湘南ベルマーレの練習場が台風で冠水 復旧作業を行うのはボランティア

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晩秋の列島を襲った台風22号は、もろに本州を縦断し多くの地方で冠水、土砂崩れなどの被害を出している。

湘南ベルマーレの練習場である相模川河川敷の馬入サッカー場も、今回の台風被害で冠水してしまった。河川敷グランドと台風被害は切っても切れない関係性にあるけれど、ベルマーレスタッフのコメントによると、「今回の冠水は過去最悪レベル」だそうである。

土のグランドであれば、冠水した水が徐々に引いていくことである程度の復旧とみなしてもいいのであろうが、馬入サッカー場は天然芝。大量の雨、川の水が大量のドロを一緒に連れてきてしまう。そうすると例え水が引いても、天然芝の表層をドロがコーティングしているような状態になってしまうため、その大量のドロを人力で除去しなくてはならない。ナイター用の照明も設置されていないから、作業時間も日の出ている時間に限定される。

現在J2リーグで首位を独走する湘南ベルマーレが1日も早く馬入サッカー場での練習を再開できるように、クラブは「グランド復旧作業ボランティア」を募集して人海戦術でこの災難を乗り切ろうと決めたようだ。

【募集】馬入グラウンド復旧協力のお願い

昨日、関東地方を通過した台風21号の影響により、馬入サッカー場天然芝グランドが水没いたしました。
現在、水は引き、グラウンド内に溜まった、泥と漂着物の除去作業を実施しておりますが、より多くの方の協力を必要としております。

そこで、下記の通りグラウンド復旧のボランティアを募集させていただきます。
皆様のご協力、何卒お願いいたします。

◆持ち物
・汚れても良い服装
・長靴または汚れても良い運動靴など
・軍手など
・タオルなど
・着替え

◆作業時間
10月24日(火)17:00頃まで ※本日
10月25日(水)9:00〜17:00頃まで
※作業状況により、時間を変更、追加する場合がございます。あらかじめご了承ください。

◆集合場所
馬入サッカー場 天然芝

湘南ベルマーレ公式サイトより

ボランティアによるグランド復旧作業 そこに妥協はないだろう

朝9:00から夕方17:00まで、たっぷりと肉体労働だ。大学時代には私にも台風でグチャグチャになった土のサッカー場の整備をした経験が何度もあるが、言ってみればあの時は妥協の繰り返しだった。最終的にそこで練習や試合を行うのは自分達であり、その自分達も単なる学生サッカー部員だ。レーキがついたトラクターでグランドの土を平らにしていく作業が出来るくらいに土が乾いていればラッキーで、ドロドロのグランドを人力で整備していくのは想像を絶する体力を要する。だから「もうこんくらいでいいか!?」と誰からともなく妥協しだすのである。作業しているメンバーは全員クタクタになっているから、「そうだな、結構いい感じになってきたしな」とか言ってその妥協案に乗っかり、翌日中途半端に整備されているグランドを見た先輩部員に説教を受けるという一つのお決まりパターンが存在した。

しかし馬入サッカー場ではそんな妥協は生まれないだろう。

何しろ、そのグランドで練習をしているチームは湘南ベルマーレなのだ。

24日のドロ除去作業にはクラブスタッフ、ボランティア合わせて50名ほどが参加した由。

その内訳は明確にされていないが、参加したボランティアは間違いなくもの凄く高いモチベーションで作業にあたったはずだ。その勢いはクラブスタッフのそれを凌駕する勢いであった可能性すらある。彼らは期せずして訪れたこの肉体労働の機会に「聖なるもの」を感じていたかもしれない。なにしろ「自分達のため」にしている作業ではないのだ。

こんな世界があってもいい

こういうニュースに対するヤフコメをみると

つか、ボランティア?
ちゃんと給料払って仕事してもらったら?
プロでしょ?
俺がやってる仕事をボランティアだなんて言われたら、やらないよ。

 

ボランティアwww
ケチケチすんなよ。
金払ってやれよ!!!
それかチケットやるとかしないのかな?

冷たいクラブだ。再来年J 2で頑張れ。

 

 手伝った人には、チームにしかできないような恩返ししてくれたらますますサポーターとの絆が深まりそうだ。物とかじゃなくてもいいんだよ。試合後選手とジュース飲むとか。

多勢とは言わないが、こういうコメントが一定数必ずある。

ただ、こうした機会に集まるボランティアはそのほとんどが湘南ベルマーレの熱心なサポーターであるはず。彼らがその肉体労働に対して見返りを求めるだろうか。否、むしろそうした一切を受け取ることを拒むのではないか。

今回のグランド復旧に際しては、こんなサイドストーリーもある。

代替地となった隣の人工芝グランドでの練習を終えた選手の中には自らも復旧作業に参加したいと申し出た選手もいたそうである。それをクラブスタッフは制止し帰宅させたそうだ。だから、ボランティアと一緒にジュース飲むのもなしだ。

それでも、選手とクラブスタッフのこんなやり取りを横でされたら、ボランティアのやる気は増すばかりでしょう。

プロサッカーチームの運営の一端をボランティアにどの程度頼っていいものなのか、これについては一定のモラルは必要かもしれない。しかし、元来Jリーグクラブとは地域コミュニティの中で生きていくことも宿命としている。これなしには存在の意義さえ大きく揺らぐ。

「チームや選手が困っていればサポーターやボランティアが支える」

こうした体質はクラブチーム文化の根幹でもある。

すぐに対価を求めたり、目の前の損得でしか行動しない風潮が社会に蔓延している中で、プロサッカーという一見華やかな世界にこうした文化が存在していることにちょっとだけホッとしませんか。

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