少年時代の私には少なくともこの認識があった。
「日本で一番強いサッカーチームは朝鮮蹴球団だ」
時代は80年代。日常的にテレビ放送されるサッカーの番組といえば「ダイヤモンドサッカー」くらいしかなかった頃だ。
当時の日本サッカー界で最も華やかな舞台は正月の高校選手権であり、その人気は日本最高峰の日本リーグや天皇杯をはるかに凌ぐもの。
インターネットも全くなかったこの時代に、私たちが得られるサッカーについての情報は限られ、月に一回発売されるサッカー専門誌を擦り切れるほど熟読していた。
そんな情報の少ない時代に「朝鮮蹴球団」という日本一強いサッカーチームがあることは認識していた。試合を見たこともなく、所属する選手の名前も知らない、そんな「最強」と言われるチームは私の中で幻想化していくことになる。
何故「東京朝高が最強」という認識を持ち得たのか
『無冠、されど至強』が、神戸新聞で書評されました。
著者の木村元彦さんは昨夜のクローズアップ現代+ @nhk_kurogen でシリア代表についてコメントされていました。 pic.twitter.com/Bi5iGkFiaF— ころから (@korocolor) October 13, 2017
朝鮮蹴球団とともに東京朝高についても「帝京でも歯が立たない日本最強の高校サッカー部」だという認識を持っていた。
こうした認識を何故、サッカー情報の少ない当時の私が持ち得たのか。これは長らく私の中で謎であった。私が東京出身であることや、帝京高校に憧れを抱く少年であったことも影響したのだろうか。いくら考えてもその原因を導き出すことは出来ない。
しかし、ある本を読んだことで私が「東京朝高サッカー部最強説」を認識することになったのかが判明した。
「無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代」
「オシム語録」の著者としても知られるノンフィクションライター木村元彦による渾身の一冊である。
「無冠、されど至強」の中に見つけた2つの記事写真
この本を読んだことで、私の中で「幻想化」されていた朝鮮蹴球団(在日朝鮮蹴球団)と東京朝高(東京朝鮮中高級学校)サッカー部が、ようやく実像として思い描かれることになった。
戦後の在日コリアンが日本で生きていく上でサッカーが非常に大きな意味を持ち続け、彼らが様々な政治的背景の中で日本サッカー界と近いようで遠い距離にあったこと。それでも日本サッカー界が発展していく上で、彼らの力が少なからず影響してきたこと。
これらを詳細な事実と日本サッカー界における優れた指導者たちの証言に基づいてつまびらかにしていく、私にとっては非常に意義深い一冊となった。
そしてこの本に差し込まれている数々の参考資料の中に、私は既視感のある記事写真を2つ発見する。
1枚目はP241に掲載されている「東京朝高と東京選抜の試合結果を報じる『イレブン』(1981年)」である。

そしてもう1枚はP206に掲載されている「東京朝高を『幻の日本一』と伝える『サッカーダイジェスト』(1982年)」という記事写真だ。

当時の私はサッカーダイジェストとイレブンを熱心に購読していた。
そして、小学5、6年生だった私は冬の高校選手権にも出場していないこの「最強チーム」の記事に衝撃を受けたはずである。
日焼けした選手たちのユニフォームの胸にはハングルが記され、それだけでも謎めいているのに「実力は全国トップクラス」とも書いてある。そう、彼らは帝京、暁星、修徳といった当時の東京における強豪校による選抜チームにも簡単に勝ってしまうほどの強さなのだ。
私が現在までに「朝鮮蹴球団」「東京朝高」が日本最強だったという認識をもってきた、その根本となる情報源は間違いなくここにあったはずである。
日本サッカー界の発展のために
先日行われた高校選手権東京予選準決勝に私は人生で初めて「東京朝高」の試合を観に行った。
私の中で長い間「幻想化」されてきた在日コリアンによるサッカーがどんなものなのか、確かめたいという気持ちが私を西が丘まで連れ出したのだろう。
2年連続で東京代表となった関東一高に延長戦の末惜敗したものの、東京朝高サッカー部は私に素晴らしい試合を見せてくれた。
金明植監督が指揮を執っていた「東京朝高最強」時代とは日本サッカー界が置かれている環境は大きく違う。当時とは比べものにならないほどサッカーを楽しむ人は増え、その競争も激しくなっている。
しかしサッカーを取り巻く環境が大きく変わってきたからこそ、日本サッカー界の歩みの中で在日コリアンの人々がどのような関わり合いをし、どのような意味があったのか、改めて再認識していくべきではないだろうか。
そうした作業をすることは、必ずや日本サッカー界の更なる発展につながっていくはずだ。
ネット上には日々不愉快な「ヘイト」が溢れている。
日本サッカー界であれば、こうした排他的で不寛容な風潮を「つまらないこと」と一蹴する力があるはずだ。
「リスペクト」
サッカー界で声高に叫ばれているこの最も大切なポリシーは普遍的であらねばならない。
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