが強烈な宗教的対立によって加熱していることをご存知の方も多いと思うが、実際にはこの対立は非対称な対立である。
アイルランドとケルトのカトリックがクラブの礎になっているセルティックに対し、レンジャーズは支配階級のプロテスタントに支持されている。
彼らはイギリス社会で被差別の対象となっているアイルランド人を表立って差別する人々でもあった。
中村俊輔がセルティックでプレーしていた時に「中村がうちの犬を食った」という横断幕が掲げられたことがある。こうした差別的なものを許す土壌があるクラブと言えるだろう。
ゼニト・サンクトペテルブルグ(ロシア)
2012年にクラブサポーターが黒人選手と同性愛者をチームに入れないようにクラブに対し声明を発表。彼らはそれをレイシズムではないと断言したが、クラブ側はそれを無視し黒人選手の獲得も継続している。
他にも世界のサッカーサポーターを取材対象としているジャーナリスト、ガブリエル・クーンによると、チェルシー、アイントラハト・フランクフルト、ミルウォールなどの名前が排他主義的なクラブとして名前が挙がっている。
また、2012年の欧州選手権が開催されたウクライナとポーランドもレイシズムがサッカースタジアムに蔓延している地域とも言われ、大会前にイギリスBCCとスカイスポーツがそれぞれの国での激しい人種差別に満ちた排他的な現場をレポートとして放送し、大きな反響を呼んだ。
戦争に駆り出されるサポーターたち
アルカン・タイガーのフレンズ。 pic.twitter.com/aUuk2qpiVW
— 永瀬一式 (@Kaspar_Lueder) June 1, 2017
80年代後半にレッドスター・ベオグラードのサポーターグループのリーダーとなったアルカン・タイガーは、セルビア人武装民兵集団のリーダーでもあった。彼がフーリガンサポーターのリーダーになり得たのは、荒くれのフーリガンたちをセルビア民族主義者に仕立てていくという意図でユーゴの秘密警察が送り込んだという説もある。
その後実際に、アルカンはフーリガンたちを民兵として組織し、血で血を洗うユーゴ内戦の最前線に彼らを送り込み、アルカン舞台はその戦場で暴虐と殺戮を繰り返した。
アルカンはユーゴで起こった「民族浄化」の元凶にもなってしまったのだ。
差別主義思想はどこにでも生まれる可能性がある
我々は人種・民族差別がどういった未来を生み出していくのかについて、しっかりと自覚せねばならないだろう。
「リスペクト」という美しい言葉の反対側に、人の尊厳を奪いその命すら危うくしかねない危険な人間心理がうごめいていることを
日本サッカー界が元凶となりユーゴで起きたような悲惨な事態が決して起きないとは言い切れない。
人間は集まれば、そこには必ず差別心は生まれる。それが表面化すれば同調する者があらわれ、差別主義が集団化すればそれは一つの勢力となる。
こうならない為には、サッカーに関わるものひとりひとりがそうした流れにしっかりと抗っていく覚悟が必要なのではないだろうか。
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