久保建英がFC東京とプロ契約を結びました。
昨シーズンから二種登録選手としてJ3リーグに参戦しているFC東京U-23で既に「Jリーグデビュー」は果たしている久保建英が、今シーズン中にJ1リーグにデビューできるかに注目が集まっているようですが、私はそう簡単な話ではないと思っています。
今回、FC東京が久保建英、平川怜という高校生プレイヤーとプロ契約を結んだのは、今すぐトップチームで使おうというような性質の話ではないと思っているからです。
二種登録選手でもJ1リーグには出場できる
そもそも、久保建英のこれまでの「身分」であった二種登録選手でもJ1リーグの試合に何の問題もなく出場が出来ます。
実際、ほとんどのJ1クラブのトップチーム配下には二種登録選手が存在します。
その多くは下部組織U-18などの選手であることがほとんどですが、中には大学サッカーや高校サッカーでプレーしている選手がその能力を評価され、特定のクラブの二種登録選手となっているケースもあります。
FC東京にはJ3リーグに参戦しているFC東京U-23というチームがありますが、このチームは通常の練習はトップチームと共に行っており、実質的にFC東京の2軍といっていいでしょう。
実際、23歳以上のオーバーエイジ選手が3名までリーグ戦への出場が可能で、毎週ビックリするような選手がJ3リーグのFC東京U-23の試合に出場しています。
つまり、Jリーグの世界では「プロ選手」と「プロを目指す育成段階の選手=二種登録選手」が普通に共存しているのです。
『久保建英のプロ契約=J1リーグへの出場が可能になった』
この解釈は誤りです。
では、今回のプロ契約にはどういう意味があったのでしょう。
久保建英の結んだプロ契約の実際
ここからは推論ですが、今回久保建英がFC東京と結んだプロ契約は「プロC契約」であるはずです。
ほとんどの新人選手が、このプロC契約からプロ選手としてのスタートをきります。
プロC契約のメリットは、どちらかと言えばクラブ側にあります。
プロC契約の選手は年俸にも上限が設定されており、年俸の異常な高騰合戦などが生まれないような配慮がされていると同時に、クラブ側が契約できる選手の人数制限がありません。
ただ、久保建英は今シーズンだけでJ3リーグ17試合に出場し、仮にプロC契約選手であったならば、プロB契約、プロA契約といったプロ選手としてより良い条件での契約が出来る実績を持っています。
プロC契約の選手はJ1リーグであれば5試合フル出場(450分)を果たした段階で、プロB契約、プロA契約とステップアップ出来ますし、J3リーグでも15試合フル出場すれば、同様にプロB契約、プロA契約を出来ます。
久保建英も早ければ、来シーズンの序盤にはプロA契約を結ぶでしょう。
プロA契約には年俸の上限がありません。
例え高校生であっても、数千万円という年俸でクラブと契約することが出来るのです。
久保建英のプロ契約は欧州移籍への布石
では、何故、久保建英がこのタイミングでFC東京とプロ契約を結んだのか。
それは「欧州移籍への布石」だと私は推測しています。
その為には久保建英が「プロ選手」である必要がFC東京にはあったんだと思います。
プロ選手でなければ、欧州のクラブから獲得希望があってもクラブ間での「移籍金」は発生しません。
これは、柏レイソル育成出身の伊藤達哉がハンブルガーSVに「移籍金ゼロ」で引き抜かれたのがいい例です。
柏レイソルは下部組織の選手とのプロ契約を慣例的に高校3年時の秋~冬に行っていますが、伊藤達哉は、その直前高校3年時の夏にハンブルガーSVへ移ってしまいました。
現在のハンブルガーSVでの伊藤達哉の活躍ぶりを見れば、柏レイソルは手塩にかけて育てた選手をタダ同然であげてしまった訳で、何とも複雑な気分でしょう。
こうした事を防ぐためにも、久保建英を「プロ選手」にする動きが一気に進んだのではないでしょうか。
ただ、私はそれでもかなり遅かったと思っています。
久保建英は今シーズンだけでJ3リーグに17試合出場。
この数字は十分にプロA契約の規定を超えるレベルです。
春先にでもプロC契約を結んでいれば、もうとっくにプロA契約を結べていたはずです。
そうなれば、年俸上限もありませんから、仮に欧州から獲得オファーが届いたとしても移籍金をより高く設定出来たはずです。
欧州リーグ 来シーズン開幕前が最初の移籍のタイミングか
順調に行けば、久保建英は来季の序盤でプロA契約をFC東京と結べるでしょう。
そうなると、2018/19シーズンの欧州移籍市場にはタイミング的にも十分間に合います。
もしかしたら、来年のワールドカップ明けくらいから久保建英の周辺も騒がしくなっているかも知れません。