素晴らしい試合を見させてもらった。
これぞ、高校サッカー!と叫びたくなるような好ゲーム。
11月4日、味の素フィールド西が丘で行われた全国高校サッカー選手権東京A準決勝「関東一高VS東京朝鮮」である。
高校サッカーを予選から見にいくのは、自分自身が高校生だった時以来だろうか。
西が丘へ行くのも、恐らくは20年ぶりくらいだ。
西が丘はまったく変わっていなかった。
本蓮沼からの道の雰囲気もスタジアム周辺もあの時のままだった。
そして、西が丘で行われる高校サッカーの「香り」も変わっていなかった。
なんともいえぬ、あの安心感。
生粋のサッカー好きばかり集まっているあの空間。
つくづく、、行って良かった。
前回の覇者関東一高に挑む東京朝鮮

この対戦の構図としては、前回の覇者、関東一高に東京朝鮮が挑む。そんな感じであろう。
うちに帰ってから調べてみると、東京の高校サッカーリーグT1リーグに両校は所属しており、今年になってからも何度か公式戦で対戦している。
5月10日 関東一高0-1東京朝鮮
9月24日 東京朝鮮0-3関東一高
関東大会
6月 関東一高4-0東京朝鮮
T1リーグでの今季の成績、関東大会やインターハイなどでの実績を見ても、明らかに関東一高に分があるこの対戦。
両校応援団の熱い声援の中、ゲームが始まった。
前半を終えて関東一高が2-0とリード
前半は完全に関東一高のゲーム。
個々の技術で東京朝鮮を凌駕し、早々に2点のリードを奪う。
関東一高には、個で打開できる選手が前線に何人かいるため、東京朝鮮がゴール前に人数を集めてもあっさりゴールを決められてしまう印象。
しかし、東京朝鮮の応援席のテンションは全くおさまらない。
劣勢に立って、むしろヴォルテージが徐々に上がってくるかのようだ。
また、東京朝鮮の選手もベンチも、全く諦める様子はなく
「ケンチャンタ!ケンチャンタ!(大丈夫だ!大丈夫だ!)」
という声が飛ぶ。
そして、怒涛の後半を迎えた。
3点獲られたらその分返せばいい!
高校サッカー選手権 東京都Aブロック準決勝
2017.11.4 ⚽味の素フィールド西が丘関東第一 4(1ex0)3 東京朝鮮
関東第一、後半浮き足立つも 何とか決勝切符を掴み取り、成立学園との決戦に挑む❗️
東京朝鮮、驚異の粘りも 延長で力尽き 悔しい敗退… pic.twitter.com/XUA5QU5wUd
— まおパパ (@miyahiro1119) November 4, 2017
0-2のビハインドで迎えた後半20分、東京朝鮮はDF4番のチョン・ユギョンの見事なダイビングヘッドで1点を返した。
しかしその追撃ムードもつかの間、関東一高、村井に素晴らしいミドルシュートを決められ、1-3に。
実力的に1枚上手に見える関東一高が、このまま勝利をもぎ取るのか、、、と私は思った。
東京朝鮮、力尽きたか、、と。
しかしこの予想は完全に裏切られることになる。
もちろん、良い方にだ。
右からのクロスをまたしてもチョン・ユギョンがヘディングでテクニカルなシュート!
これで2-3。
このゴールで勢いにのった東京朝鮮は、武骨ながらもラフなボールをゴール前に蹴り、長身の9番ハン・ヨンギをターゲットにした攻撃を繰り返す。
これが功を奏し、関東一高DFラインの頭を越えたボールに、三度チョン・ユギョンがループシュートで合わせ、3-3の同点に。
DFのチョン・ユギョンが後半だけでハットトリック!
東京朝鮮の不屈の戦いぶりに西が丘は揺れた。
延長戦で力尽く
延長戦に入っても、東京朝鮮の闘志はまったく揺らがない。
ただ、関東一高も素晴らしかった。
彼らのシュート技術の高さは、さすが東京代表と思わせるのに十分なレベルであったし、その場面までボールを運んでいく展開にも格の違いを感じさせた。
最後の最後まで死力を尽くした東京朝鮮は4-3と前回の覇者関東一高を追い詰めたが、そのまま4-3で試合終了。
タイムアップの笛が鳴ると同時にピッチに倒れる東京朝鮮の選手達。
スタンドからは素晴らしい熱戦も見せてくれた両校に対して拍手喝さいが起きた。
東京朝鮮の選手たちは泣き崩れ、仲間に肩をかりて歩くのがやっとという選手まで。
彼らがこの大会に賭けていた思いの強さがそこにあらわれていたように感じた。
在日コリアンのサッカー
在日コリアンのサッカーチームとして、最も華々しい舞台に続いていた道が閉ざされてしまった。
そうした多くの同胞の願いも背負って戦っていた彼らを責める人は誰もいないであろう。
「東京朝鮮の選手は日本語しゃべれるのかな?」
私の隣に座っていた男性はこう話していた。
一般的な日本人の「在日コリアン」に対する認識はこのレベルなのか。
しかし、その男性もこの試合で東京朝鮮から受けた衝撃はきっと大きかったはず。
こんなにも、熱い試合を「在日コリアン」の高校生たちが見せた。
彼らがサッカーで頑張りを見せるのは、決して同胞の為だけではない。
互いの存在を理解しあう為にも、彼らの真摯な姿勢がきっとその一助になるはずだと私は強く感じた。